第63話
遅くなりました。
あの模擬戦から数日後、僕たち勇者は城の外に出て数か月ほどかかる実践訓練を開始した。
なぜそれほどの期間が必要となるのか。
ゴブリンなどの9位階程度の弱い魔物なら、城についている訓練場でも戦ってみることはできるが、それ以上の強さを持つ魔物はそもそも聖都に連れてくること自体が不可能に近い。
そのため、強い魔物と戦うときには少しばかり遠出が必要になる。
そのうえ、勇者たちのリーダー格以外のほとんどのものには伏せられているが、今回の実践訓練の最終目標は『人を殺すこと』だ。
殺す相手は盗賊になるが、一人一人が一騎当千レベルの実力を持つ騎士団が大量に常駐している聖都の近くで誰が犯罪行為を行うだろうか。
否、普通はそんな危険地帯で盗賊なんて絶対にしない。
必然的に遠出が必要となってくるのだ。
「なあ、なんで私たちにしか盗賊を殺すってことが聞かされてないんだと思う?」
移動中、訓練の内容が聞かされていた彼は、同じように内容を聞かされていた僕に尋ねる。
「それはあれでしょ。普通の勇者が一人だけやったなら周囲の精神的ストレスでそいつが周囲からはぶられてしまうけど、リーダー格全員がやったら自分たちもやらなきゃって意識にできるからじゃないの?」
「へー、なるほどねぇー。」
彼は納得したような声を出し、再び馬車内の元居た位置に戻った。
そう、今僕たちは馬車の中にいた。
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