第57話
訓練はいつも一人でやっていた。
もちろん、自分一人ではどう動けばいいか分からない時もあるから、教官役の人にそれを教えてもらったりするときはあったが、それ以外はお供候補や仲間の同じ勇者さえ一緒に訓練することはなかった。
なんとなく一人で訓練した方がいい、と思ったからだ。
何故か。
そう言われても、自分本人もよく分からない。
この世界に来る前は、よく言えば周囲に溶け込むような性格を、悪く言えば優柔不断な性格をしていたしていたため、このように一人、孤立するようなことはなかったからだ。
そうして、一人訓練していてしばらくたった時、昼食中に同じ勇者の一人が声をかけてきた。
「やあ、ここ座ってもいいかい?」
食堂では、いくつか並べられた大きな長机に座って食事をとる。
その長机で、いつも食堂の端の方に一人座って食事をとっている自分の隣に、座りながら声をかけてきた人がいた。
「私は、朝田亮って言うんだ。よろしく。」
そう言って、手を差し出しながら自己紹介をしてきたのは、勇者たちの中でも中心的な人物として活動していた一人だった。
「僕は工藤将人だ。突然声をかけてくるなんてどうかしたのかい?」
僕の疑問に彼はもっともだ、という表情をしながら頷いた後、ビックリする一言を言った。
「私と二人で、模擬戦をしてみてほしいんだ。」
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