第七話 訓練
模擬戦が終了したので、反省会のために俺たちは師匠を半円で囲う形で集合した。
「はあ……まさかイアもあんなに魔法が使えるとは……」
フレイが深く落ち込んだ様子で言った。
「ロエルに教わってるからあれくらい当然」
イアが胸を張って言う。
「いやいやイアの才能だよ」
と俺。
「くそ…ロエルめ…次回こそは負けないからな」
とライン。
そんな俺たちの様子を眺めてから、師匠が声をあげる。
「じゃあ、模擬戦の講評を言うぞ」
「「「「はい!」」」」
「まず、フレイとイアの戦いについてだけど、これは正直短すぎてあまり言うことがない。強いて分かったことを言うなら、イアの魔法のレベルがとんでもなく高いことと、フレイは油断してはいけないということだな。で、ここで質問だけど、イアはどれくらい近接戦闘はできるんだい? ロエルはそこら辺は教えたのかい?」
「いえ、ほぼ全く教えてないです。ちょっと護身程度の体術を教えたくらいですね」
「はい、剣はもったこともないです」
「了解した。次はラインとロエルの戦いについてだ。これはちょっとルールの穴をつかれて結局魔法で終わってしまったけど、それまでの近接戦闘ではラインが優勢だった。で、両者の反省点だけど、ラインは無防備に突っ込みすぎだね。ロエルは慎重に防御してる時はよかったけど、攻めの時は動きが大きすぎだ。最低限の動きで攻撃するように」
「「はい」」
「じゃあ、今日の残りは素振りをひたすらしてなさい。あと、フレイはイアに剣の振り方を教えてあげて」
「「「「はい!」」」」
________
俺たちは各々中庭に散って、素振りを始めた。
ただ虚空に向かって、ひたすら木刀を振り続ける。
少しでも早く、また、剣先がぶれないように、最適化を進めながら降り続ける。
一時間が経った。
「……が……で、そうそう。……から」
「……えい! ……む~……」
イアとフレイの声が聞こえてくる。
いかん! 集中しなければ!
なんかだんだん飽きてきた。これはいつまでやればいいんだろう。終わりの時間のことばかり考えてしまう。
あ~~これじゃだめだ。こんな心理状態だと訓練の質が下がってしまう。ここらで何か変化をいれないと。
……そうだな、魔法でも組み合わせてみるか。
どんな魔法を組み合わせようかな。
火属性の魔法は危ないから使いたくない。安全面で考えると土属性がベスト。どういう風に組み合わせようか。最初は無難に硬質化とかでいいか。
俺は、木刀を振ると同時に魔法を発動。木刀の表面を魔石で覆った。だが、魔石の形が不格好だ。これではこん棒になってしまう。
もっとうすく、鋭利に……
繰り返しているうちに、だんだんそれっぽくなってきた。ここでふと思う。
これ、刀身いらなくね? それどころか、木刀いらなくね?
俺は木刀を地面に置き、魔石のみで新しい剣を作ってみた。まだ形は不格好で切れ味も悪そうだが、練習次第で何とかなりそうだ。そのうちアンリミテッドブレイドなんたらとかできるかもしれない。これは地下研究所で練習だな。
俺は今作った剣を魔力に戻した。魔石製なので処理は一瞬だ。
他の魔法も試してみよう。
簡単に思いつくものとしたら、風魔法で剣速を上げるとかか。
俺は木刀を拾い、振ると同時に風魔法で木刀に追い風をおくった。少し剣速が上がった気がするが、本当に少しだ。まあ細い木刀が受ける風の影響なんてそんなもんだよな。これなら普通に速度強化バフをかけた方がいい。
他に活かし方はないものか……
ふと、イアとフレイの戦いを思い出した。あれはイアの風魔法がフレイの脳を振動させて気絶させていた。
振動……波……音……はっ、超音波ブレード!
風魔法で超音波の振動を再現できれば切れ味あがるんじゃね?
ということで、早速やってみる。
木刀に風魔法で小さな振動をおくり続ける。
カタ……カタカタカタ
おっ、振動が伝わってきた。
もっと小さく、速い振動を……
カタカタカタカタ……メリッ!
……
木刀が真ん中から裂けるように割れてしまった。
まあ、木刀じゃ耐えれないよな。そもそも木刀は切るものじゃないから太いし、これを振動させたところで切れ味は上がらないだろう。
俺は木刀を土魔法で修復した。
これも地下研究所で丈夫で薄いものに試すとしよう。
他にはビームソードとか火炎剣とか雷剣とかいろいろやってみたいのが思いついたが、それらをここでやると火事不可避なのでそれらも地下研究所へ持ち越しとした。
結局、魔法を素振りに組み合わせるのはここでは安全面を考えてできないという結論に逢着し、大人しくまた木刀を振り続ける作業に戻った。まあいい息抜きにはなったね。
太陽が頭の真上に到着するころ、師匠が皆に声をかけた。
「よし、そろそろ今日の訓練は終わりにしよう! 明日のために体を休めてくれ! 解散!」
急だな。
師匠とラインとフレイは屋敷の中に入り、俺とイアは帰路に就いた。
家へ向かう道で、俺はイアに話しかける。
「剣術はどうだった?」
「う~ん…たぶん何とかなると思う」
「フレイとは仲良くなれたか?」
「うん! すごく丁寧に剣術を教えてくれたよ。まるでロエルみたいだった」
「それは良かった。この後どうする? うちでご飯食べてく?」
「じゃあご馳走になります! その後はいつも通り魔法を教えて! ロエルみたいな魔法の戦いができるようになりたい!」
「はは、疲れてないのかい? まあ別にいいけど」
俺たちは俺の家へ向かった。
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