第十話 俺の魔法講座2
俺が師匠に弟子入りしてから一か月が経った。
俺とイアは師匠とフレイの教えのおかげで結構剣術の基礎が身についてきていた。
まあ実力は魔法なしで正々堂々戦った場合ラインに負けるくらいなんだけどね。
もともとダラスからも学んでたのに不甲斐ないぜ。
どうやらこの万能な体も剣術の才能はそれほどでもないらしい。ラインが強いってのもあるんだろうが、相手が近づいてきたときにびびってしまったり、そもそも武器で殴りつけることに日和ってしまうのだ。これは体というより精神の問題だろう。武器を振り回すのは日本の記憶がある俺にはつらい。魔法はゲーム感覚でできるんだけどね。
今日も俺とイアは領主の屋敷に向かった。
すっかり顔なじみになった門番に挨拶をして門をくぐる。そして、中庭に向かった。
今日は、ラインだけがいた。
「おはよう、ライン」
俺は片手をあげて挨拶した。
「よっ、待ってたぜ」
向こうも返事をした。
「フレイはまだ来てないの?」
イアが質問をした。
「いやーなんか師匠から話があるらしくてそれを聞きに行ってる」
「ふ~ん」
すると、フレイが館の中から出てきた。
「おはよう、フレイ」
俺はまた挨拶をした。
「あら、みんな揃ってたのね」
「師匠と何の話をしてたんだ?」
ラインが尋ねると、フレイは少しばつの悪そうな顔をして、答えた。
「その、みんな集まってくれて申し訳ないんだけど、今日なんか父様に仕事が急遽はいっちゃったらしくてね。今日は訓練できないらしいの」
「え~~!」
ラインが大声をだして落ち込んだ。
ふむ、となると結構時間が空いてしまった。この後どうしようか。
「どうする? ロエル」
イアが聞いてきた。
「まあ魔法の練習にでもはいるか?」
「うん」
「じゃ、今日はそういうことで、じゃあね」
俺とイアはラインたちにさよならを言って帰ろうとした。
「ちょっと待って!」
フレイが俺たちをよびとめる。
「その、私たちも暇になっちゃったから、その魔法の練習?ってやつにまぜてくれない?」
「おっいいな、それ。俺たちもまぜてくれよ」
二人も魔法に興味がでてきたか。まあ俺とイアがあんだけ魔法使ってれば興味もでてくるよな。
イアは俺の顔をみて目でどうするか聞いていた。
俺は頷いて答える。
「別にいいけど、誰もが簡単に使えるわけじゃないからな」
「「そんなの分かってるよ(わよ)」」
「よし、じゃあ教えよう。場所は移動もめんどいしここでいいよな。どんな魔法が知りたい?」
「はいはー-い!!」
フレイが勢いよく手を挙げた。
「速度強化が知りたいわ!」
たしかにフレイはあの魔法気に入ってたもんな。
でもあれは俺の完全オリジナルだから詠唱文が分からないんだよな。
「ん~~ちょっとあれは教えるのが難しい。他のにしてくれ」
「じゃあ、石の武器つくるやつ教えてくれ」
今度はラインが発言した。
でも、あれもあれで魔力を感じて操作しないとできない。もうこの際だから二人に魔力の感覚をつかんでもらおうか。
「ちょっとそれも難しい。だからまず、二人に体内魔力を感じてもらおうと思う」
「体内魔力を感じるってどうやるんだ?」
たしかイアのときは大量に魔力をながして感じさせたよな。同じ方法でいけるかな。
「ちょっと手をだして」
ラインが俺の方に手をのばした。
俺はそれを握る。
「なんだよ」
「今から魔力を大量に流すから何か感じたら言って」
そして、俺は魔力をラインに流し込もうとした。
「いっっっって!!!」
ラインが急に痛がって俺からはなれた。
「なにすんだよ!」
「おかしいな、イアの時は特に痛みとかなかったよな」
イアもうなずいている。
「ちょっともう一回やってみるから我慢してくれ」
「え~~」
ラインが渋々腕をだす。
今度は痛みをちょっと我慢させてもう一回魔力を流そうとしてみるもなかなか魔力が流れない。
やがて、ラインが痛みに耐えきれずに俺から離れた。
「おかしいな。ラインに魔法の素質がなかったとかか?」
「そんなわけないだろ! フレイもやってみろよ!」
「え~~!? ちょっと大丈夫なの?」
フレイがいやそうな顔をしながら腕をさしだした。
俺はそれを握り、魔力を流そうとする。
「いっ!」
フレイはすぐに俺から離れた。
「あら? フレイもだめなのか。じゃあ、イアが特別だったってことか?」
イアが特別という言葉に反応してちょっと胸を張った。
イアが他の二人と違うところ……
もしかしてイアがエルフだからか?
これは他のエルフに試してみないことには分からないな。
まあとりあえず、二人には無詠唱魔法は諦めてもらおう。
「その、魔力を感じられないことには無詠唱魔法は使えない。二人には悪いけど、さっきの魔法は無詠唱専用だから諦めてくれ」
「はあ……じゃあ仕方ないわね」
おや?結構潔いな。
「代わりに普通の詠唱でできる魔法を教えてくれ」
「それなら魔力さえあればできる。早速やっていこう」
そして、俺は久しぶりに詠唱を何度もして、二人に魔法を教えこんだ。
結果を言うと、二人には魔法の才能はなかった。下位魔法を使うのがやっとだった。でも、なぜか魔力量だけはあるらしく、いくら下位魔法を使っても魔力切れはしなかった。
________
<アレクシア視点>
今朝、僕のもとに魔法をかけられた鳥が手紙を持ってやってきた。
(王都からの手紙かな)
僕は手紙に刻まれている紋章をみた。
これは、東の公爵家、セイロン家の紋章だ。ということは手紙を書いたのは賢者ラズリン・セイロンだろう。
引きこもりの彼女が手紙をだすとは珍しい。何があったのだろうか。
僕は手紙の封を切り、内容を確認した。
《古代龍が目を覚ました。それについて詳しく話したいので、念話の魔道具で話しかけてくれ》
ついにラーラスが抱える爆弾にスイッチがはいったわけか。こりゃ一大事だ。早急に対応しないといけない。
僕はフレイを呼び、今日の訓練はなしにすることを伝え、魔道具をもって周辺で最も高いところを目指した。
この念話の魔道具、離れていても話せるのは便利なのだが、開けた場所でないと通じないのだ。
僕は村の境界にある見張り台の上に上り、魔道具を使用した。
しばらくして、魔道具から声が聞こえてきた。
『あーあー、わらわだ、聞こえているかい?』
「聞こえてるよ。それで、古代龍はどうなってるんだい?」
『目を覚ましはしたが今のところ特に動いてはいない。しばらくは刺激せず、様子見だね』
「それで、王は僕にどういう命をだしているんだい?」
『しばらくはそのまま帝国を監視してろとのこと。あと、古代龍が動き出した時、早急に対応できるよう、毎日念話をかかさぬようにともおっしゃっていたよ』
「了解。ところで、仕事とは関係ないんだけど、面白い子を弟子にしたよ。たぶん君も興味がわくはずだ」
『ほう、わらわが興味をもち、貴様が弟子にする子か、一体どんな子なんだい?』
「魔法の天才でね。もしかしたら五歳にして君より優れてるかもしれない。詠唱なしで魔法を使うんだ」
『なるほど、それが本当なら興味があるな。ぜひ会ってみたい』
「機会があったらね。多分彼のためにもなるだろうし」
『それじゃあ切るよ。明日もわすれずにな』
「ああ、じゃあね」
ふむ、古代龍か。できればこのまま大人しくしててほしいものだね。さすがの僕でも倒せる気がしないし。
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