第6話 世間の荒波(4)
だけど亜人のオス達はいつも私の事を必ずと言って良い程守ってはくれないどころか? 私の事を恐ろしい女……。
そうドラゴンだと町中に言いふらすだけではない。私はお店の店主からお金を恵んで頂くと。一応はドラゴン化して、対価の分だけは町中に祝福の粒子を上空から舞い、撒き散らす。
だから私がふと気が付けば。
「黒い髪に赤い目を持つ麗しい少女が仕事を求めて現れたら。その娘は大変に恐ろしいドラゴンの娘だから関わらない方が良い……」とか。
「とっとと追い返さないと、町中の民が皆、その娘に食われてしまうぞ」と。
亜人のオス達は自分達の事を棚上げして、私の悪評ばかりを領内に広めていくのだ。
それも私が魔王や悪のドラゴンだと物語にするのだ。
それを吟遊詩人達が歌にして。永遠に語り継がれていったのだ。
「美しい漆黒色をした髪に~♪ 紅玉の瞳を持つ美しい少女は魔王だから~♬ 男達は決して惑わされないように~♪ そして関わらないようにしないといけない~♬ でッ、ないと? その娘は男達の臓物~♪ 精気と~♬ 大事な物~♪ 一物を好んで食するから~♬ 決して関わらないように~♪」と侮るように謳い、悪態をつきながら。
それは現代……。未だに遠いい昔の、昔話として語り継がれている……。
でもさぁ、領内の者達……。この地で暮らす亜人達は何か勘違いしているのか分からないけれど。
この地! この国は! 本当ならば 私達家族の物! 領地なのだ!
だって私達ドラゴンはね、この世界の頂点を極め、君臨している神と言っても良い存在なのだ。
だからこの地に住む亜人達は本来ならば私達親子の私物であり。私達竜の家族の事を尊、敬わないといけない立場なのだから。
私達家族に税として貢物を納めないといけない者達の筈なのに……。
亜人達は長い時の流れと共に私達ドラゴンの家族の事をすっかりと忘れ、太陽等と言う自然の物達を神仏化して。神々しい私の事を魔王扱にしている不届き千万な輩達ばかり。
その上私のお母様を亜人のオス達は精の対象……。性玩具にしていると思う。
だから私は亜人達を食い殺し、この地から抹消しても構わないといつも思うのだ。




