第11話 異世界の人……(1)
ワクワク、ドキドキ……。
でも怖い、怖いな……。
リムは転生したお父様は生前と変わらず温厚で優しい方だと教えてくれたけれど。実は彼の本当の姿は超がつく程の悪人であり。私達姉妹を夜の春を売るお店で働け! と。大変に恐ろしい事を言われるのではないか? とも考えた私なのですが。
まあ、この通りと言うか? 合わせ鏡越しに彼……。お父様の転生者を目にした私は彼の容姿を見て。
「うぅ、ううう。お父様……」と呟きつつ、自分の両目からポロポロと涙が漏れ、止まらない始末……。
でッ、最後には鏡の前でへたり込み
「エンエン」と泣き始めると。
「……ん? あれ誰かいる……?」
そう只今冒頭のシーン……。今迄彼は台? テーブル? あの大きな鋼を張ったテーブルは一体何なのだろうか? と私が思う物を枕にして。
「ムニャムニャ女神様愛しています……」
リムが聞けば嫉妬に狂いそうな言葉……。
そう寝言を漏らしてしまうから。
「パパ~。リムがいるのに何で母上のことを寝言で言うかな~?」
リムは彼……。旦那様の寝言を聞いて嫉妬し、憤怒しながら合わせ鏡を通り抜け、彼の許へと行き。
「パパ!」、「パパ、パパ」と吠え、彼の身体を揺するから旦那様が眠たそうな顔を上げたのが、先程の冒頭のシーンとなり。
私旦那様の顔を見て──只へたり込んで、自身の顔を両手で覆い隠しながら泣くばかりだから。
「リムちゃん、あの泣いている娘は誰?」
旦那様が困惑した声音でリムへと問いかける声が私の耳へと聞こえたと思えば。
「パパ、リムの姉上だよ」
あの娘も私の泣く姿に釣られたのか? 何だか悲しい声音で旦那様へと回答すれば。
「何でリムちゃんのお姉ちゃんは泣いているの?」
旦那様がリムへとまた尋ねる声がすると。
「……ん? ああ、昨日パパに説明をした通りだよ。パパはリムと姉上のお父上の生まれ変わりだから。姉上もパパの顔を見てお父上に余りにも似ているからビックリするだけならばいいけれど。やっとリム達家族はパパと会えて、今後の余生は幸せに暮らせると姉上は確信できたから、自分の今まで張り詰めていた気が安らぎ、力が抜けて涙が止まらなくなったのだと思うよ?」
「そうなんだ?」
「うん」とリムが頷くと。
「パパが言っていた黒髪の女魔王さまは姉上の事だよ」
リムはこの場の暗く、重たい雰囲気を明るいものへと変えたいのか、微笑みながら旦那様へと明るく私の事を説明してくれた迄は良かった~! まあ、良かったのだけれど~~~!
「リム?」
私は泣くのを辞め、自分の顔を上げ……。
そう大変に重たい口調でリムへと声を掛けた。
「何、姉上?」
リムは旦那様の方を見ながら中慎ましく会話をするのを辞めて、私へと視線を変えると首を傾げ、大変に不思議そうな顔をするけれど。
「リム、貴女……。昨日から旦那様と逢って話しをしていたってどう言う事なのかな~~~? 私は貴女から先程旦那様が見かったって聞いたのだけれど。どう言う事なのかな~~~?」
私は完全に涙を止め、自身の目を細めながら重たい口調で淡々とリムに尋ねてみたのだった。
「えっ! いや、あの、あっ、ははは~。パパがね、一人でいるのが寂しいと言うからついついと言うか……。あっ、ははは……。今日は姉上にパパを貸してあげるから好きなだけ抱きついて甘えてもいいからね……。あっ、ははは~」
リムは私憤怒しながらの問いかけに対して笑い誤魔化してきた。
「もう~。リムは~。いい加減なんだから~」
私は相変わらず自分の頭に手を当て「あっ、ははは~。ごめん、ごめん……。めんご~、姉上~」と笑い誤魔化すリムへと再度不満を告げると。
「私も今からそちらへと行きますね、旦那様……」と彼に告げ。
ヒョイ! と合わせ鏡を抜けると。
そのまま彼……。私の旦那様の胸へと……。
そう私は生まれて初めて異性の胸に飛び込み、甘え。何度も旦那様の事を「あなた」、「あなた」、「愛しています」と告げた。
◇◇◇




