第66話
微シリアス?
彼の闇が少し表れ・・・
翌日の日の出直前、僕たち勇者は〈大鬼〉の村に攻め込むための最終チェックをしていた。
「どうよ、緊張してる?」
そう話しかけてきたのは、全勇者の中で唯一【統率】系のスキルを持っていたため、勇者たちの実質的なリーダーとなっている愛染加奈である。
「まあ少しはね。そっちこそどうなんだ?少数対少数ならともかく、多数対多数の指揮をするのは初めてなはずだ。」
挑発するように問いかければ、彼女は苦笑いをして頭を掻きながら言った。
「緊張してるに決まってんじゃん。今回だけじゃない。もし自分の指揮で死んだ人がいたらどうしようとかいっつも思ってるさ。盤上戦闘ではないんだから。」
「でも覚悟はしておけよ、誰かが死ぬってのの覚悟は。」
「分かってるさ。私達が行くのは戦争だ。私は戦争で全員を助けられると思うほど驕ってはいないし、私たち勇者が絶対に死ぬことがないと思うほど楽観的でもない。」
「ならいい。気をつけておかないと、人ってのは簡単に死ぬからな。」
「・・・。」
「・・・。」
しんみりとした雰囲気になってしまったが、そろそろ時間なので僕たちは話を切り上げ、それぞれの配置場所へ向かうことにした。
僕が彼女に背を向けて配置場所へ向かう途中、声がかけられた。
「私は工藤君が今までどんな経験をしてきたかは知らない。けれども、同じように異世界に召喚された以上、私たちは一心同体の仲間だ。何かつらいことがあるならいつでもいい、相談してくれ。きっと力になってみせる。」
僕はそのまま振り返ることはなかった。
表れ・・・ませんでした。
彼の闇が明かされるのは当分先です。
これからもこの作品をよろしくお願いします。




