第十六話 貴族に喧嘩売っちゃった
あれから、何日か経過した。
イアとは毎日遊んだ。
そのせいか、イアの魔法は上達し、中級を無詠唱で放てるようになっていた。
ちなみに俺は儀式魔法まで無詠唱で放てる。
それにしてもイアの魔法の上達速度は凄まじい。
俺は転生者だから例外として、普通の人は生涯で中級魔法が使えるようになったらすごい魔法使いと言われるのだ。
イアの才能がすごいのか、
俺の教え方がうまいのか、
それとも魔力さえ感じられれば無詠唱の方が簡単なのかもしれない。
イアをいじめていたクソガキ三人は時々アニキとやらをつれて復讐にきたが全て返り討ちにした。
ある日、いつものようにイアと遊んでいたら、いつものようにクソガキ三人がやってきた。
だが、今日はどうも様子がおかしい。
いつもなら出会った瞬間即攻撃されてそれを跳ね返して終わるのだが、今日は攻撃されず、少し離れた位置でニヤニヤしてるだけだった。
「おや?お前らもついに懲りたか。」
俺が問いかけると、ちびデブが、
「ははは、観念しな。
お前のことは騎士さんに言いつけてやったのだ。
今までのことを謝れば許してやるぞ」
ついに権力者に頼ったか。
「は~どうせはったりだろ。
それに謝ればっていつも仕掛けてくるのはお前らだろ。
俺は飛んでくる危険物を撃ち返してるだけだ。」
「ちっ後で後悔しても遅いんだからな!
やっちゃってください!騎士さん!」
すると、どっからか同い年くらいのガキが飛び出してきた。
「お前か!弱き民に暴力をふるうものは!
我が領内での暴虐、決して見過ごせない!
このケーセネス騎士家の長男、
ラインフォード・ケーセネスが成敗してくれる!」
ふむ、元気な子がきたな~
でも、騎士家の人か、
絶対問題起こしたら後でめんどいやん。
よし、無視して帰ろう。
「そこのお前に言ってるんだぞ!
黙ってないで何とか言ったらどうだ!」
くそ、スルーできないか。
「ですが騎士さま!
いつも仕掛けてくるのは奴らなのです!
俺は自己防衛のために最低限の力をふるったまで。
故にこれは正当防衛です!」
とりあえず説得を試みる。
「言い訳無用!
たとえ相手から仕掛けたとしても、
お前が弱いものいじめをしたことには変わりない!
強き力は弱き者を救うためにあるのだ!」
だめだ話が通じない。
なんてめちゃくちゃな理論なんだ!
「だが、お前も俺が守るべき領民の一人である。故に寛大な俺は俺との決闘で勘弁してやろう。
この俺ラインフォード・ケーセネスが、ケーセネス家の名に於いて、お前に決闘を申し込む!」
「嫌です無理ですバイバーイ」
俺は速攻拒否して帰ろうとした。
「待て!貴様!逃げる気か!」
「は~…どうせ決闘とか言っといて俺が君を怪我させたら平民がたてついたとかなんかで罰せられるんだろ?」
「ふむ、なるほど。
では、ケーセネス家の名誉にかけて、決闘中に俺が負った怪我については一切罰しないと誓おう。」
「じゃあいいだろう。
受けてやるよ、決闘を」
「大丈夫なの?」
ここで終始無言だったイアが口を開く。
「まあ、彼も罰しないと言ってるし大丈夫だろ。自分の家の名誉にかけてるからな。」
「ふ~ん、じゃあ頑張ってね。」
「それよりイア、万が一彼が約束を破った時のためにそれとなくギャラリーを集めといてくれないか?」
「ん、了解。」
イアが走り去るのを見届ける。
「話は終わったか?
では、始めるとしよう。
俺はラインフォード・ケーセネス!
ケーセネス家の名誉にかけて、お前を討つ!」
あいつ名乗ったの何回目だ?
「お前も名乗れ!」
「俺はロクスウェルだ。」
「よし、では、この石が地面に落ちたら開始といこう。」
そう言って彼は石を上に投げる。
俺は一応のため最近使えるようになった速度バフをかける。
彼は得物である先端に重りのついた長い棒を構えた。
多分安全のために刃をなくした槍だろう。
そして石が地面に落ちた。
その瞬間、彼が得物を突き出して突っ込んできた。
(まず距離をつめてきたか。
俺は魔法使いだからそれが正攻法だな。)
俺は槍をぎりぎりまで引き付けて横によける。
彼はよけられると思っていなかったようで腕が伸び切っていた。
(ちょっと俺をなめすぎだね)
俺はがら空きの彼の腹に風魔法を叩き込んで吹っ飛ばす。別にここでもっと強いのを撃って決着をつけることもできるが、まだギャラリーが集まっていなかったので吹っ飛ばすだけにした。
彼が十メートルほど離れた位置に着地する。
「お前、魔法使いのくせにやるじゃねーか。」
「父さんが狩り人でね。
鍛えているんですよ。」
(よし、大分ギャラリーが集まってきた。
そろそろ決着をつけよう。)
「俺の本気を見せてやろう!
名誉に思え!」
彼が突っ込んできた。
が、今度は槍の射程ぎりぎりで止まり、連続で突いてきた。
俺は左右によけたり、土魔法で壁を作って防いだり、風魔法で槍をそらしたりして全部いなした。
やがて彼が疲れてきて、槍の速度が落ちてくる。
俺は地面から石柱を出して槍を叩き折った。
「なっ!!」
彼とギャラリーの顔が驚きにそまる。
「さて、得物は使えなくなったが、
まだつづけるかい?」
「くそがー--!」
彼が自棄になって拳を振りかぶった。
俺は下から風を巻き上げて彼を吹っ飛ばした。
ギャラリーから歓声があがる。
また十メートルほど離れた位置に、今度は背中から彼が落ちた。
そのまま起き上がらない。
(まさか死んでないよな?)
俺は心配になって彼に近寄る。
ギャラリーもざわざわしていた。
よかった、息はしていた。
俺はとりあえず中位回復魔法を彼にかけた。彼を光が包み込む。
やがて彼が目を覚ました。
そして、ギャラリーの視線と俺をみて状況を理解する。
彼は顔を真っ赤にして逃げ出した。
俺が彼の後ろ姿を見届けていると、イアが近づいてきた。
「どうだった?」
「まあ楽勝だったね。離れてればイアでも勝てるよ。」
その後は何事もなかったかのようにイアとあそんだ。
だが、二日後のこと、家に騎士家の私兵がやってきた。
「なんのようでしょう?」
「お宅の息子にラインフォード卿への暴行の容疑がかけられている。屋敷まで来てもらおうか!」
………。
あのクソガキやりやがった!!
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