第7話 私の亜人への不満(2)
お母様は更に涙を流しながら私へと泣きつくように嘆願をしてくるのだ。
それは私が憤怒して、怒りに任せながら怒声を吐けばいつもね。お母様の頭……。心の中にはもう既にお父様の容姿や匂い……。
そうお父様が城下の町で亜人達と微笑みながらお仕事を楽しそうにされている姿などお母様の心の中には一遍も残ってはいな筈なのに。お父様の名前を出して私を諫めれば。
私が大人しくお母様の意見に対して耳を傾けると彼女は安易に思っているから。
でも私自身もお母様は都合の良い時だけお父様の名前を出し、自分が今に想う拠り所の、汚らしい亜人のオス達が殺されないように庇おうとしている事が。私もここつい最近……。
自分自身も思春期……。年頃……。いつ婿を迎えても良い年齢になって悟る事ができるようになった。
だからお母様の心にも無い事……。お父様の件に関しての嘘偽りに対して私は流していた涙を止め。
お母様に対してまた冷淡……。冷たい目で泣いて私の事を色々言葉を巧みに使用しては宥め、諫めるお母様の事を見詰めながら。私重たい口調でお母様の嘘偽りを問いただし、修正をおこなっていく。
「お母様、リムならいざ知らず。私に対して嘘偽り……。心にも無い事を言わないでもらえますか?」とね。
だからお母様の涙は直ぐにピタリと止む……。
そして私の顔を見る度に毎度毎度お母様は自分の顔色を変えながら恐る恐ると上げ──。
お母様の事を蔑視して冷たい目をしている私の顔を見るの……。
そして自分の艶やか……。誰に発情しているのか私にも分からないけれど。お母様は女盛りの魅惑的唇を開け。
「レ、レビィア……。どう言う意味ですか……?」
この女性……。まあ、私の節操のないお母様ですが……。いつも同じ言葉を使用して私へと尋ねてくるから。私は偶にこのひとは気が振れているのでは? と思う事も多々ある台詞でお母様は真っ青な顔で毎回尋ねてくる。
そんな様子のお母様に対して私は冷たく。
「……どう言う意味って……。その通りの意味ですよ」と言葉を返し、ニヤリと冷たくお母様へと微笑むと。
「お母様の頭や鼻孔にはもう既に、お父様の面影や香りも残らず他のオス……。今お母様が私から殺されるのを防ぐために、嘘偽りを次から次へと言葉にだし、並べては娘を騙してまでも必死になって庇いたい、汚らしい亜人のオスの容姿と臭い匂い……。そして肌の温もりの記憶……。私やリムに嘘をついてでも逢いたくて、逢いたくて仕方がないオスを只庇いたいだけなのに……。そんな汚らわしいオス達の事を守る為に、私とリムのお父様の名前をだし、利用をしないでください。お母様……」
私はいつも言葉の最後には、自分の紅玉の瞳から涙をポロポロと流しつつお母様へと告げる。
そうすればお母様は自戒してか、どうだかは分からないけれど。泣きながら私やリムの前から姿を消し、城下の町や村へと飛び、舞う事をしないで自分の部屋へと戻ってくれる。
それにリムの方も悲しい顔をしながら「お姉さま……」と私へと声を掛けるだけで彼女の口からも。
「姉上~、お腹が空いたよ~」
「亜人達が食べる美味しい物を食べたいよ~」
「母上~、購入してきてください~」と言った我儘を言わなくなる。
だから私は一石二鳥だといつも悲しく思い。いよいよ今回は私自身も我慢の限界を超えたので、他界したお父様の転生者を探索する事に決めた。
でもそれから数百年経つけれど、私は未だお父様の転生者を探索できないでいるのだった。
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