第10話 リムの説明(4)
「あのね、姉上?」
「……ん? 何、リム?」
「パパさぁ~、何故かね? リムの顔を見たら直ぐにね。『僕の夢の中の天使様がやっと現れて。僕の事を冥府へと誘い、連れて行ってくれる為に現れてくれたよ……』と可笑しなことをリムにパパは泣きながら言ってさ。『やっと僕はコ○ナ禍の生活苦から逃れ、楽ができる……』とパパはリムに大変に恐ろしいことを告げてくるから。パパを宥めるのに苦労をしたんだよ……」
う~ん、どうやらお父様は、我が家のお母様と一緒で心の病にかかり、自ら命を絶ちたいのだとリムに泣きながら嘆いたみたいだから。
私も妹に少しばかり任せた方が良いのかな? と思えば
「……だからね、姉上……。リムもまだ早いかな~? とは思ったのだけれど。ついついパパに情が入っちゃって、あのひとを抱擁していると。そのままの勢いで色々としちゃった~。あっ、ははは~」
リムは姉の私へとめんご、めんごと、自分の頭に手を当て──笑い誤魔化してきた。
「あのね、貴女~?」
リムが私へと笑い誤魔化す様子を呆れた顔と声音で言葉を返せば。
「リム、貴女~。その彼は本当にお父様の転生者で間違いはないの?」
私は安易に発情をしたリムへと本当に呆れた声で尋ねたのだ。
彼──! お父様の転生者がもしも赤の他人ならば、あなたはどうするのか? と尋ねてみたのだけれど。
当の本人であるリムはと言うと。
「あっ、ははは~」と相変わらず笑い誤魔化しながら。
「うん、間違えないよ。パパはお父さまの転生者……。彼の身体から漏れる匂いを嗅ぐとリムの心は穏やか……。安らぎに満ちて安堵……。本当に懐かしくなるから間違えないよ」と。
リムは私へと告げ終われば。微笑む行為を辞め、真剣な眼差しで私の事を見詰めながら。
「まあ、姉上がリムの話を信用できないのならば。別にそれで構わないよ……。リムはパパが今いる煌びやかな世界で彼の事を支えながら夫婦仲良く過ごしていくら……。姉上~、バイバイ~」
リムは私に手を振りながらサ・ヨ・ウ・ナ・ラと告げると踵を返して我が家の残り少ない家宝の一つ合わせ鏡……。時空の扉へと向かって歩き始めるのだ。
「パパは、姉上とお母さまのことも言っていたし。リムに尋ねてきたのに~。じゃ、バイバイ~、姉上~」
リムは私に背を向けながら歩きつつ一番重要な事をさらりと呟いた。
「リ、リム~! お父さまには私やお母様と過ごした時の記憶があるの~?」
だから私はリムの背に向かって尋ねてみた。
するとトコトコと歩いていたリムの足が止まり。
「う~ん、パパ、自身もね。はっきりとした記憶ではないらしいのだけれど。リムにね、『黒髪の魔王さまと銀髪の女神さまの事をリムちゃんは知らないかな?』と尋ねてきたからリムは二人共別の世界のお城にいるから母上は姉上に聞いてみないとリムにもわからないけれど。姉上……。黒髪の魔王さまの方はパパと会いたがっていたから連れてきてあげるよ』とリムはパパに告げたのになぁ~」と。
リムは意味深……と言うか? 私へと意地悪して告げてくるから。
「リムはもう~~~! お父様はリムだけではなく、私とも会いたいとおしゃっているじゃない~。もう~、いい加減にしてよね~。リム~」
私は妹の背を慌てて追いかけながら不満を漏らすのだが。この私の不満はこれで終焉を迎える訳ではなく。
「何でお父様はリムの容姿は天使だと褒め、お母様女神様だと容姿を絶賛したのに。何で次の女神になる私が魔王な訳なの~~~?」
私は自身の頬を膨らませ、プンプンと不満を漏らすのだけれど。
「姉上はお父さまによく似た漆黒色の容姿だからそう思ったじゃないのかな~? だってお爺さまやお父さまは漆黒の竜魔王と呼ばれていたから。姉上も魔王さまでいいんじゃないかな~?」
私の不満を聞いたリムはケラケラと揶揄するように告げてきた。
だから私の口から「もう~、リムは~」とモウモウさんになりながら彼女の背を追うのだった。
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