第三十話 龍ごっこ
俺は速度強化を使用。そして、全身が軽くなるのを感じながら回れ右。古代龍から離れるように逃走を開始した。
注意を引けたのならもう無理に戦う必要はない。後は生きることに専念するだけだ。一応注意が外れないように光の矢を打ち込んでおく。
「さあ、追いかけっこといこうじゃないか」
後方、土煙から飛んでくる火球の嵐。時に風魔法で軌道をそらしつつ、乱舞するように合間を縫う。そして、隙をみて光の矢で反撃。
ガアアアー-----!!
古代龍が咆哮を上げた。体の芯まで伝わる轟音。思わず耳を塞ぐ。相当お怒りだ。いいぞ、もっと俺へのヘイトを上昇させろ!
衝撃波とともに飛び上がった古代龍が、ブレスを吐いた。炎が地面を覆う。俺は氷柱を足元に築き上空に逃げる。だが、空中で身動きが不自由な俺に火球が殺到した。
「やっべ!」
視界を覆いつくすほどの火球。地面はまだ遠い。どう避けるか。……そうだ。俺は足に魔力を集めた。そして、高水圧ビームを発射。その勢いを利用して、前方上空に移動。なんとか火球を避けれた。すぐ後ろで火球同士がぶつかり爆発が起こる。
爆風を肌に受けながら、足の裏から風をだした。ブースターのようにして空を移動したほうが速いと思ったからだ。結果は成功。一気に古代龍との距離が開く。だが、この移動方法、魔力操作が安定しない。普段の状態なら無理そうだ。
「おっと!」
突然あたりの空気が渦を巻き、姿勢制御に苦労を呈した。どうやら古代龍がついに追い始めたようだ。後ろを見ずとも威圧感で距離を詰められているのがわかる。
もっとスピードを上げようとするも、邪魔をするように頭上から雷が落ちてくる。慌てて横にずれて回避したが、その先にもまた雷。今度は氷壁で打ち消した。この雷は明らかに自然発生じゃない。
「ちっ! 魔法まで使えんのかよ!」
後ろからは火球。上からは雷。二方向からの攻撃は俺の神経を摩耗した。必死に火球と雷の隙間に入りながら飛んだので、スピードも全然出せない。それが焦りとなって俺の神経は疲労困憊だ。くそ、早く弱まってくれ!!
「ん?」
激しかった弾幕の嵐が、突然ピタっと来なくなった。だが、安心はできない。急にあたりが真っ暗になった。上を見ると、案の定、古代龍がいた。どうやら追い付かれてしまったようだ。
「…………」
龍の感情など知らんが、俺を見下ろす目は、笑っているような気がした。そして、古代龍は羽をばたつかせ、真下の俺目掛けて竜巻を起こした。
「うわあああー-!!」
俺の体は呆気なく竜巻にとらわれてしまう。虫かごの虫のように揺さぶられた後、地面にたたきつけられた。
「かふっ……!」
ああ、全身が痛い。骨も何本か逝っただろうか。朦朧とする意識の中、必死に回復魔法を使ってなんとか繋ぎ止めた。
だが、古代龍は俺に休む暇を与えてくれない。空中で一回転した後に、ダイブしてきた。超速で落ちてくる様はまるで核ミサイル。くそ、あんな巨体で押しつぶされたらひとたまりもないぞ。
俺は、土魔法で地面に小さな縦穴を掘り、滑り込んだ。直後に聞こえる轟音。大地の震動が俺をゆさぶる。崩れる土で生き埋めにならないよう、入り口を氷で塞いだ。
古代龍が俺を掘り出そうと前足を穴に突っ込んでくるが、太すぎて入らない。俺は爪がかすらないようにさらに掘って奥に逃げた。すると、古代龍が前足を引っこ抜き、追随を止めた。だが、次の瞬間、穴が炎で満たされた。ブレスを吹き込まれたのだろう。
「なっ……!!」
一旦氷壁を作って防ぐが、すぐに壊れるのは確実だ。そうなる前に穴を横に拡張して逃げた。氷が割れる音がし、後ろから炎が追ってくる。
「うおおおおおおお!!」
ドリルのように地中を掘り進み、何とか地上に脱出。即座に風魔法によるブースターで穴から距離を取った。間髪入れずに穴から炎が噴き出す。
ふう……危うく蒸し焼きにされるところだった。気を取り直して古代龍に向き直る。ここでふと異変に気付いた。
「あれ?」
あんなに激しかった古代龍が攻撃してこない。さすがに疲れたのか? あ、よく見たら背中になんかついてる。あれは……矢? さらによく目を凝らすと、古代龍の後ろに何か見えてきた。
「はあ!? どうして!?」
そこには狩り人を中心とする村人が、屋敷から出てきて集まり、古代龍に弓を向けていた。これはもしや、俺たちの計画が受け入れてもらえなかったか?
「あんな小さい子だけに任せてたまるか!」
「この村の力を見せてやれ!」
「魔法陣完成までの時間稼ぎ、やってやろうじゃねえか!」
いや、計画は受け入れてもらえたみたいだ。ダラスやイアたちが上手いことやってくれたのだろう。気持ちはありがたいが……ぶっちゃけ邪魔。屋敷内で大人しくしていて欲しかった。しかも集まっている場所が問題だ。屋敷の真ん前じゃないか。もし古代龍の注意が向いちゃったら……
古代龍は、矢ごときでは案の定ダメージになっていないようで、ずっと無視していた。だが、数が多いので鬱陶しくなってきたようだ。屋敷の方を向き、火球を吐き出した。俺が恐れていたことが起きかけている。
「あー---もう!!」
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