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プロローグ
トン。トン。トン。
一人掛けの革のソファ。深く赤い色が真っ暗な部屋で輝いてみえる。
カツン。カツン。カツン。革靴が室内に反響する。黒いロングコートに包まれた男が部屋を直進してくる。ドサッ。一本に束ねた銀色に輝く髪が大きく揺れた。
「やあ、諸君。ご機嫌はいかがかね。」
コンコン。男が目の前の机を二回ノックするとどこからかティーカップが出てきた。
「君たちもいかがかね。最近とてもいい茶葉に出会ってね、これを飲んだら他の紅茶が飲めなくなってしまったよ。とても素敵な薔薇の香りがするんだ。」匂いを堪能してから口に含む。
「なに。早く話せって。まったくそんな急がなくても誰も逃げやしないって。」ティーカップを机に置いた。足を組んで机に肘をつく。
「それじゃあ、さっそく始めようか。この話はある事件をキッカケに人を信じることが出来なくなってしまった少女から始まる。彼女の名前はそうだな。」顎に手を置き、首を傾げる。辺りを見回し、机にの上に視線を戻す。
「ロサにしよう。ロサは人のことを信じることが怖いんだ。」