第13話
何台もの馬車が街の中に入ってゆく。
街は巨大な壁に囲まれている大都市であり、あちこちに塔がいくつも建っている中、中央には巨大な建物と7本のとても大きな塔が建てられていた。
大通りでは普通の食料品を売る屋台から効果の怪しい魔道具を売る屋台まで、祭りというわけでもないにも関わらず、たくさんの屋台が並んでいた。
道行く人々は大半がローブ姿をしており、屋台で掘り出し物を探し歩く者もいれば、ぶつぶつ何事かをつぶやきながら歩く者、何か大量の書類を抱えながら走り去るものもいた。
この街は、賢者の街と呼ばれる中立都市であり、名前の通り十大列強の七賢の多数決によって運営される街であり、賢者たちが許可すればどんな実験でも許されるというある意味下手な犯罪都市よりも危険な街でもある。
また、この街に来ればどんなことでも分かると言われる叡智の都市とも呼ばれている。
そんな街で俺は今、そんな紹介を識王にされながら賊王と共に馬車に揺られていた。
最も、縄に縛られながらだが。
そう、俺は結局賢者の実験動物として売られるという選択肢を選んだのだ。
この街では、優良な実験結果を叩き出せば奴隷から解放されることが決まっているうえに、賊王と識王の推薦があれば死ぬことが確実の実験など受けさせられることなどないため、この街で賢者たちの強化実験を受けることを俺は選んだ。
それに、いくつかの実験では実験対象者の精神状況で成功率が変わるという報告も上がってからは、実験結果をより確実なものにしたい賢者たちは特に、実験の無理強いはこの街では行われることは少なくなったらしいので、嫌なこともあまりしなくても済むという理由もある。
俺はこの後、中央の巨大な建物に運ばれ、そこで賢者たちに紹介されてどんな実験を受けさせるか、考えられるらしい。
「いつでも連絡が通じるように居場所を賢者どもに伝えておくから、実験が終わって俺たちに連絡が取りたいってなれば賢者どもに聞け。」
「ここまで受けておいてから言うのもあれなのだが、一応捕虜である私にこんなに至れり尽くせりしていいのか?」
そう聞く俺の問いに賊王と識王は答える。
「構わん構わん。お前は親友だからな。」
「まったく賊王、あなたという人は・・・。まあ、いいです。私としては少し複雑ではありますが、賊王が構わないというのであれば我々ヘクトール盗賊団はなにもいうことはありません。この盗賊団は賊王のカリスマで成り立っている部分が大きいですから。」
「わかった。頼れる時には全力で頼らせてもらうとしましょう。」
こうして、俺は賢者たちの実験動物となった。
どんな実験が待ってるのかは知らないが、自分にどれほどの強化がなされるのか今から楽しみだ。
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