第5話 良くありがちな光景(6)
だからわらわは陛下の御顔を自分の方へと抱き込むようにギュ! でございます。
それもわらわの胸の谷間で包み込むように優しく労わってギュ~! でございますから。
「そうか、それは良かった」
陛下がわらわへと言葉をかえすと。
「ちょ、ちょっとエリカ~! エリカ~! これは不味い! 不味言ってぇ! お店の店員のお姉さんもいるし、他のお客様もいるから今は駄目! 家に帰る迄、したら駄目だ! 皆さんがビックリするから!」
陛下はわらわの胸の谷間で顔を埋めつつ、ブツブツ不満……。わらわを諫めてくるから。
陛下は生前はこんなことをわらわに告げるような男性ではなかったのに。わらわはシクシクと悲しいと思う。
「(あのね~、エリカ~? 生前の僕は君やレビィア、リムが産まれた世界で好き放題して。妃の君が注意をしてきても聞く耳を持たない、我が物顔でいたドラゴンだったけれど。今の僕はこの世界で日本人して生まれてきたドラゴンだから、生前とは違い、日本のドラゴンなの、分かる、エリカ?)」
陛下がわらわへと言葉ではなく、生前と同じように脳名へと直接話かけ諫めてきた。
だからわらわは「えっ!」と驚嘆をすれば。
「(レビィアもリムも異世界からの移民になるから、この国の法律や風習、生活習慣を日本人になるためにと、今覚えている最中だよ。だからエリカも大変だと思うけれど、この国の法律や風習、生活習慣を覚えて、俺の妻として日本人になってよ。お願いだから、頼むよ、エリカ……)」




