第23話 親子喧嘩の終焉……(5)
「はぁ~、じゃ説明をしますね、旦那様……」
俺の荒らしい問いかけに対してレビィアは大きく溜息をつき、また呆れた顔と声音で言葉を漏らし始めた。
そんなレビィアへと俺は「うん」と頷きエリカさんの方へと視線を変えると。彼女は自身の顔色を真っ青にしながら下を向き、ガタガタと震える異常事態へと陥っているのが確認できた。
だから俺は先程レビィアが自分の母親へと吐いた怒声と問いかけは、満更嘘ではないのかも知れない? と思うのだった。
「……仮にお母様が妊娠をされていて、お腹の子が女ならば、その子が大きくなれば旦那様の新しい妃として加わるからよろしいのですが」と。
レビィアが可笑しな事を俺に説明をするから。
「俺はそんな事をしないよ……。小さい頃から自分の娘のように育てた子だから、義理であろうとも俺の嫁にする事はない」と。
前世の俺が残した本物の宝物……。財宝の二人を自分の嫁にしている俺……。説得力が無い俺が告げるものだから。
「えっ!」
俺に対して罪悪感があるのか? 自分の顔色を変え、下を向き、身体を震わせていたエリカさんが自分の顔を上げ──驚嘆すれば。
「いいえ、必ず旦那様は自分の妃にします。間違いなしに……。だってドラゴンのオスは基本一夫多妻のハーレムなので、いくら旦那様が、半分が日本人だとしても気性が荒く激しいドラゴンの血の方が強く出て、性欲が増し、新たな妃を求めるから無理です……。それに? お父様が病死で他界する事がなければ。私とリムはもう既にお父様の妃になっていたでしょうから、子供がニ、三人居た可能性だってありますからね」
レビィアは顔色変えず淡々と言うか? この日本では禁止にされている親子の恋愛も向こうの世界では当然だと告げてきた。
「いや、でも俺は日本人だし、過去の記憶もほとんどないから、義理であろうとも幼い頃から自分の娘のように育てた子供を自分の嫁にする事はない」
俺は真っ青な顔でレビィアの説明に対して反発をしたのだ。
俺はエリカさんに対しても自分の娘を嫁にする事はないと思いながらレビィアへと告げるのだが。
「いいえ、します……。旦那様は必ず私とリムの妹も年頃になれば自分の妃に加えます」
レビィアは自分の首を張りながら、俺の言葉を否定する。
「いいや、しないって」
「いいえ、必ずします」
「レビィア! お前! 俺をそんな節操無しの男だと思っているのか?」
「別に私は旦那様の事を心から愛して、心配をしているから、あなたの事を節操無しだとか、思っていません。本当です……」
「じゃ、俺が義理であろうとも自分の娘を嫁にするとか言うな!」
「いいえ、必ずします。それがドラゴンのオスであり、王でもあるあなただから、必ずドラゴンの血が強く出て若いメスを求めます」
「レビィア~! お前~! いい加減にしろよ~!」
俺がいくら否定しようともレビィアは必ず実行すると言い切ってくるから。俺はカァ~! と頭に血が昇り──自分の右腕を振り上げようと試みれば。
「もう二人とも言い争いは辞めて~! 今はそんな話で二人が言い争いをすることではないでしょ~! 母上のお腹にもしも子がいても女の子ならば何の問題は無い訳だから。その子が成長をしていく中でパパが決めればいいこと……。でも母上のお腹の子がオスならば大変になるのだと。母上がもしかしての子を守ろうと泣いてばかりで、パパにちゃんと大事な説明をしないから姉上が代わりに説明をしようとしてうるのでしょ? ならばパパと口喧嘩をしないで説明をしてください。それとパパが前世の記憶……。ドラゴンをしていた記憶がなく、母上のことがわからないのは、リムが消しているだけ。でも今後のことを考えるとパパの前世の記憶も必要だとリムも姉上も思うから。ドラゴン化した時のパパは日本人的な考えをできなくなると思う? だから姉上の話しにもパパはちゃんと耳を傾けてお願い……」
俺とレビィアが夫婦喧嘩をしているとリムが割って入り、二人を諫め。俺にレビィアに話しを素直に聞いてくれと。
今度はリムが今にも泣きそうな顔で告げ、諫めてきたから。
「ご、ごめん、リム……。俺もついついとムキになり荒々しい言葉を吐いてしまって本当にごめんね」とリムへと謝罪をすれば。
「レビィアも本当に悪かったごめんよ……。俺の事を嫌にならないでくれお願いだから……」
俺はリムからレビィアへと視線を変え、深々と頭を下げた。
「うぅん、良いですよ。旦那様……。私の方こそ、主様に逆らい、楯突いて本当に申し訳御座いません……。私の方こそ嫌いにならないでください、旦那様……」
レビィアは俺へと謝罪をすれば、エリカさんがこちらの様子を唖然としながら窺っていようが。俺の胸へとダイブ! 飛び込んできた。
そして妻らしく甘え始めるから。その様子を見た出戻りを許してもらえないエリカさんはまた下を向き涙を貯める。
だから彼女はある事を決意してしまう。
「陛下~?」
「な、何、エリカさん?」
俺はこの場の雰囲気に流され抱き付き、俺に甘えてきて、最終的にはキスまで要望してきたレビィアの柔らかい唇を離して声を掛けてきた彼女へと視線を変え声を返した。
「も、もしもわらわのお腹に子が宿っていればおろします……。だからそれをわらわの二心ない忠義と受け取ってください。そしてわらわも陛下の許に復縁をすることをお許しくください……」
エリカさんは大変に辛そうな顔で俺へと告げ、また下を向いたのだが。
「ちょ、ちょっと待って……。エリカさん……。そこまでしなくて良いよ……。今後の事はこれから俺達家族でゆっくりと考えていこうよ……。それで良いじゃない、エリカさん?」
俺は悲痛な表情で下を向く彼女……。本当はもしも自分のお腹に子が居れば降ろしたくはないのだろうな? と思われるエリカさんへと告げた。
「うぅん、そう言う訳にはいきません」
しかしエリカさんは俺の言葉を聞いても自分の首を振り。
「これはわらわのケジメですから。もしもお腹に子がいれば降ろします……。またそうしないと先ほどレビィアがわらわや陛下に諫めてきた通りで、メスの子が産まれた場合は後々陛下の妃にすることで終わりますが。もしもオスのドラゴンならば我が一族に災いを運ぶために生まれてきます……」
エリカさんは俺に辛そうに告げてきた。
「……エリカさん、俺達家族に災いを運ぶために生まれてくるって一体どう言う事なのかな?」
俺はエリカさんの言葉の意味、真意が解らない。
だから困惑しながら彼女へと尋ねた。
「わらわのお腹の中に、仮に子がいるとすれば、陛下とは血の繋がりがございません……。だからオスの子であれば、その子が成長をすれば必ず平然と陛下に楯突き、自分が竜王になるために争ってきます。それもこの世界へを破滅……。混沌へと導きながら陛下を倒すために何度も争いをしかけてきます。そしてもしも仮に陛下がその子に討たれるようなことにでもなれば。その子はこの世界の王へと君臨して、自分の実母であるわらわや姉のレビィアとリムも自分の妃とします。それがドラゴンの一夫多妻……。ハーレム社会になるのですよ……」
エリカさんは、俺の子ではない男の子の赤ちゃんを産み落とせば、この日本が……だけじゃないか……?
この地球が怪獣シネマのように大変な事になるのだと、安易な台詞を漏らす、平和ボケしている《《日本人》》の俺へと説明してくれたのだ。
だから俺の顔色が急変するのだが。それでも彼女の説明の方が終わる訳でも無く。
「……レビィアやリム……。そしてわらわにも時期に、陛下の子ができると思いますが。その子達がメスならば、陛下と血の繋がりのないオスの子は力づくでもその娘達を自分の妃に加えます……。そして男の子ならば産まれて直ぐにその子を食い殺すでしょう……。それがドラゴンの竜王と言う者ですから。レビィアはそれがはっきりとするまではわらわと陛下は床を一緒にすることや夫婦の営みをしてはいけない。禁止にすると告げてきた訳でして……。それが気に入らないのならばわらわに向こうの世界へと帰れ、二度とこちらの世界へと足を踏み入れるなと諫めてきた訳なのです……。だからわらわのお腹に厄災が宿っているようならば。わらわは陛下のため、一族のために子をおろします……」




