第72話
〈大鬼〉と〈大鬼隊長〉、そして〈大鬼将軍〉の見分けは難しい。
熟練の冒険者でもよく間違えると言われているほどだ。
実際、偵察に入った勇者も前もってかなりの知識量を持っていたが、それでも階級に明確な身分の差が存在する鬼系の魔物だからこそ、その階級の差による態度の表れから〈大鬼将軍〉を見分けたほどだ。
戦闘中に指揮をしているわけでもないのに見分けることなど、まず不可能である。
「あの統制具合、〈大鬼隊長〉だと思わしき数体の〈大鬼〉を従えていることからして、あいつが〈大鬼将軍〉だというのはほぼ確実だろう。」
「まじかー。だとすると〈大鬼〉の戦力のほとんどはこっちにいるじゃん。運が良いんだか悪いんだか。」
「少なくともこちら側にとってはあまり良いことではないであろうな。」
コソコソと後ろで相談する仲間の勇者を尻目に、じっと〈大鬼将軍〉とお互いに睨み合ってると、突然何かを思いついたのか〈大鬼将軍〉がたった1体で前に出てきた。
「なんだ?何を考えているんだ?」
〈大鬼将軍〉はそのまま、前に出ようとした〈大鬼〉を一度吠えて後ろに下げると、〈大鬼〉と僕たち勇者の大体中間地点に立ち、背に持っていた大剣をまるで指差すかのように僕へとむけてきた。




