表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/85

第9話

 最初に動いたのは賊王だった。


 賊王は背中に抱えていた巨大な両刃の斧、ラブリュスを構え、こちらに襲い掛かってきた。


 そしてそのすぐ後に剣を構えた盗賊たちは識王と呼ばれた細身の男の指揮により、こちらの逃げ道をふさぐように回り込み始めた。


 賊王はそんなことを気にもせず、ただ未だに動き始めていないように見える少年に向かってラブリュスを振り下ろした。


 しかし次の瞬間、賊王は驚愕する。


 まさか自分の一撃が受け止められるとは思ってはいなかったからだ。


 賊王の一撃を受け止めたのは、突如として地面から現れた6本の脚のうち前の2本の脚が非常に広く発達した〈高位蟻盾兵(ハイアントシールダー)〉だ。


 おもしろい、と再びラブリュスを持ち上げ切りつけようとしたが、突如背後から聞こえてきた悲鳴に驚き、思わず振り向く。


 するとそこでは、地面から湧き出したたくさんの蟻が盗賊達を食い散らかしていた。


 何もやっていないように見えた少年がまさかこのようなことをしていたと知り、賊王は少年の脅威度を数段上げるのと同時に、強敵の出現に興奮で口の端を引き上げながら〈高位蟻盾兵(ハイアントシールダー)〉に対する攻撃を中断し、陣形が乱れた盗賊達を指揮するために盗賊たちの間に下がっていった。



 そこからは半分泥沼化していた。


 盗賊達が少年を攻撃しようとすれば、少年のまわりにいる蟻たちに妨害され、その間に地面の下からどれだけ警戒していても奇襲され、陣形を崩される。


 撤退して陣形を整えようとすれば奇襲していた蟻たちは地面の中に潜り、少年の周囲にいて負傷した蟻も地面中に潜り新たに出現した蟻と交代する。


 かと言って陣形が崩れた状態で無理に突撃しても無駄に盗賊達が被害を出すだけで蟻たちが特に減ったりしているようには見えない。


 まあ、それは少年が蟻たちの死体を少しだけ残して他は地面の中に引き込むように指示しているからあまり減ったように見えないだけだが。



 少年と盗賊達の戦いは長いこと続き、戦闘を開始してからすでに6時間が経過していた。


 お互いの兵力は損耗し、すでに残っている蟻たちは戦闘が始まる前の4割しかおらず、無事な蟻たちの数も2割ほどに、盗賊達も馬はほとんどが全滅、歩兵たちも2千ほどしか残っていなかった。


 しかし、残っているのはお互いに長いこと戦い抜いた精鋭たちだ。


 戦闘がこの後、さらに激化するのはだれの目から見ても明らかだった。


評価とブックマークお願いします

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ