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17話 強さの理由?

「セレット!」


 言葉と共に近づいてきていた誰かが、俺に抱きついてきた。


「アイシャ、無事だったのか。良かった……」

「もう、遅いわよ。龍が現れた時点で来なさいよね」

「流石に無理だろ……勘弁してくれよ」

「仕方ないわね……」


 アイシャは冗談を言ってくる。それだけの余裕があるなら大丈夫だろう。


「心配したんだからな。こっちに来たはずなのにすぐに死ぬなんて許さないからな」

「大丈夫よ。セレットが守ってくれるんでしょう?」

「出来るだけな」

「それで守れなかった人がいなかったのは見たことが無いわよ」


 俺達は2人で無事を喜び合った。


「ん、んおっほん」


 俺はなんだろうと思い後ろを見ると、ウテナとフランツ、そしてパルマさんと龍脈衆の人がいた。


 そして、アイシャの後ろには王国にいたはずの彼女の秘書と、ここの技師の格好をした初老の人がいた。


 俺達は何も言わずにいにばっと離れ、お互いに視線を逸らす。


「……」

「……」


 さっきまであんなに何でも話せると思っていたのに不思議だ。龍を狩ったせいか顔が熱い。


「それで、もう大丈夫なのか?」


 ウテナは龍に詳しく無いからだろう。ここは安全なのか聞いてくる。周囲を警戒しているのか、レイピアの柄に何時でも手をかけられる状態だ。


 それに答えてくれるのはフランツだった。


「大丈夫だ。龍は一度現れると後から出てくることはほとんど無い。後、お邪魔の様だから外の整理してくるわ」

「私もそうしますね」

「では私も……」


 技師の人と、龍脈衆の人もそれに続いて出ていく。


 門の方を見ると、他の小部屋にいた人たちも出ていくようだ。


 彼らを無言で見送った後、秘書が話しかけてくる。


「さ、どうぞ続けてください~。ワルター王国にいた時から早くしないかーって思ってたんです~」

「しないよ!」

「しないわよ!」


 アイシャとハモってしまう。


「遠慮しなくていいのに~」

「してない!」

「してないわよ!」

「それにしても、さっきの武器はなんだ? セレット殿が持っているのは剣では無かったのか?」


 ウテナさんが難しい顔をしながら言ってくる。


 俺とアイシャはこれ幸いと喜んでそれに乗った。


「ああ、これはアイシャがアーティファクトを改造して作ってくれた武器だ。名を滅龍器、アスカロードと言う」

「アーティファクト? 古代文明から残るあの?」

「ああ、アイシャが使って作ってくれたんだ。俺が1人で龍狩りが出来るのもこれが理由だな」

「そうなのか。アイシャは凄いのだな」

「……」


 ウテナの言葉に、アイシャは微妙な表情をしていた。


「アイシャ?」

「その武器なんだけどね。確かにアーティファクトを使ってるわ。だけど、それを使いこなして、なおかつ変形させることが出来るのはセレットしかいないのよ。だからセレット以外にその武器を使いこなせる人はいない」

「そうなのか?」

「セレット、渡してみて」

「ウテナ。気をつけろよ」

「? ああ」


 俺はそっと相棒をウテナに渡す。落としてもフォローに入れるように。


「っ! 重!」


 しかし、流石に落とすようなことはしなかった。大事な相棒なので丁重に扱ってくれて嬉しい。


「でしょ? それだけの大きさしかないのに、パルマさんの持っている大剣5本分位の重さなのよ」

「それは……よくそんな物を振り回せるな」

「すごいでしょ? でも、使いこなすにはそれだけじゃない」

「さっきの変形か?」

「そう、それに力を注げば使えるわよ」


 そう言われて、ウテナが持っている相棒に魔力を流し込む。


「ふ……」


 しかし、変形する様子は微塵もない。


「ダメだ。どうすればいいんだ?」

「パルマさんも試してみる?」

「ああ」


 彼女はかなり傷ついて、持つことが出来ない。刃の部分をウテナが持ち、柄を握るようにした。


「はぁ!」


 パルマさんは龍力を注ぎ込む。しかし、変形する気配は一切ない。


「ダメだ。龍力じゃないのか?」

「私は魔力を入れたが効果が無かったぞ?」

「「???」」


 2人はお互いに見つめ合って頭を傾けている。


「それがセレットにしか使えない2つ目の理由よ」

「理由……?」

「どういうことだ?」

「その武器を変形させるには、魔力と龍力を融合させなければならないの。そして、それが出来る人を私はセレットしか知らない」

「本当か!?」

「? すごいのか?」


 パルマさんとウテナの反応が全然違う。ちょっと面白いな。


「そうよ。私の前の国では、セレットっていう前例があるから研究もある程度されていたわ。でも、出来たのはセレットだけよ」

「なぜ出来ないんだ?」


 それに答えるのはパルマさんだ。


「魔力と龍力は相反する力と言われている。だから龍脈衆の中でも、力を使う時はどちらかだけを使って戦う。もしそんなことが出来れば想像を絶する強さだが……そうか、セレット殿が強かったのはそういった理由からだったのか……」


 アルマさんは説明してくれて、納得している。


「相反する力を……。なぜ出来るんだ?」


 ウテナが聞いてくる。


「うーん。何となく……?」


 気が付いたら出来るようになっていたのだからそれ以上言いようがない。こうやろうとか、こうしようとするんじゃなくって、感覚だよりな所が強い。


「こんなこと言われるから他の人が真似出来なくてね……」

「それは……」

「なんと言うか……」


 なんだかすごく残念な人を見られるような目をされている気がする。


「ただ、凄いのよ? この武器を使えるのはセレットしかいないし」

「そうだな。そう言うことにしておこう」


 ウテナさんがそう言って納得していた。


 そして、パルマさんは真剣な目を向けてくる。


「助かった。お前のおかげで、この龍脈を奪われずに済んだ」

「気にするな。困った時はお互い様だ」


 パルマさんにはそう返しておく。


 というか、今までと比べるとこうやってお礼を言われるだけで全然違う。


「そうか……もし何かあったら今度は頼れ。このままじゃ気が済まねぇ」

「ああ、そうしてくれ」

「それじゃあオレは戻る。部下たちのこともあるからな。セレット、ここは任せてもいいか?」

「怪我が酷いんだろう? 休んでくれ」

「……助かる」


 そう言ってパルマさんは門の方へと帰っていく。その足は引きずっているように見えた。


「……」


 俺は彼女を抱き抱える。


「わ、な、なんだ?」

「足、怪我してるんだろ? 外へぐらいは送ってやるよ」

「い、いい。降ろせ!」

「遠慮するなって」

「お前が言うな!」


 そんな事を言いつつも俺は彼女を門の外に送り届ける。


「隊長!」

「もういい」

「おう」


 俺は彼女を優しく降ろす。


「その……。ありがとう」

「ああ、気をつけろよ」


 彼女は少し赤くなっていた。これだけの怪我をしたのだ、やはり熱があったに違いない。


 俺は急いでアイシャ達の場所に戻った。


 すると、秘書が眉を潜めて言ってくる。


「セレットさん」

「なんだ?」

「刺されても知りませんからね?」

「何でだ?」


 刺されるようなことがあっただろうか?


「いえ、気付いて無いならいいんです。アイシャさん。頑張ってくださいね」

「ええ……。セレットは昔からこうだから半分は諦めてるわ……」


 彼女らだけで通じ合う何かがあるらしい。やはり女性にしか分からないことがあるのか。


「おーい! 助かった! 後は俺達でここを守る。……って言っても怪我なんかしてないか」


 近づいてくるのはフランツだった。全身を武装で固めていて、彼の後ろにも装備は違うが多くの龍脈衆がいる。


「俺達は大丈夫だ。ただ、アイシャ達が疲れているかもしれない。送ってきていいか?」

「もち……」

「待って! まだ実験してないわ! セレットがいるんなら丁度いいからやらせて!」

「いいけど、無理はするなよ?」

「大丈夫よ。私を守ってくれるんでしょう?」


 アイシャはいたずらっ子のような目で俺を見つめてくる。何だか懐かしい。


「分かったよ」


 そうして、アイシャ達の実験に付き合うことになった。

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