第13話 残り物? (2)
だから私は佇んだまま唖然、呆然とするのだけれど。
「パパ~、喜んでいるね。姉上~」
リムがケラケラと笑いつつ私へと告げてきたから。
「えっ、あっ、うん……。そうだね……。凄く楽しそうだね、旦那様……。何をあんなに喜んでいるのかしら?」
私は旦那様が向かわれた扉を呆然見ながらリムへと言葉を返した。
「ん? それはパパが姉上をパクリと食べようと思っているからだよ」
「ああ、そうなんだ?」
「うん」
「…………」
「……ん? どうしたの、姉上? 急に黙り込んで?」
「あ、あのね、リム……? 旦那様が私の事をパクリと食べるってどう言う事?」
私は旦那様が御店から立ち去った後でのリムとの会話でふと気になる事が起きたから尋ねてみた。
「……ん? どう言うことって、そう言うことだよ。姉上~。姉上もパパのお嫁さんになるのでしょう?」
「うん、そうだよ」
「じゃ、いんじゃない? リムも昨日パパにパクリと食べられてお嫁さんになちゃったから。あっ、ははは~」
「あっ! そう言えば先程言っていたわよね? リムはもう既に旦那様のお妃様に、完全になっているって……」
「うん、そうだよ」
「じゃ、旦那様はやっぱりお父様の転生者で。リムが旦那様がドラゴンになるように魔力解除したと言う訳?」
「うん、そうだよ、姉上」
「そうか~」
「うん」
「まあ、旦那様があんなにも喜んで私の事が欲しいのならば別にいいけれど……」
まあ、リムの私への回答はこんな感じで。旦那様が私達の他界したお父様の転生者である事が間違いない事は昨晩リムが彼の中に眠るドラゴンの魂を生娘の血で解除した教えてもらい。
その他にも姉妹で今後の事……。我が一族の繁栄をどのようにしていくのかを姉妹で色々と相談していたら。
「レビィアさん、は~い」と旦那様が嬉しそうに缶と呼ばれ不思議な入れ物に入っているホップ酒を私へと手渡してくれた。
「ありがとうございます、旦那様。うふ」
私が微笑んで魅せると旦那様はそれはもう大変に嬉しそうな顔をするから。
「パパ~、リムの甘いお酒は~?」
今度はリムが大変に不貞腐れ不満のある声音で旦那様へと自分のお酒は用意しているのか? と。
リムはまさに、夫を尻に敷いている妃の如く振る舞いで旦那様へと尋ねた。
「はい、リムちゃんのもあるよ」
旦那様はやはり私の横ではなくリムの真横へと座りながら、また何かしら変わったお酒を手渡した。
だからリムは歓喜──!
「パパ~、ありがとう~」
リムは旦那様にお礼を告げると、椅子に座った彼へとしな垂れかかり甘え始める。
そう自分達夫婦の中慎ましい様子を見せるから私は少し寂しいなと思いつつ、先程一人で『グゥ、ググッ』とお酒を飲んだのでした。
「パパ~」
「何、リムちゃん?」
「愛してる~」
「本当に?」
「うん」
「ありがとう~?」
相変わらず私の目の前で馬鹿夫婦ぶりを披露する二人の様子を面白くないなぁ~~~! と思いつつ見ながらホップ酒をグイグイと飲む自分ですが、ふとある事を思い出して口を開いた。
「旦那様~?」
「……ん? 何、レビィアさん?」
「先程旦那様が残り物を食べても良いと言われましたが。残り物とは何ですか?」
そう、やっと【残り物】が何なのか? と言った話しがここででてきました……。本当に長くなって申し訳ないですと、私が皆さまへと謝罪をしたところで話しを元に戻しますが。
私が旦那様へと尋ねると。
「【たこ焼き】だよ。姉上……」
リムが旦那様にしな垂れ甘える行為を辞め、自分の上半身を起こしつつ私へと、にへらと笑いながら教えてくれた。
(ここまで)
でも私はリムに【たこ焼き】と言われても『何の事?』、『どんな物?』と言った感じで解らない。
「リム、【たこ焼き】って何?」
私は彼女へと尋ね返した。
「リムちゃん、レビィアさんに【たこ焼き】と言っても、こちらの世界の人ではないから解らないよ」
「あっ! そうだった!」
「だろう?」
「うん」
リムが旦那様に優しく諫め、問われ、頷くと。
「姉上、ごめんなさい……」
私へと謝罪をしてきた。
「うぅん、別に謝らなくても良いわよ、リム……。それよりも【たこ焼き】ってどんな物なの? 私にも見せてくれる?」
私はリムへと嘆願をしたのだ。【たこ焼き】がどんな物なのか見せて欲しい」と。
「リムちゃん」
私がリムへ【たこ焼き】を見せて欲しいと嘆願をすれば。旦那様がリムへと指示……。
「はぁ~い、ちょっと待ってね、姉上……。今からリムが【たこ焼き】を持ってくるから。姉上も食べてみて」と明るく告げてきた。
「うん、分かったわ、リム……」
私はリムの嘆願に対して頷くと彼女は席を立ち──! 作業場……。厨房……。いや、窓があるのかな……と言うか、あれは何? と思う物が私の目……。
今迄お店の外に向け、背を向けていた私なので、この世界──!
日本に──!
私が見た事もない化け物! モンスター! が目についた──!
だから先程の私は慌てて店の外へと飛び出ようと試みるから。
「パパ~、姉上を止めて~~~! 早く~~~!」
「えぇ~~~! 何で~~~! リムちゃん~~~!?」
「姉上がお店の外~~~! 道路を走る自動車などを破壊してしまうから~~~。早く~~~! 早く~~~! 止めて~~~! 姉上を~~~! 抱きついて取り押さえてもいいから~~~!」
リムの慌てふためいた嘆願に対して旦那様が最終的には了承して、私は店内で夫に身体中の至る所を触り握られて、陛下にチュチュと服従したのでした。
◇◇◇




