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第二十七話 襲来

 俺たちは部屋から出た。

 すると、廊下で走ってきたダラスに遭遇した。


「ロ、ロエル! 状況は聞いているか!」


「ええ、領主様から聞きました」


「そ、そうか。じゃあ逃げるぞ。俺はセーラとリリを迎えに行ってくる」


「あ、ちょっと待ってください。実は、村人全員で逃げる計画をたてていまして」


「え? なんだって?」


 俺はダラスに転移魔法陣のことと、今回の計画をざっと説明した。


「……まさか家の下でロエルがそんなことをしていたとは。で、それは成功するのか?」


「それはやってみないことには分かりません。ですが、全員で助かるにはこれしかないと思っています」


「そうか……」


 ダラスは黙り込んだ。

 俺たちの計画に従うか、普通に逃げるか、どちらの方が生存できる可能性が高いのか考えているのだろう。


「……よし、分かった。俺もその計画にのっからせてもらおう」


「いいんですか?」


「ああ、お前の魔法の腕はよく……たぶんよく分かってる、のか? まあとにかく、信じてるぞ」


「ありがとうございます。じゃあ父さんは領主様への説明をお願いします。あと、できるだけたくさんの人を屋敷に集めておいてください」


「おう、分かった」


 そして、俺たちは拠点を出て、子供組は俺の家の方へ、ダラスは屋敷の方へ向かった。拠点を出たら、すぐに村に入るので、特に戦闘は起きたりせずに俺の家に到着した。家の裏にまわり、隠し扉を開けて地下研究所に入った。


「おお! すっげー-!」


「……あんた自分の家の下になんてもんつくってんのよ」


 地下研究所を見て、ラインは目を輝かせ、フレイはそれとは対照的に呆れていた。ラインが研究所内を走り回り、置いてある道具や魔法陣を見ては歓声をあげている。どうせ使い方とかよくわかってないだろうに。


「おいライン、早く準備に取り掛かるぞ」


「あ、そういえばそうだったな。で、何を持っていけばいいんだ?」


 う~~ん、まず転移魔法陣が描かれた紙だろ。後はありったけの魔石。防御用の魔道具もいくつか持っていきたいな。


「とりあえず俺について来てくれ」


 俺たちは地下研究所の道具保管庫へ向かった。俺の今までの研究成果がたくさんおいてある。こいつらの大部分を諦めなくてはいけないのがすごくもったいない。俺は、魔法陣が保管されている棚の所で立ち止まった。そして、防御結界の魔法陣か描かれた板の束を取り出した。


「みんなこれを何枚かずつ持っていってくれ」


「これは?」


「防御結界だ。魔石を上に置けば起動する」


 この結界を適当な間隔で設置すれば多少は防御の足しになるだろう。次に、魔石が大量にため込んである場所で立ち止まった。


「よし、みんなで持てるだけこれを持っていくぞ」


「分かったぜ」


 そして、みんな大きな袋二つ分ずつ魔石を持っていった。俺がコツコツ貯めた魔石一年分くらいはあるだろう。さすがにこんだけあれば村人全員転移できると信じたい。そして、最後に研究室に行って転移魔法陣が描かれた紙を取り、俺たちは地下研究所を後にした。

 

「よし、後は屋敷にでかい転移魔法陣を描けばいいだけだな」


「ええ、ちゃっちゃと描いちゃいましょう」


「これでみんな助かるね!」


 使う道具はこんなもんでいいだろう。古代龍が来る前に、できるだけ早く転移したい。成功するかは不安だが。


「さあ、早く屋敷に……がっ!!」


 突然俺の全身をとんでもない衝撃が襲った。

 あ、あ、ああああ! な、なんだよこれ……! 急に震えが止まらない! と、とにかく遠くに行かないと!


「ど、どうしたの? ロエ……ひっ!!」


 俺の突然の異常を心配したイアも震え始めた。

 これは何だ? もしや魔力? やばい、どんどん近づいてくる。お、落ち着けよ、俺! ……は! 俺は北東の方向を見た。


「だ、大丈夫? ロエル! イア!」


「ど、どうしたんだよロエル! それにイアまで。 あっちに何かあんのか? ……もしや、古代龍が来たのか?」


 フレイとラインが北東の方に目を凝らしている。

 やがて、影が見えてきた。その影は、急速に大きくなってきている。その変化の早さから、あれがとんでもない速度で村に近づいてきていることが分かる。


「うっ……あ、あれが、古代龍……!」


 この距離でもわかるサイズの大きさ。領主様の屋敷より大きいかもしれない。空を覆うように広げられた翼によって、あれの真下は夜のように暗くなっている。その体から放たれる濃密な魔力が混ぜられた威圧感は、周囲に絶対的な死を宣告していた。


「なんなんだよ……あれ」


「父様はあんなのと戦ってたっていうの!?」


 ラインとフレイも震え始めた。魔力を感知できないものにも威圧感が伝わったようだ。いや、魔力なんてなくてもあれを見たら誰もが震えるだろう。


 あれはまだ俺たちの存在を認知していないと思う。だが、俺たちは蛇に睨まれた蛙のように動けなくなっていた。しばらく見つめていると、あれは首を上に持ち上げた。よく見ると口の中が光っているように見える。


 その時、俺の頭の中に警報が鳴り響いた。絶対にあれを続けさせてはいけない。俺の直感がそう告げていた。


 俺は咄嗟に魔法を撃とうと思った。俺の右腕が僅かに青く発光する。魔力の高まりを感じ取りながら、自分でも信じられないスピードで神威魔法を構築し、光の矢をあれの頭に向かって放った。

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