第12話 夢のお店(1)
な、何……。こ、この煌びやかな部屋は……。私自身も人種と比べれば大変に長生きをしていますが。私が目にした事のない装飾品がこの部屋──お店には多々あるから凄い。素晴らしい。
もう~、私は~、感動で御座います~~~!
それにあれはグラスやお皿なのでしょうか? 私のお城に置かれている物よりも綺麗で高級感がありますね。
だってあのグラス等は大変に透明感があり高級そうだから、我が家の家宝にしても良いと思いますと……。
只今私の瞳に映る調度品やグラス、お皿を見ては感動……。感無量となっている私なので、自分の口から漏れる言葉は。
「うわぁ~、何て素晴らしいの~。これが旦那様のお店で~。この調度品やグラス、お皿も全部旦那様の物なのですか~?」
私は自身の両手を胸の前で握り締め、感動を自分の身体で表しつつ旦那様に尋ねたのだ。
「えっ! あっ! うん! そうだけれど……。レビィアさん、あの……。昨日もさ、リムちゃんがお店や二階の部屋、リビング、三階の部屋等を見て大騒ぎをしていたけれど。そんなに凄いのかな……? 御二人はお城に住んでいるのでしょう? それにこのお店や他の部屋も、この世界では普通に良くある物ばかりだよ。レビィアさん……」
旦那様は慎みながら、苦笑いを浮かべつつ私へと説明をしてくれたのだ。お店に置かれている調度品の数々は、この世界ならば何処にでもある物だとね。
でも皆様も知っての通りで、私の産まれ育った世界では、この部屋に置かれている物のほとんどが、家の家宝に匹敵する物ばかりだから。
「そうなのですね~。旦那様~。この世界って本当に凄いですね~。でも私やリムが産まれ育った世界にはこんな煌びやかな調度品やガラスのグラス……。色彩が綺麗なお皿等ありませんから。本当に凄いですよ~。旦那様~。このお店は~~~!」と。
私が旦那様の説明を聞き、このお店を大袈裟に揶揄ではなく、本気で褒め称えると。私の旦那様は、御自身の頬をポリポリと指でかきつつ照れ臭そうに「レビィアさん、家のお店を褒めてくれてありがとう」と告げてきた。
「いいえ」
私が首を振り言葉を返すと。
「姉上~、凄いでしょう? このお屋敷……。リムもね、昨日こちらの世界へときて、パパからお屋敷の中を案内してもらってビックリ仰天したもんね~」
「そうなんだ?」
「うん」
「リム、それはもしかしてお酒なのかな?
先程迄お店の奥……と言うか? 水場……。囲炉裏場……。まあ、お客様の注文を受けて料理を作る場所だと思うところで。何かしらゴソゴソとしていたリムが、こちらへとくれば、自分の両手にグラス握っているから私は、自分達ドラゴンが大好きな高級品……お酒なのか? とリムに尋ねてみた。
「うぅん、違うよ。コーラと言う飲み物らしいよ。美味しいから飲んでみて姉上……」
リムが自分が握るコーラと呼ばれる飲み物が入ったグラスを私へと手渡すのですが。リムが旦那様に何も告げず勝手にグラスへと注いだ飲み物を勝手飲む訳にはいかない。
それに? リムが旦那様の許可も無く勝手にお店の物に手をだし飲もうとしているから。ここはリムの姉と言うか? 旦那様の妃の中の序列的にも上になる私がリムの事を注意しないといけないと思う。
「リム?」
「はい、姉上……と言うか? 姉上、早くグラスをとってください……」
私がリムへと声をかけ諫めようとすれば先にあの娘に不満を言われた。
でも私はリムからグラスを受け取る事を良しとしないで。
「リム~。旦那様の許可も無く、勝手にお店の売り物をグラスに注いで飲もうとしたら駄目でしょう! 今直ぐ旦那様に謝罪をしなさい!」
プンプンと私はリムの事を叱る。
だけど当の本人であるリムはと言うと? 姉の私に叱られて全く気にした様子も見せないで。
「このコーラは昨日リムがコンビニと呼ばれる煌びやかなお店で、パパに買ってもらった物だよ。だからお店の物ではないから大丈夫だよ。姉上……」
リムは私へと、クスクスと楽しそうに笑いながら説明をしてくれた。
そして「はい、姉上……。コーラ飲んでみて本当に美味しいから……」と告げながら。また私へとグラスを差し出してきたから。
「ありがとう……」
今度は私の口からリムへのお礼の言葉が告げられる。
「レビィアさん?」
私がリムから手渡しされたコーラと呼ばれる飲み物を自分の唇に当て、注ぎ込もうとすれば。旦那様が声を掛けてきたので、私は一旦飲む行為を辞め。
「旦那様、何でしょうか?」と首を傾げる。
「レビィアさん余り気にしなくて良いからね……。お店の残り物や二階の冷蔵庫にある食材やお酒も好きなだけ使用しても良いし。飲んでもいいからね。レビィアさん……」
旦那様が私へと優しく微笑みながら気にするなと言ってくれた。
でも私はある事を聞いて驚愕するのだ。
「えぇ~~~! 旦那様~~~! お酒! お酒と言いましたね~~~!? 好きなだけ飲んで良いって~~~。そんな事をしても大丈夫なのですか~~~!?」
私達ドラゴンは本当にお酒が大好きなのですが。お父様が生きていらっしゃる頃は、お酒がいくら高価な物だとしても、稼ぎの方が良かったので。お父様が自分とお母様の為に毎日お酒を購入してくれていたみたいですが。
今の我が家の財政だとお酒など大変に高価な余剰品ですから購入すらできないので。私達親子はお母様が町へと買い物へとでかけた時以外は飲む事ができない状態なのだと説明をすれば。皆様も御察しがつく通り……。
そう、多分お母様は、自分の大好きなお酒欲しさもあるから亜人達に、その身を委ね、養ってもらっているのだと思います……。
だから私はお母様の事をどうしても蔑んだ目で見てしまう……と嘆きたいところですが。
私達のような女ばかりの家で職も無く。その割には生活用品に対して妙にお金のかかる私達ドラゴンの女は、富裕層のオスに養ってもらうしか手が無く……。
私のお母様のあの美しい容姿……。女盛りの容姿を見てもらえれば分かる通りで、いつまでも他界したお父様の転生者が自分の事をまた守りに帰ってくれるのをいつまでも待つ事もできず。寂しさの余り、他の異性にあの素晴らしい肢体を委ねるのは仕方がない事だと思うから。
私自身もあれ以上はお母様に対して荒々しく告げる事もできないのと。
お母様をいつまでも城内に閉じ込め、外……。亜人のオス達に逢いにいくのを止め続ける訳にはいかないので。
あれから私はお母様の事を放置している。
まあ、旦那様の事を探索するのも忙しかった事もあるからなのだが。
まあ、それぐらいお酒と呼ばれる物は大変な高価な物なのですよ。私達の世界では……。
それなのに旦那様は高価お酒を飲んでも良いと安易におっしゃるから私は驚愕し尋ねたと言う訳でして……。本当に良いのかな? リムよりも私の方がお酒を沢山飲むのですが……。あっ、はははと思っていると。
「うん、別に大丈夫だよ、レビィアさん……。お店の中にはお客様用の生ビールや酎ハイ、ハイボール等しかないけれど。二階ダイニングキッチンへと行けば日本酒、焼酎、ウィスキーにブランデー、ジンやウォッカにホップ酒等があるから大丈夫だよ。好きなだけ飲んで……。リムちゃんも昨晩気にしないで沢山飲んでいたから大丈夫だよ。あっ、ははは~」
旦那様が私へと笑いながらお酒の件は気にするな、好きなだけ飲めば良いと。
旦那様はお酒が大好きな私ドラゴンのメスの理想の伴侶の条件をあっさりとクリアーしてくれた。
だから私は歓喜──!
「ありがとうございます」と旦那様へと告げると。
リムからもらったコーラと呼ばれる飲み物をあの娘のように自分の口の中へと注ぐ。
「……ん? な、何~。これは~~~!? このシュワシュワ感は何~~~!? 何なの~~~!?」
私は《《コーラ》》と呼ばれる飲み物を口にし、飲み込んで、このシュワシュワ感……。のど越しの爽快感に対して驚愕──驚嘆をすれば。
「何~、この甘さ~! 何て美味しいの~!」と更に驚嘆をした。
「姉上、本当に美味しいでしょう」
コーラを飲み、美味しさで驚愕している私へとリムがクスクスと笑いながら尋ねてきた。
だから私は「うん」と頷き。
「この世界にはこんな美味しい物があるんだね……。リム、私は正直驚いちゃった……」と呟いた。
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