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第十五話 さよなら師匠

 それは突然だった。


 いつものように俺たちは訓練のために屋敷の中庭に集まっていた。そして、いつものように師匠の招集に応じて訓練が始まると思っていた。

 だが、そこで師匠から衝撃的なことを告げられることになった。


「突然だけど、今日で訓練は終わりだ」


 ……え?


「そんな! 俺はまだ師匠から学びたいことがたくさんありますよ!」


 ラインが大きな声で抗議した。


「本当に突然ですね……なにかあったんですか?」


「実はね、ちょっと僕の領をちょっと厄介なものが脅かしていてね。今すぐ戻らないといけなくなったんだ」


 なるほどね。それは仕方ないな。

 師匠にも仕事や責任があるし。


「……てことは、フレイともお別れなの?」


 イアが悲しそうな声で尋ねた。


「確かに、そういうことになるわね。でも、絶対事が収まったら会いに行くから……」


「いや、フレイは置いていく」


 え、そうなの?

 フレイもぽけっとしている。


「厄介なものがいる危険なところにわざわざ娘を連れて行くわけがないだろ」


 師匠にもそういう考えがあったんだ。

 でも、その厄介なものってそんなに危険なのか。師匠の戦闘力をもってすれば一瞬で追い払えそうなものだが。


「師匠、もしかして厄介なものって古代龍(エンシェントドラゴン)ですか?」


 ラインが尋ねた。

 古代龍? なんか本でみたことがあるような。

 たしかラーラスの前にあった国を滅ぼしたんだっけ。

 できれば一生会いたくないな。


「父様が話しているのを聞きました。ラーラス南東に眠る古代龍が最近目覚めたと。そいつが今、師匠の領土に接近してるんですか?」


「ラインは知っていたか。全く、エルフォードは国家機密をなんだと思っているのか」


 へえ~国家機密なんだ。

 まあ国の弱点みたいなもんだしな。

 龍と戦ってる最中に攻められたりしたら大変だ。


「え……父様、古代龍と戦いに行くの……?」


 フレイが絶句している。


「父様はあれに勝つつもりなんですか? 勝てるんですか?」


「問題ない……と言いたいところだけど、さすがに厳しいかな。追い払うくらいはできると思っているけど」


 あの師匠が勝てる自信がないだと……!?

 間違ってもこっちに来たりしないでほしいな。


「父様! やっぱり私も行くわ! 父様がそんな危険な目に合うのに私だけ安全なところで待ってるなんてできない!」


「いや、それはだめだ。お前はここで待ってなさい。クレハトたちも王都へ避難している」


 クレハトさんは師匠の家族かな?


「でも……」


 フレイはそれでも食い下がる。


「あのな、フレイ。正直なことを言ってしまうと、戦場に来られても邪魔なんだ。お前を守りながら戦わなくちゃいけないことになるからね。だからフレイはここで待って僕を安心させてくれ」


「…………」


 フレイは黙った。

 まあそれを言われたら何も言い返せないわな。


「……わかったわ。絶対にいつか邪魔なんて言わせない実力になってやるんだから!」


「よし、いい子だ」


 親子の会話は済んだようだ。


「それで、師匠は今すぐ出発する感じですか?」


「……ロエルはもっと悲しんでほしいな」


「だって、そもそも公爵なんて地位をもってる人がこんな辺境に長期間いられるなんて思ってなかったですし」


「まあ普通に考えたらそうだよね。それで、質問に対する答えだけど、そうだね。君たちとの別れを済ませたらすぐにこの村を去るよ。エルフォードへの話ももうすんでいるし、荷物を送る手はずも整っている」


 やっぱすぐ出るよな。今も自分の領を古代龍が襲ってるわけだし。

 じゃあ別れのプレゼントとかも用意できないな。

 あ、でも魔法で即興で作ることは出来るかな。


「そうですか。では、今までありがとうございました。次に会うときは師匠より強くなって最初のリベンジをします。覚悟しといてください」

 

 俺は師匠への別れの挨拶をした後、魔法で作業を始めた。

 その間に、他の二人も別れの挨拶をする。


「師匠! いままでありがとね!」


「次に会うときはロエルをぼこぼこにして見せます!」


 おいライン、お前の別れの言葉はそれでいいのか?


「はは、じゃあ楽しみにしてるよ」


 そして、話が終わるころに、俺が魔法で作っていたものが完成した。

 剣の形をしたキーホルダーみたいなものだ。

 俺はそれを手のひらに乗せて師匠に差し出した。


「師匠、即興で今作ったものですが、プレゼントです。お守りにでもしてください。一応魔道具ですので、身につけておいて損はないですよ」


「即興でこんなに早く魔道具がつくれるのか……本当に君ってやつは。まあ、ありがたくもらっておくよ」


 師匠は俺からプレゼントを受け取ると、身をひるがえして屋敷の出口へ向かった。

 

「じゃあ、僕がいなくても訓練は怠らないでね」


「「「「はい! さよなら!」」」」


 こうして、約三か月の剣聖の下での訓練が終わった。

 短かったけど、たくさんのことを学べた時間だった。

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