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第14話 異世界で初の対面販売をしてみます(1)

 う~ん、何? この丸い形は……。


 それにこのお好みソースと呼ばれるタレは何? とても美味しい物には見えない……。青のりや紅ショウガも大変に不味そう……。異国の文化の食べ物……と言うか? 異世界だった。(笑)


 まあ、とにかく(わたくし)達の旦那様が焼き作ったらしい【たこ焼き】と言う物を仕方なく……。


 じゃないでよ! 本当ですよ! 信じてください……。


 (わたくし)の愛の深さを旦那様に信じてもらうために。(わたくし)はこの爪楊枝なる物をしようして今からこの【たこ焼き】を試食してみようと思います。


 まあ、リムが言うには「姉上普通に美味しいよ」と先程(わたくし)へと教えてくれたのでパクリ! と食べてみようと思います。


 だから(わたくし)は【たこ焼き】と呼ばれる物の身体に爪楊枝なる物をプㇲ! と刺し、持ち上げ──。旦那様やリムが注目する中……。自分のお口の中へと入れ込んでみた。


 そしてモグモグと一応はしおらしく、上品に動かしながら、最後にゴクリ! と飲み込んだ。


『……レビィアさん、俺が作った【たこ焼き】はどんな味かな?』


 旦那様が(わたくし)へと恐る恐る尋ねてくる前に。


「……ん? 美味しい! な、何これ? 全然見た目は良くないけれど。普通に美味しいですね……」


 (わたくし)が自分の唇に手を当てつつ驚嘆すれば。


『そ、そう。良かった……』と旦那様の安堵した顔、声音が(わたくし)の耳へと聞こえる前に。


「でしょう、姉上……」


 リムが(わたくし)へと声を掛けてきたので「うん」と頷けば。


「保温器に入れているために少しばかりフニャフニャ、ベトベトとしているけれど。この【たこ焼き】が焼いて直ぐだったらもっと美味しいよ。姉上……」


 リムが(わたくし)へと教えてくれた。


「そうなんだ?」

「うん」

「リム、貴女食べた事があるの?」


 (わたくし)の言葉に対して頷いて返事をくれたリムへと尋ねてみたのだ。


 だってリムはこちらの世界……。異世界と呼ばれる世界の日本へは昨日来たばかりで、(わたくし)と一日程度しか変わらない期間なのに彼女はこの【たこ焼き】の焼き立てを食べた事があると教えてくれたから尋ねてみた。



「昨日ね、パパがリムに、自分が焼いたばかりの【たこ焼き】が美味しいか? 不味いか? 試食をしてみてくれと言ってきたからリムは『うん』頷いて試食をしたのだけれど。焼き立ては【たこ焼き】の周りがカリカリしていて、もっと美味しかった」

「そうなんだ。もっと美味しんだ。焼き立ての【たこ焼き】は……」

「うん、美味しいし。推せれるよ。姉上……。だからリムは思うの? もっとこの【たこ焼き】って売れるはずだと思うの……」


 リムが嘆きながら相談をしてきた。


「うん、そうだよね……。(わたくし)もリムの言う通りだと思う……。だって(わたくし)達の世界でこの【たこ焼き】を販売すれば直ぐに売れ切れると思うぐらいは、今の保温器へと入れたままの状態の【たこ焼き】でも十分美味しい……。いけると思うよ?」

「そうなのレビァイさん?」

「は、そうですよ。旦那様……(ニコリ)」


 旦那様が驚愕しながら尋ねてきたので、(わたくし)は妃らしく魔王の笑みではなく、女神の微笑みを浮かべつつ我が家の主様を密かに鼓舞した。


「そ、うなんだレビィアさん……。俺何か自身がついたよ……。昨日もさ、リムちゃんに【たこ焼き】と【たい焼き】を試食してもらったのだけれど。美味しい、美味しいと褒めてもらって少しは自身がついたのだけれど。リムちゃんが天使様だから俺の許から消えていなくなった後は、また寂しくなって……と言うか? 俺がリムちゃんと会話した事自体が夢幻だったと言うか? 俺が心の病にかかってしまったのか?  と思っていたけれど。またリムちゃんがきてくれたし。そしてレビィアさんもきてくれたから俺嬉しいよ……。そして頑張るから……」


 旦那様は(わたくし)とリムの事を交互に見ながら決意をしてくれた。


 だから(わたくし)も自分の夢である王……。伴侶を生涯助けるのと、自分のお店をいつかはもちたいと思っていた夢……。


 それもこんな煌びやかで奇麗なお店を持てたのだから、(わたくし)はいざとなればドラゴンの神技を使用してでもこのお店を守ってみせると誓う。


 でも(わたくし)はふとある事が気になりまた二人……。


 そうまた(わたくし)の目の前でイチャイチャ、ラブラブ、お花畑を始めだした旦那様とリムへと口を開く。


「……あの、二人共……。【たい焼き】って何?」


 (わたくし)は今度は二人へと【たこ焼き】ではなく、【たい焼】の事を尋ねてみた。


「姉上~、今日はね、パパが焼いていないみたいだけれど。甘くて美味しいお菓子だったよ」

「そうなんだ。甘いお菓子なんだ」

「うん」


 (わたくし)はリムから【たい焼き】が甘いお菓子だと聞き、大変に興味が湧くのだ。


 だって(わたくし)の産まれ育った世界の甘い物と言えば虫達が自分の巣へと集めた花の蜜を集め。それを焼き菓子へと加工した物か。その蜜を直にペロリ! と舐めて甘味を楽しむしかない。


 だから(わたくし)は【たい焼き】がどれくらい甘い物か気になって仕方が無いから。


「リム~、虫が集めてきた蜜と【たい焼き】ってどちらが甘い?」と尋ねてみた。


「う~ん、甘いのは虫の蜜かな? でもリムは【たい焼き】の方が美味しかったよ。姉上……」


 リムは微笑みながら(わたくし)へと教えてくれた。


「そうなんだね」

「うん」

「何故旦那様は今日は【たい焼き】を焼かなかったのですか?」


 リムとの会話を終えた(わたくし)は旦那様へと尋ねてみた。


「えっ! あの……。実はね、レビィアさん……僕が焼いた【たい焼き】も【たこ焼き】と一緒で売れないんだよ。だから焼き、作り置きしていても売れないから後で僕が食べるか、廃棄処分にするだけになるから勿体無いので、今日は焼いていないのだよ。ごめんね」

「いいえ、いいえ。大丈夫ですよ。旦那様……」


 (わたくし)は苦笑いを浮かべる旦那様へと首を振れば。


「リム、【たこ焼き】って今日も沢山余っているの?」


 (わたくし)は旦那様からリムへと視線を変え尋ねた。



「ん? う~ん、今日も結構残っていたね。あっ、ははは」


 リムは(わたくし)の問い掛けに対して苦笑いを浮かべながら、今日の沢山の【たこ焼き】が保温器の中に眠っていると教えてくれた。


 だから売れ残りの【たこ焼き】は(わたくし)と旦那様とリムの三人で食べれるだけ食べて、後は廃棄処分にするのと言う訳にはいかないでしょう?


 これもちゃんと食べれる物……。


 それも日本の大衆文化の一つの食べ物であり、知名度もある大変に有名な食品みたいだから(わたくし)のこの容姿……。


 そう、我が家のお店【さつき】の店頭にて、レジャーテントの下──。変わった電力と言う物で保温する機械と呼ばれる物を台の上に置き──。

 (わたくし)はヒラヒラの胸元の大きく開いた薄いピンクのドレスの上からエプロンと言われる物を着衣──。

 (わたくし)は戦闘態勢で道を行き交う人達に「たこ焼きはいりませんか~?」と声をかける。


「只今当店では見切り品の為にたこ焼きは半額でございます」とも声を掛け。

「さぁ~、どうですか~、いらっしゃい~」と、以前マルシェで野菜売りの日雇いをした時の事を思い出しながら。

 (わたくし)は道を行き交う人へと声を掛けると──。歩いている人達や自転車と呼ばれる物に騎乗していた人達の足が止まり……だけではなく。


 あの鋼の塊……。自動車と呼ばれる物に騎乗している人達も道路の端へと止め──。(わたくし)の顔や容姿を見詰めてくるから。

 (わたくし)は『うわぁ~。以前と一緒だ……。人種のオス達が(わたくし)容姿をジロジロと見詰め始めてきた……。うわぁ~、嫌だな~』と不快感を募らせる。


 でも以前は日雇い……。自分のお店ではない……。でも今回は旦那様の物は妃である(わたくし)の物でもあるから我慢をするのよ、レビィア……。


 (わたくし)は自分自身に言い聞かせながら、こちらを見詰める男性達へとニコリと満身の笑み……。女神の微笑みを浮かべると。


「すいません! お姉さん! たこ焼き一つください」


 若い人種の男性が駆け足で(わたくし)へと【たこ焼き】をくださいと告げてきた。


「は、はい……。二百五十円になります……」


 (わたくし)はその男性の勢いと鼻息の荒さに押され気味で唖然としながら言葉を返し、【たこ焼き】を袋に入れて渡すと。


「お姉さん! お金はここに置いておきますね!」


 お客様は(わたくし)へとお金を手渡しではなく、台の上の直ぐ、素直に置いてくれた。


 だから(わたくし)は驚愕する。


 だってこれが(わたくし)の産まれ故郷ならば亜人のオス達は、売り子を揶揄しながら、中々お金を払わない上に。

 売り子たちの華奢な腕を握り、他所へと連れていき身体を求めようとするのですが。

 今(わたくし)の目の前に立つお客様は、全くいやらしい素振りは見せない……。


 でもお客様はモゾモゾと照れ恥かしそうな様子を(わたくし)へと見せるから。

 (わたくし)は『どうしたのだろうか?』と思いつつ首を傾げると。


「あ、あの……。見ず知らずの異国の方にこんな事を尋ねるのは大変に失礼だとは思いますが……。お姉さんの【2.5次元仕様】をスマートフォンで撮らしてもらってもよろしいですか?」


 (わたくし)の目の前で俯きつつモジモジと照れ恥かしそうにして立っていた人種の青年が自分の口を開くと、こんな台詞を告げてきた。


 だから(わたくし)は【2.5次元】や【スマートフォン】って何? 何? 何だろう?


 (わたくし)はこんな事を自身の脳内で呟きつつ困惑………。旦那様~。助けて~! となるから。

 (わたくし)は慌てて後ろを振り返ると旦那様がこちらへと向かってくるのが確認とれたから。

 (わたくし)は胸を撫でおろし安堵した。




「あの、お客さん……。家内に何か御用ですか?」


 旦那様が(わたくし)へと『スマートフォンで撮らして欲しい』と嘆願してきたお客様へと家内……。ちゃんと妻だと告げ尋ねてくれた。


 だから(わたくし)は『きゃ~、嬉しい~!』と心の中で歓喜しつつ平常心を保とうと努力を始めると。


「あっ! お店の方……。お、奥さんですかすいません……」


 (わたくし)の目の前に立つお客様は旦那様へと頭を下げ、上げると。


「今奥さんの方にも嘆願したのですが。奥さんの2.5次元仕様……。コスプレ仕様を動画と写真に撮らしてもらえませんか?」


 お客様は(わたくし)へと告げてきた意味の分からない嘆願を旦那様へも告げた。


「ああ~。何かと思えば。動画と写真ですか~」

「はい。そうなんです。あっ、ははは……」


 (わたくし)はお客様の要望が何なのかは? 理解ができませんでしたが。こちらの世界で産まれ育った旦那様はお客様の要望を直ぐに理解ができたみたいなのだが。

 やはりこの世界の住人ではない(わたくし)には、何が何やら分からないので二人のやり取りを自分の首を傾げつつ聞いていると。


「……できたら奥様の良くお似合いなコスプレ仕様を一枚か二枚、写真や動画に撮らせてもらえると嬉しいのですが。あっ、ははは~」


 お客様は、今度は(わたくし)ではなく旦那様へと照れ恥かしそうに嘆願を始めだした。


「う~ん、そうですね……。ちょっと待ってください……」


 お客様の要望に対して旦那様は少しばかり呻り思案をすると後ろ……。店内からこちらの様子を見詰める引きこもり娘のリムへと手招きを始めるのだ。


「リム~! リム~! ちょっときて~!」と声をかけながら旦那様は必死にリムの事を呼び続けた。




「何、パパ~?」


 旦那様に手招きされたリムは首を傾げつつこちらへと向かってきて到着した。


「おぉ~」


 リムの容姿を見たお客様の口から何故か驚嘆が漏れるのだが。我が家の旦那様は別に気にする事もなく。


「リムとレビィアは俺の方を向いて仲良く並んで立ってくれるかな」と嘆願をしてきた。

「はい」

「うん」


 (わたくし)とリムは旦那様へと頷くと姉妹仲良く並んで──。旦那様へと視線を送ると。


「はい、チーズ」


《カシャ!》


 旦那様は自身が持つ、四角で薄い板を(わたくし)達姉妹へとへと向け──! 何やら分からない言葉……。魔法の詠唱か、何か、かな? と思われる言葉を漏らし終えると。


「パパ~、急にどうしたの~? リムと姉上の写真をスマホで撮って~?」


 リムが旦那様へと、お客様が(わたくし)へと要望した事……。スマートフォンで(わたくし)の容姿を撮らせて欲しいと言った事の行動に対して旦那様へと尋ねると。


「お客さんがね、レビィアのコスプレ仕様を撮らしてくれと嘆願をしてきたから。写真や動画を撮ると言う事に理解しているリムを呼んだんだよ」と。


 旦那様がリムへと優しく微笑みながら告げる。


「ああ、なるほど……」


 (わたくし)自身は未だ旦那様とお客様が言った事が理解ができない。


 でもリムが旦那様の話しを聞き納得をしたから変な事ではないと言う事だけは(わたくし)も理解ができた。


「レビィア?」

「はい、何ですか、旦那様?」

「お客さんがね、レビィアの中世の西洋ドレス仕様が美しいから、写真と動画に撮らしてくれと言っているけれど良いかな?」


 旦那様が(わたくし)へと尋ねてきたから、快く了承すれば。


「お客様……。商品を購入してもらったので良いですよ……。何枚でもお撮りください」


 旦那様が御客様へと微笑みながら大丈夫ですよと告げると。


「マスタ~、ありがとうございます」


 お客様は旦那様へとお礼を告げる。


 でッ、その後は?


 旦那様が先程使用した四角で薄い物を(わたくし)へと向けて──!


《カチカチ》と撮り始めるから。


「あの~、すいません~。僕もたこ焼きをください~」

「あっ! 俺も!」

「儂も」

「私も」と。


 我が家のお店の駐車スペース横の路側帯からこちらの様子を窺っていたお客様達も慌てて列へと参加……。


 (わたくし)達家族のお店の商品を購入してくれたのだ。


 だから売れ残りの【たこ焼き】は直ぐに完売してしまい。お客様達が通常値段で良いからもっと購入したいとの要望があり。

 旦那様が慌てて店内へと戻り、【たこ焼き】を焼き始めると言った事になるだけならば良いのだが。


「マスタ~、お好み焼ける?」の問い掛けも多々上がり。


「はい、できますよ~」と答えたから。


【広島お好み焼き】の焼き方を旦那様と結ばれ、以心伝心仕様になっているリムがあわてて、(わたくし)が初めて目にする【広島お好み焼き】を焼き始めるから。

 (わたくし)もリムが【広島お好み焼き】を作る様子を観察して覚えようと努力をする。




 ◇◇◇







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