表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/67

15話 勝てる

「セレット! 助けてくれ! 緊急事態だ!」

「なんだって!?」


 俺達が訓練場で訓練をしていると、フランツが扉を蹴破り走り込んできた。


「何があった!」


 ウテナの声が凛と聞えた。


「大渦の龍脈でスタンピードが起きた!」

「スタンピードだと! 魔物のと一緒か!?」

「取りあえず行くぞ! 走りながら話を聞く!」

「分かった!」


 フランツが一瞬で振り返り、来た道を戻り出す。


 俺とウテナもそれについて走り出した。


「スタンピードとはなんだ?」

「龍が通常よりも多くの数を生み出すことだ。普段なら1,2体龍が現れる場所で、10体現れるといった具合にな。だが、今回は桁が違う。AランクにSランクの龍まで現れている」

「Sランク……」

「それで、そいつらを狩ればいいのか?」


 大事なのはそこだ。殲滅か、救出か。確かアイシャがこの時間に『大渦の龍脈』で実験をやるといっていた。そうであれば、今すぐにでも行かなければ。


「ああ、だが、中には多くの技師が残されている。だからその救助も頼みたい」

「アイシャ……分かった。先に行くぞ」

「え?」

「何?」


 俺は全身に魔力を行きわたらせ、走る速度を上げる。アイシャの様に魔法を使ったりすることはできないが、こうやって身体能力を強化することは割と得意なのだ。


 ウテナとフランツを置き去りにして『大渦の龍脈』を目指す。


 途中にすれ違う人にはぶつからない様に気を付けて走り、1分もかからずに到着した。


「状況は!」

「中はとられた! だがまだ中に人がいる!」

「鍵は!」

「既に閉めた!」


 門の前にいた水色の龍脈衆が答える。彼の体中は傷だらけで、片腕もだらりとぶら下がっていた。


 彼はその腕の中にパルマさんを抱いている。彼女は気を失っており、身動き一つしない。


「大丈夫か!?」

「俺達は大丈夫だ! だが……中にまだ人が……」

「俺が行こう」

「無理だ! ライトニングドラゴンに、ストームドラゴン、アクアドラゴンらがそれぞれ複数以上いるんだ! それだけじゃない! ホーリーロードドラゴンやアーマードドラゴンの様なSランクもいる! 俺達で勝てなかったんだ! お前たった一人で何が出来る!」


 彼は泣いていた。


 きっと、悔しいのだろう。この龍脈を誇りをもって守り、精鋭としてその名に恥じない働きをしている。


 その彼らが、守り切れなかった。


「俺に任せておけ。何とかする!」

「ふざけるな! 冗談で言っているんじゃないぞ! 死にたいのか!」

「死なないよ。俺は。その程度では死なない。だから、任せてくれ」


 俺は彼の目を真っすぐに見ながらハッキリと言う。


 彼らがここを守っているのだ。そして、この門の鍵は彼らが握っている。それを壊して行くこともできるが、それは今後のここの活動にも響くためやらない方がいい。


 だから、彼らを説得するしかないのだ。


「それ……でも……」


 彼は下を向く。この感じでは厳しいかもしれない。


「俺なら勝てる。俺が入った後に直ぐに鍵を閉めてくれても構わない。だから開けてくれ」

「……ダメだダメだ。そのせいで1体でも出てきたらどうするんだ!」

「中には俺の大事な幼馴染がいる! そして、これくらいならば俺でも勝てる! 頼む!」

「……」


 彼は黙ったまま何も言わない。


 壊すしかないか。そう思った時に、パルマさんが薄目を開けていた。


「勝てるのか……奴らに」

「勝てる」

「本当……だな……?」

「任せろ」


 彼女の目をしっかりと見つめて話す。


 彼女は一度目を閉じてそれからまた目を開けた。


「鍵を開けろ」

「しかし!」

「命令だ」

「隊長……」

「ウテナさんを倒したその力、信じる」

「! ……分かりました」

「鍵を開けろ!」


 彼がそう叫ぶと、大きな鍵が持ってこられて門を開ける。


「後はゆっくり休んでおいてくれ。ここからは、狩りの時間だ」


 俺は体中に魔力を巡らせる。


 しかし、体の外には一切出すようなことはしない。


 体の外に溢れるのは魔力を完全に制御できていないことと同じ。


 俺は門を押し開けると、後ろから声が聞こえた。


「セレット! 一人で行くのか!」

「危険すぎるのではないか!?」


 フランツとウテナが追いついた様だった。


「じゃあ入り口で見ておいてくれ」


 そう言って俺はアイシャの事を一度忘れる。彼女のことは大事だが、今から狩る龍に集中しなければ命がない。


 だから、頭の中から龍を狩る以外の事を全て忘れる。


 俺は門の中に入った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここまで読んで頂いてありがとうございます!

↑の☆☆☆☆☆評価欄↑を押して

★★★★★で、応援していただけると更新する励みになります!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ