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第56話 国境の町の様子は? (6)
最初は「えっ!」で、その後は、「あっ! そう言えば。そうだったね。うちもうっかりとしていたよ」と。
「あっ、ははは」
彼女は面目ないと笑い始める。
「お前な~」と。
「本当にお前は、他人の話を聞かないよな」と。
「ミル! お前は、獣人なのだから、俺達よりも耳が良いのだから、他人の言葉は小声でも聞こえるのだから、ちゃんと聞けよな。その人に失礼だぞ」と。
人種の金髪の優男のお兄さんが、獣人の彼女──。ミルと言う名の、犬なのかな? 犬耳を持つ女性へと苦笑いを浮かべつつ諫め。
「ねぇ、お兄さん?」と、僕に話しを振ってきたので。
「えっ!」と、僕は最初に声を漏らした。
でも、直ぐに「いいえ、いいえ、別に構いませんよ。家の家族の中にも、余り他人の言葉に耳を傾けず。一人でひたすら話をしている者もいますから」と、僕は自身の脳裏にリムの顔を思い出しながら苦笑いを浮かべつつ、人種の青年へと言葉を返せば。
「煩いね、ケン、あんたはいつも」と、ミルさんはガル、ルルル! と呻り始める。




