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VRゲームで歩む最強への道  作者: 仮面色
1章 始まり
6/40

06戦目 ギルド

アクセス数が伸びているので、感謝を込めて更新します!

 次の日の朝、俺は憂鬱な気分で登校してきた。昨日姪原さんと約束はしたものの、いざギルドに入るとなるとやはり抵抗があるからだ。



「はぁ~あ……」



 ため息をつきながら教室のドアを開ける。既に来ていたクラスメイト達の視線が一瞬集中するが、すぐに雑談に戻っていた。


 ノロノロした足取りで席まで向かい、席に着くとドサッと音がした。鞄を適当に机の横に引っかけ、頬杖ついて窓の方を向く。……今日も青空が広がっていていい天気なのに、なんでこんなに憂鬱なんだろうな。



「よっ、おはよ」



 目だけを動かして声の方に視線を向ける。そこには、チャラチャラしてるけど根は真面目な男、内助が立っていた。軽く手を挙げて挨拶してくる。



「ああ、おはよう……」

「なんだなんだ、やけに元気ないな」

「ああ、色々あってな……」



 正直説明する気にはなれない。主に気分の問題で。



「先生に注意でも受けたか? それともやっぱ昨日の対戦の件で……」



 途中までは軽い調子だったが、声色を真剣なものに変えて内助は心配そうな目で見てくる。本当に面倒見のいい奴だな。



「いや、どっちも違うな。憂鬱なのは別件だ」

「そうか……。何かあったら俺に言えよ? できることなら手伝うからさ」

「なぁ、内助」



 そこで俺はふと疑問に思った。なんでこいつは俺に優しくしてくれるんだろうか?



「なんだよ?」

「どうしてお前は俺にそこまでしてくれるんだ?」

「あー……それはな」



 内助は気まずそうに頬を掻きながら話し始めた。視線も泳いでいる。



「なんていうか、ほっとけないんだよな」

「ほっとけない?」

「ああ、俺も昔はレベルが低くて苦労した時期があったからさ」



 てっきり可哀想だと憐れんでいるのかと邪推してしまったが、純粋に俺に共感した上で気を遣ってくれていたらしい。見た目はこんなにチャラいのに。


 だがそれが事実だとわかると、今度は俺の方が気まずくなってきた。



「あー……本当に気を遣わなくていいんだぞ?」

「そうか? せっかく友達になったんだし、一緒に肩を並べて戦ってみたいんだがな」

「まぁ、いつかな」

「なんだよそれー」



 不意に二人で笑いあった。なんというか、こんな感覚は初めてだ。中学時代、ゲームはさておき学校ではいつも一人だったからな。



「よう、雑魚!」



 和やかな雰囲気をぶち壊すように、野太い声がかけられた。この不愉快な声はおそらく……。



「なんだ、てっきり退学したかと思ったぜ」



 やっぱり昨日早速絡んできたあいつだった。後ろには二人の取り巻きを引き連れている。……いい加減名前覚えるべきか。



「おい、しつけーぞ、畑江(はたえ)



 どう返したものかと悩んでいたら、また内助が割り込んだ。どうやらこの男、名前は畑江だったらしい。期せずして知ることができて助かった。



「何度も言ってんだろーが。真偽に絡むなら、俺が相手するってよ」

「ぐっ……」



 強い口調でものを言う内助。それに気圧されているようだった。これは昨日と同じパターンかと思いきや、畑江は思わぬことを言い出した。



「い、いいのか、俺にそんな口を聞いて?」

「ああん?」



 今度は一転して、勝ち誇るように畑江は笑っていた。昨日は逃げ腰だったのに。……何か勝つための秘策でもあるのか?



「聞いて驚くなよ。俺はあの『百獣団』に加入したんだぜ!」

「なんだと……!」



 内助は明らかに動揺していた。しかし俺には意味がわからなかった。



「なあなあ、内助」

「ん? どした?」

「百獣団ってなんだ?」

「えっ、知らないのか!?」



 俺の問いに内助が目を丸くして驚く。そこで俺達のやり取りを聞いていた畑江が、大げさに笑い出した。



「ははは! 雑魚は何にも知らないんだな」

「てめえ……」

「落ち着け、それより……」

「あ、ああ……百獣団ってのは……」



 内助が語ってくれたことによると、こうだ。簡単に言えば、『百獣団』というのは学校に所属するギルドの名前だった。いや、なんとなくそうじゃないかとは思っていたが。でも内助が驚いた理由がわからない。



「百獣団は校内のギルドランキングで四位に入るんだぞ」

「へぇ……それってすごいのか?」

「ああ、学校にあるギルドの数は五十を越えるからな。その中の四位だ」

「なるほど……」



 驚いた理由がだいたいわかった。つまり校内でのエリート集団みたいなものだろう。



「やっとわかったか。俺は百獣団のメンバーになったんだ。俺に逆らうってことは、百獣団を敵にするってことだぞ!」



 畑江はポケットに両手を入れたまま、ニヤニヤ笑いを崩さない。強力な後ろ楯ができたことで、更に増長してるようだ。



「ふん、調子に乗るなよ」

「何?」



 しかしそこで内助が口を挟んだ。畑江は怪訝そうに内助を見つめている。



「俺は『黒騎士』の一員だからな」

「なにぃ!?」



 今度は畑江が驚く番だった。この反応から察するにもしかして……。



「おい、内助。黒騎士って……」

「ああ、ギルドランキング三位。百獣団より上のギルドだ」

「おおー」



 後ろ楯があるのは内助も同じことだったようだ。それも畑江よりも上の。



「で、百獣団がなんだって?」

「ぐがが……」



 完全に立場は逆転していた。悔しそうに畑江は歯軋りしている。やがて畑江は踵を返した。



「くそっ! 覚えとけよ! すぐに俺達がランキングを抜いてやるからよ!」

「ふん、言ってろ!」



 捨て台詞を残して自分の席に戻っていった。どうやら今回は大した争いにはならなかったようだ。



「まったく……あいつは」

「まぁいいじゃないか」

「良くねーよ! 真偽は落ち着き過ぎだ」



 未だヒートアップしたままの内助をなんとか宥めようとする。逆に俺の方が叱られてしまったが。



「それより、いつの間にギルドに入ってたんだ?」



 内助を落ち着かせる意味も兼ねて話題を変えた。気になっているのには、違いないし。



「ああ、先輩に知り合いがいてな。ギルドに誘われてたんだよ」

「それで、まだ入学二日目なのにギルドに入ってたのか」

「ああ、ムカつくけど、畑江の野郎もそうだと思うぜ」

「ふーん……」



 ランクの高い、つまり強いギルドに誘われるってことは、やはり畑江も実力者ではあるのだろう。……性格面はおいといて。



「なぁ、真偽」

「ん?」

「良かったらさ、お前もうちに、『黒騎士』に入らないか?」「それは……」



 誘ってくれるのはありがたい。しかし。



「……やめとくよ」

「俺がなんとか入れてもらえるように、先輩に頼んでみるぞ?」

「いや、お前にそこまでさせる訳にもいかないさ。それに……」

「それに?」

「実はもう、入るギルドが決まってるんだ」

「おお、お前にもスカウトが来たのか!?」

「まぁ、なんというか……来たというか、捕まったというか……」

「ん?」



 本当の事情を話す訳にもいかない。どう説明したものか悩んでいたら、横から声がかけられた。



「おはよ、霜屋君、板宿君!」



 内助と同時に横を向く。そこにいたのは満面の笑顔を浮かべた姪原さんだった。



「ああ、おはよー」

「……おはよう」



 気楽に挨拶を返した内助に対し、俺の声が若干固くなったのは許して貰いたい。



「そんな顔しないでよ、霜屋君」

「真偽? どうした?」

「それは、その……」



 内助は俺と姪原さんを見比べて、不思議がっている。まぁ無理もない。



「えっとね、実は私と霜屋君は同じギルドに入ったの!」

「へぇ! なんだ、そうだったのか!」



 言ってくれればいいのに、なんて俺の背中をバシバシ叩く内助。その反応から純粋に喜んでいるように見える。


 そこでふと気付いた。クラスのみんなの視線がこちらに集まっていることに。


 やはりクラストップの姪原さんの動向は、みんな気になっているのだろう。こちらをチラチラ見ながら、ヒソヒソと話し声も聞こえてくる。



「で、どこのギルドなんだ?」



 そこで内助が核心となる質問をした。周りも一瞬静かになる。そういえば、俺もまだギルドの名前聞いてなかったな。



「うん、『平和の園』ってギルドなの」



 姪原さんが答えると、周りの声は再び大きくなる。一部に耳を澄ませてみた。



「平和の園……? 知ってるか?」

「いや、知らないな」

「でも、あの姪原さんのギルドだし……」



 どうやらクラスメイトのほとんどが知らないようだった。この反応から察するに、有名なギルドではないのだろうか?



「んん? 俺は知らないけど……ギルドランキングはどれくらいなんだ?」



 内助も不思議に思ったのだろう。続けて質問を繰り出す。別に皮肉とかではなく、単純に疑問なのだろう。



「そ、それは……」



 しかし、質問された姪原さんは口ごもっていた。何か答え難そうにしている。



「ははは! 平和の園だって!?」



 そこに乱入してきたのは、またしても畑江だった。ドスドスと音を立てながらこちらに近づいてくる。



「ちっ、畑江……お前に用はないんだよ」



 内助は露骨に舌打ちして嫌そうな顔をするが、畑江は意にも介さない。無視してそのまま喋り続ける。



「『平和の園』って、ギルドランキング()()()のところじゃねーか! 笑わせるぜ!」



 畑江は手に握り締めた情報端末を振りながら、教室中に聞こえるように、あえて大声で言っていた。聞いてすぐ検索したのだろう。それを聞いた内助も目を丸くして驚いている。


 俺も意外だった。まさかクラストップの姪原さんが、そんなところに所属しているなんて。


 でも昨日の話だと、お姉さんが所属しているって話だったからな。それに付き合ってあげてるのか。



「むむ……い、今は最下位だけど、すぐにランキングが上がるから!」



 姪原さんは拳を握り締めて、悔しそうにぷるぷる震えていた。露骨に弱いって言われてるようなものだからな。



「無理に決まってんだろ。雑魚は頑張っても雑魚のままなんだよ!」

「そんなことないから!」

「姪原……そんな所抜けてよ、俺の所に入れよ。俺が口を利いてやるぜ?」

「おいっ!」



 ニヤニヤ笑いながら、畑江は姪原さんの顎をつかもうとする。それを内助が止めようと手を伸ばす。



「やめろ」

「なっ!?」



 が、それよりも速く割り込んだ者がいた。というか俺だった。俺は畑江の手が姪原さんに触れる前に、手首を掴んでいた。



「何しやがる、雑魚!」



 バシッと手を振り払われる。俺は力を抜いて、されるがままに手を離した。



「それ以上は見過ごせないな」

「お前には関係ないだろーが!」

「関係はある。俺は姪原さんと同じギルドの一員だからな」



 言ってしまった。だが後悔はない。仮にもギルドに入ると約束した以上は、姪原さんは仲間だ。仲間に対してそういう態度を取られるのは見過ごせない。これが内助でも同じことをしただろうが。


 俺の宣言に畑江は一瞬ポカンとしていた。が、すぐに笑いを取り戻す。



「は……ははは! 雑魚ギルドに雑魚が入って何ができる! わかったわかった、雑魚は雑魚同士で仲良くやってろよ」

「このっ……」

「てめえ……」



 あからさまに馬鹿にしている。姪原さんも内助も怒りを隠そうとしない。一方俺の態度は冷めたものだった。



「好きなように言ってろよ。結果が全てだ」

「何言ってんだ、お前は俺に負けただろ!」



 今はそう言われても仕方ない。だからここは、甘んじて受けておく。



「はーい、ホームルーム始めますよー」



 ちょうどいいタイミングと言うべきか、このなんとも言えない空気をぶち壊すように、船戸先生が入ってきた。集まっていたクラスメイト達もぞろぞろと自分の席へと戻っていく。


 ……やれやれ。面倒なことになってきたな。

次はポイントを入れて頂けるように頑張ります!

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