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不死身の勇者の復讐譚  作者: 元カノ
4/18

王都滞在記

王都滞在予定最終日


午前9:00


俺は総務長に充てられた宿屋の朝食を食べる。その隣にリーニャの姿は無い。

物音聞こえぬ宿屋の中、ただ1人滞在中の事を思い出していた。




リーニャと出会い、通された部屋には魔術的刻印が押された箱があった。


リーニャに進められ箱に入った俺は瞬きをしないうちに小綺麗な服装に変わっていた。


リーニャ曰く

「この王都では魔術を用いて大体の事はできます。この箱に魔力を注ぐことで先ほどのように召し物を変えることもできます。」


そういうとリーニャは自身のパスを取りだした。


「このパスも、魔術が施されています。その身分に応じた機能が使えるんです。第三メイド長、私であれば重要な客人をもてなす為の一通りの機能を有しています。」


というと、リーニャはパスに手をかざした。

その瞬間、パスは微小な光を発しリーニャの面前に何かのデータを写した。


「ここからだと南部の施設が空いていますね。そこまでの間にソルテ様にパスの使い方をお教えします。」


長い廊下で一通りの機能を教えてもらったが、今日作ったばかりの為か教えてもらった大半の機能は使えなかった。


王宮を出ると西日の強い光が目を眩ました。


「ソルテ様、パスの地図機能を開いて下さい。」


パスに手をかざし、王都の地図を写し出した。


「ソルテ様は王都は今日が初めてとのことですので、宿屋までの間に王都についてお教えいたします。」


目的地である宿屋までは少し歩く、その間の時間を潰しには良い話題だ。


「王都にはまず、八つの門が存在します。

東西南北の八方位に合わせてですね。それぞれ色分けされており、東が赤、南は青、西は緑、北は黄色。その間の門は、例えば東北の門は東側が赤、北側が黄色と混声二色で表されています。」


「門を見ればその方角がわかるんだな、俺は赤単色の門から入ったから東側からか。門がしまることはあるのか?」


「門が閉まっているのはほとんどありませんね、有事の際に閉まるそうです。全門が閉鎖すると王都を囲む壁一面に施された魔術刻印が起動するそうです。」


願わくば、その刻印が起動しないことを祈りながら建物の質が異なることに気づいた。


「王宮周辺とここら辺では建物の質が違うのか?」


「ええ、王都は王宮周辺を一区画として周りの八つの区画囲み全九区画で構成されています。今歩いていますのは商業地区ですね。欲しいものは何でも買えます。」


ここで致命的な事に気が付いた。適正検査だけ受ける気でいたので王都への往復賃金しか持ってきていなかった。

まあ、宿屋くらい王都側が負担するだろう。


「さて、着きましたよ。ここがソルテ様に滞在していただく宿屋です。同じ宿屋におりますので何かご用がありましたらお呼びください。」



部屋に入り骨組みのしっかりしたベットに腰を下ろす。

未だに自分が勇者であるという実感は湧かなかった。

思い返すと総務長やリーニャの俺への扱いは客人へのもてなしであるが、[勇者]という人間への扱いとしては妙にさっぱりとしていた。

滞在場所が王宮内で無いこともその疑念を加速させた。


「もしかして[勇者]なんてのは結構いるものなのか?」


自分への扱いが不当だと、傲慢になりつつあることを自覚し特になにもなく初日は終わった。


二日目の朝、朝食が終わるとすぐさまリーニャに検査場へと案内された。


また手の甲にスタンプをするのかと思いきや、王宮にあったような箱に入らされ動きやすい服装に変えられた。


箱から出ると、リーニャは自分のパスを見ていた。

すると、突然目を見開き


「ソルテ様!申し訳ございませんが私は王宮へと戻らなくてはならなくなってしまいました!この後の検査についてはそこの担当者に聞いてください!それでは、失礼します!!」


リーニャの気迫に圧倒されているうちに急いでリーニャは王宮へと戻っていった。


「勇者の検査って...そんな重要じゃないのか?」


勇者の検査場のためか担当者は1人しかおらず、この日は二人で検査を受けた。

体力検査から知能検査まで幅広く終え、検査が終わった頃にはすっかり夜だった。


「やっぱり[勇者]だけあってすごい評価値とるね~!明日の昼には評価が出るだろうから!楽しみにしてて!あ、あとさっきのメイドさんが明日午後3時に王宮に来てくれって言ってたよ!」


「ああ...1人でいくんですね...」


「さみしいのか?明日休みだったら一緒についていったんだがなあ。明日も仕事あるんだ、残念だなあ。」


この1日一緒にいたせいで俺は名前も知らない検査担当者との親睦を深めていた。

別れを惜しみつつ検査場を離れ、パスを起動して宿屋へ向かった。


この時、何故か誰ともすれ違わ無かった。そして、宿屋に戻っても人と顔を合わせる事はなかった。


午前10:00


誰もいないからといって宿屋の冷蔵庫を勝手に漁った事はさすがに不味かっただろうか。

朝食を食べ終え、皿を洗った。

村の両親は何をしているだろうか。

たった三日程しか離れていないのに今生の別れを果たしたかのように感じるのはなぜだろう。

総務長が俺の世話を任せたリーニャがここにいないのはなぜだろう。


人が誰もいないのはなぜだろう。


その時、宿屋の扉が開いた。

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