表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

オタクな宇宙人

作者: チャンドラ

 私の名は、ペテラルニウムアンタナドラス。宇宙人である。訳あって、地球人に化けて侵入している。

 その訳というのは、地球を侵略するためである。地球のことをするために私は会社員となり、地球人として侵入している。


 地球人というのは、実に興味深い。まず、会社という制度。どうやら生きていくために、会社というものに心臓を捧げる必要があるらしい。


 私は地球人に化け始めたばかりの頃、この制度をくだらないと嘲笑していた。自分のミスは自分で拭くべきだと私は思っていたからだ。少なくとも私の星では、自分のことは自分で責任をとっている。


 他の星を侵略すると一度決めたら、自分の力だけで侵略するのが常識になっている。しかし、この星の軍事力というのは、非常に厄介である。どうやってこの星の人間どもを死滅させるか躍起になって考えている。


 他の星では、それほど知的生命体の数は多くはない。しかしこの星の知的生命体は、たくさんの数がおり、さらに人を一人でも殺せば、警察やら自衛隊という組織がすぐさま駆けつけるという。本で見るには、こいつらの戦闘力は、なかなか侮れない。


 私の戦闘力は、全力を出せば小さな街を吹っ飛ばすほどの力なのだが、力を使い果たせば、しばらく戦うことができなくなる。 


 それゆえ、この星を滅ぼすための作戦をサラリーマンとして働きながら、地球を侵略する作戦を練っている。

 地球人としての名前は、佐藤武というありふれた名前で名乗っている。容姿は中肉中背の黒髪。地球人に化けれると、地球人と同じ体質になる。本来、私の星、アンディラディアスグラファング星は、あまり食事を取る必要もないし、性欲も無性生殖なので、無いのだが、地球人に化けると、すぐにお腹はすくし、風俗にも行きたくなる。地球人に化けて、地球人とは非常にめんどくさいものなんだと私は思った。

 仕事を終え、自宅に帰ろうとした時、禿げた上司が声をかけてきた。


「武くん! 仕事終わりに一杯どうかね。」

 ふざけんなと私は思った。一体全体何が楽しくて、こんな禿げたおっさんと飲みに行かなきゃいけないのだろうか。


 最近の私の楽しみは、アニメ鑑賞である。地球人に化けてからというもの、この地球のいや、アニメ文化というものに私は非常に感心した。

 現実の美人の女性と勝るとも劣らない美形のキャラクター、引き込まれるストーリー、アニメにベストマッチする声優とbgm。


 仕事は、これまで私が行ってきた他の星との戦闘とは違う感じで疲れるのである。いや下手したら戦闘よりも疲れるのである。


「すみません、今日は用事があって...」

 適当な言いを上司に言ってみた。

「なんだよ、付き合い悪いなぁ〜。そんなんじゃ出世しないぞ〜!」

 うるせぇ焼くぞ。このアンディラディアスグラファング星でトップクラスの力を誇るペテラルニウムアンタナドラスに楯つくとはいい度胸をしている。


 テラルニウムアンタナドラスが命じる。貴様は今すぐ死ね! 最近、見たアニメのように高らかにそう言いたいと思ったが、私は考えた。


 今ここで、そう言えばこの禿げはぶちギレるだろう。そして、私をクビにしてくるかもしれない。そうなれば、私は路頭に迷うことになる。


 一度、地球人に化けてしまえば、他の地球人の姿に化けることができないのである。職歴をごまかすのは難しいだろう。考えに考え、私はおべっかをつかうことにした。


「申し訳ありません。次、誘ってくれれば必ず行きますから。」

 頭を下げて禿げ上司に話した。

「うん。まぁ、もう誘わないかもしれないけど(笑)」

 滅びのバーストストリーム!!! 心の中で、私は思いっきりそう叫んだ。闇のゲームに負けて死ねと思った。

 

 ストレス発散がてら、秋葉原に向かうことにした。

 秋葉原、メイドカフェの勧誘にあった。

「どうぞ! よかったら遊びにきてください!」

 なんやかんや入ってみることにした。入ると当然のごとくメイド服を来た店員が私を出迎えてくれた。


「いらっしゃいませ! ご主人様。」

 なかなか気分がいいと思った。ご主人様と言われるのは悪くない。以前、私が侵略した星々では、最後まで抵抗して、気分を害する態度しかやつらはとらなかった。

 しかし、この店員たちは、何もしてないのに、私を主人として出迎えてくれる。


 メイド喫茶を考えた地球人に心の底から賞賛を送った。

 「ご主人様は初めてのご来店ですか?」

 メイドが私に質問をした。メイド喫茶に来たのは初めての経験である。一度は行きたいと思っていたのだが、いかんせん入るのを躊躇っていた。今日はなんやかんやで入ることができた。


「ああ、そうだ。」

「かしこまりました。それでは、注意事項を説明させていただきます。まず、メイドちゃんには手を触れないようにお願いします。一時間一オーダー制となります。また、写真を勝手に撮るのはご遠慮ください。」


 淡々とメイドが説明をしていった。まぁやつらもお金を得るために必死という訳である。形は違えど、これは戦いなのだということは、地球人として働き始めた私も充分理解している。


 理解している上で、メイド喫茶を楽しませていただくとしよう。

「にゃーん!にゃーん!」

 店員を呼ぶ際は、こう言って呼ぶとメニューに書いてあったので、そう叫んだ。結構大きい声のせいか、周りのお客さんが引いてるように見える。


「はい ご主人様なんでしょ?」

「この、マジヤバスw オムオムオムライスください。」

「はい、マジヤバスw オムオムオムライスですね。かしこまりました。」

 まじやばくね? と私は思った。こんな変な名前の料理があったり、店員を呼ぶのに猫の泣き真似をさせたり、メイド喫茶まじやばじゃね? と思った。


 注文してから十分後に、料理が届いた。

「それでは、美味しくなる呪文を掛けさせてもらいますね!」

 美味しくなる呪文? 一体どんな呪文なんだろうか。というか地球人に呪文を使えるものがいることに驚いた。私の星の知り合いには、生命を一瞬で石化させる呪文を使えるやつがいるが、地球人が呪文を唱えているのは見たことがない。


「お・い・し・く・な〜れ!」

 手でハートの形をメイドが作った。

「萌え萌え・キュン!」

 ハートの形をした手をオムライスに近づけた。これで本当に美味しくなったのだろうか。


「さぁ! ご主人様も私と一緒に!」

「え! あ! はい...」

思わず戸惑ったが、やってみることにした。


「お・い・し・く・な〜れ!」

 メイドと一緒に手でハートの形を作った。

「萌え萌え・キュン!」「萌え萌えキュン!」

 メイドと一緒に唱えた。

「ご協力ありがとうございます! ご主人様。これで美味しくなりました。どうぞ召し上がってください。」

 さっきの呪文まじやばくね? と思ったが、さっそく食べてみることにした。

 味は結構美味しかった。 まじやばくね? ってほどの美味しさでもなかったが。結構楽しめた気がする。


 滞在時間五十分でメイド喫茶を後にし、アニメイトへと行き、円盤を購入した。円盤と言っても、宇宙人が乗る方ではなく、アニメのdvdである。


 帰宅して二、三本アニメを視聴した後、私は寝ることにした。

 明日も早い。社畜系宇宙人は明日も一生懸命働くのである。私は営業として働いているが、何本かの営業はマインドコントロールの力を使って契約を取っている。しかし、マインドコントロールは一日にそう何度も使えるわけでないので基本的には、自力で契約を取るようにしている。


 私は、たまに自分は一体何してるんだろうと思うことがある。しかし、アニメは面白いので、なんだかんだで今の生活を楽しんでいる。


 しかし、いずれはこの星を侵略せねばならない。その時は、大好きなアニメのことも今日のメイド喫茶のことも忘れて心を鬼にして、地球を侵略する覚悟である。


 次の日、取引先の会社に向かった。受付の人に、案内され、応接室でクライアントを待っていた。

「失礼します。」

 クライアントが入ってきた。見た目は、二十代くらいの女性であった。自分より若い人と取引するのは、久々だと思った。

「お世話になっております。丸々商事の佐藤武です。本日はよろしくお願いします。」

 ビジネスモードへと心をシフトチェンジさせて、挨拶をした。

「あの、すみません。あなた...」

 何か言いにくそうな顔をしている。 何だ? 私が何かやらかしたか? 先方に送るはずの資料を送ってないとか?

「はい?」

「あなた、もしかしてペテラルニウムアンタナドラス星人?」

「...え?」



 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ペテラルニウムアンタナドラスという名前が個性的ですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ