第5話 良くありがちな光景(2)
わらわはどのドレスを購入しようか? と困惑して「う~ん、う~ん」と考える人になりながら呻っていると。
「エリカ、中々服の方が決まらないかい?」
陛下がわらわへ優しく微笑みながら尋ねてくれた。
「はい、ドレスの種類も向こうとは違い沢山ありますから、わらわもどれにしてよいかわからず悩んでいます」
わらわは苦笑いを浮かべながら陛下へと言葉を返した。
「う~ん、そうなんだ?」
「はい」
「じゃ、エリカは今どの服が好いと思っているの?」
わらわが返事をすれば陛下がどのドレスがよいのか? と尋ねてくれたので。
「先ほど陛下に見せていただいた、スマートフォンと呼ばれる物に映っていた今流行りのドレスはこんな感じでした。だからわらわはこれと、これがよいのでは思うのですが? 陛下はどちらがよろしいですか?」と尋ねると。
「えっ!」と陛下は驚嘆して、「俺はこれがエリカに似合わないかな? と思うのだけれど?」
陛下はわらわに涼しそうな白の半袖の首元まで隠れるタイプの上だけドレスにグレイの色をしたズボン? との上下はどうか? と見せ尋ねてきた。
でもわらわは先ほど陛下に、自分の胸元まで大きく開いたタイプの上に短い裾のタイプのドレスを見せ「どうですか?」と尋ねたのですが。
陛下はわらわが「どうか?」と見せた魅惑的なタイプのドレスに対して先ほどから余りいい顔をしていないような気がするから。
わらわは『何故だろう?』と思えば。
「お客様~、もし宜しければ、試着をしてみたらどうですか~?」
お店の女性が営業スマイルで微笑みながらわらわと尋ねてきた。
「えっ! 試着?」
わらわが驚嘆すれば。
「先程から奥様と旦那様の服の趣味が合わないようですから、一度試着室で試着をしてみて、鏡に映る自分の姿を見ながら御二人で御検討してみたらどうですか?」
お店の女性がわらわと陛下に、ある小さな部屋を指さしながら提案をしてくれた。
う~ん、でもわらわはあの小さなお部屋で試着をするのはどうも畏怖を感じるな? と、身の危険を感じるから余りいい顔ができないでいると。
「う~ん、そうですね……。試着をしてみる方が良いかも知れませんね……。もしかすると? 僕が考え、危惧をしているような事は無いかも知れませんから」
わらわは顔色を変えながら、あの試着室なる小部屋を見詰めているのに陛下はお店の女性の意見に同意をするから。
陛下はわらわが曲者に攫われても気にもしない、平気なのだろうか? と思うのと。
それとやはり陛下はわらわの過去の過ちをまだお許しになっていないから、わらわをこの世界の亜人売りに性奴隷として売られるつもりなのだろうか? と思うから。
わらわの瞳がシクシクと潤んでくる。




