第19話
異界に入って10年目。
年齢が18歳になり、ようやく身長の伸びが止まった。
栄養を全く取っていないのに成長した自分の身体という神秘については置いておくとして、この5年の研究結果だ。
結論から言ってしまえば、【下級吸蟲】の量産を行うと決めた。
何せ強すぎるのだ、【下級吸蟲】が。
どんな【蟲召喚】のスキルでどんな個体を召喚しても、【虫召喚】のスキルで虫たちを召喚して蠱毒を行っても、蟲十体と【下級吸蟲】を戦わせても、結局【下級吸蟲】が勝利した。
一時期は躍起になって【下級吸蟲】に勝てる個体を作り出そうと頑張っていたが、どんな蟲と戦わせても無理だったので、開き直って【下級吸蟲】を量産することにしたのだ。
結果、今では視界の一部を埋める千体ほどの【下級吸蟲】が存在していた。
いくら親指ほどの大きさしかないといっても、千体も集まるとなかなか圧巻だった。
え?数の計算がおかしい?
ああ、確かにおかしい。
あの事がなければ、まだ【下級吸蟲】は多くても十体以下だっただろう。
あの事、そうそれは最初の【下級吸蟲】を作ってからちょうど半年が過ぎたころ、二体目の【下級吸蟲】を作り出そうとしていたころ、一体目の【下級吸蟲】がある日突然コロッと死んでしまった。
どうした!と思ったら普通に寿命だった。
そして大事なのはここからで、この死んだ【下級吸蟲】の死体から、米粒よりも小さな紫色の二つの小石が見つかった。
この小石は【下級吸蟲】の卵だったようで、触れると微量の魔力が座れる感覚と共に、小石が割れて中から【幼体下級吸蟲】が生まれた。
【幼体下級吸蟲】は、小石から生まれるのと同時に周囲から魔力を吸い始め、1週間後には【下級吸蟲】に進化した。
ちなみに【幼体下級吸蟲】に触れると、一瞬で大量の魔力と体力を吸い【下級吸蟲】に進化したため、【幼体下級吸蟲】が【下級吸蟲】に進化するのには魔力の吸収が必要なのだろうと分かった。
なぜ、体力まで吸われたのかは知らないが。
ちなみに、【下級吸蟲】の卵は放置すると、3日ほどで【下級吸蟲】が生まれた。
恐らく、卵形態は周囲の魔力を吸収しやすい姿だったのだろう。
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