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にじのかなたに  作者: 星 陽友
第一章 春
8/13

五月 四

 その時大入町の上空に浮かぶ太陽は、いつも以上に活発な様子を見せつけていた。自らの輝きを遮る雲達が何処かへと出かけている為、その存在感を遺憾なく発揮させていたのだ。普段と比べてこの時期にしては、町中が暑く感じられるのはその為であった。



 その時この町の運動公園にも、他と同様の強い日差しが届いていた。乾いた地面に敷かれた芝生にとっても、この暑さは少々我慢出来ない程だと思われる。

 そんな公園の一角に広がるピッチで、綺麗に洗濯されたユニフォームを身に纏う少年達が、揃って準備運動を進めていた。どうやら開始早々だったにも関わらず彼らの汗が若干滲み出ているのは、この日の日差しが影響しているのが明らかだった。

 その時そのような状況の中でストレッチを続ける彼らの中に、一人の少年も加わっていた。鮮やかな橙色の髪と瞳が目立つ少年、七橋橙太だ―――。



「―――へえ、明日はサッカー部の練習試合があるんだ」

 その時「れいんぼう」の一角では、居候中の黒川蓮司と七橋家全員の、合計七人による夕食の時間が続いていた。そしてこの時話題に挙がっていたのが長男である橙太の部活動についてで、特に蓮司にとっては物凄く興味深い内容であった。

「そうだよ。だから今はしっかり食べて栄養を取っておいて、明日にそなえて備えてもらいたいんだ。何てったってウチの橙太は、大入中学校サッカー部のエースストライカーなんだから!」

「べ、別にエースっていえる程じゃないよ。一応部活だとフォワードを任されてはいるけど…………って、なんでミド姉がそんなに自慢げなの?」

 まるで自分の事のように弟を自慢する若葉に、当の本人は不思議そうな面持ちで尋ねてみる。すると彼女は片手を彼の頭上に乗せると、少々乱暴に撫で始める。

「そりゃそうでしょ。橙太は中学のエースでもあるし、そもそも私達七橋家自慢の長男なんだから!」

「い、痛たたっ!止めてよ、痛いってばっ!」

 満面の笑みを浮かべながら弟を可愛がる若葉と、それに文句をぶつけながらも同じく笑顔を見せる橙太。その時そんな二人の行動を目の当たりにした残りの五人は、最早笑いを堪えられずにはいられなかった。


「…………そうだ、クロ兄!」

「ん?何だい、橙太くん……」

 その時ようやく姉からの“愛情表現”から解放された橙太が、傍らの蓮司に向けて声をかけてきた。すぐさま彼がそれに反応したところ、橙太の口から一つの提案が持ち出された…………、

「折角だから明日の練習試合、クロ兄も見に来てみない?」

「えっ?」

 突如として送られてきた思わぬ提案に、蓮司は動揺を隠せずにいた。更にそこへ加わった若葉からの言葉が、彼の動揺を益々大きく変化させる。

「いいね、それ!橙太や私達が口で説明するより、直接君の眼で見た方がよく分かるはずだよ!」

 その時彼女が放ったこの一言は七橋家全員を納得させ、誰一人反対させる者を出させない程高い効果を発揮させた。それでも蓮司だけは未だに困惑している。

「で、でも、本当に大丈夫なの?“余所者”の俺なんかが傍にいて、皆の邪魔になったりしたら…………」

「“余所者”なんかじゃないよ、クロ兄!」

 その時蓮司が思わず声で表現した不安は、直後に橙太から贈られた一言により、一瞬にして掻き消された…………、


「クロ兄はとっくに、僕達“家族の一員”なんだから!」


 その時七橋家の長男が発した一言に、他の五人も揃って首を縦に振った。黒川蓮司は最早居候の身ではなく、自分達家族の一員であるという事を証明したのだ。その様子を目の当たりにした彼の表情は、すっかり温かなものへと変化していた。そして蓮司は橙太らの提案に対する答えを、感謝の言葉に添えて返す。

「ありがとう橙太くん。それじゃ君の練習試合、俺も見に行く事にするよ!」

 その言葉を耳にした瞬間、橙太は自分の内側に込められた感情を残さず放出された。彼の顔全体に映し出された満面の笑みが、喜びの大きさを分かりやすく表現していた。そんな橙太の様子を間近で直面した他の五人にも、彼の感情が微笑みという形で伝わってくる。その時全員が見せた笑顔のお陰で、七橋家の食卓は和やかな空気で包まれていった。

 そんな雰囲気が漂う状態で、蓮司は他の五人に提案してみる。

「折角だから皆で一緒に見に行きましょうよ!皆揃って応援すれば、橙太くんももっと活躍できるかも…………」

「…………」

 その時それまで笑い声が響き渡っていた店内が、一瞬にして静まり返ってしまった。そしてそれと同時に物凄く残念そうな表情を浮かべた五人の姿がそこにはあった。この事が一体何を示しているのか、この時蓮司と橙太はすぐに理解出来た。

「ごめんなさい二人とも、私達明日は皆、何かしら予定があって都合がつかないんだ…………」

 暗い表情の理由を代表して打ち明けた若葉の言葉に合わせて、他の四人も申し訳なさそうに頭を下げた。

「…………」

 その時橙太は俯いていた。一言も口にしないまま、自身の足元のみを見つめていたのだ。他の家族が来られない事が相当辛かったのかと、心配そうに彼の様子を窺う若葉達五人。一方の蓮司もまた、じっとうつむいたままの彼が気を落としたのではないかと感じてしまっていた…………。


「…………お弁当」

「…………へっ?」


 その時橙太から発せられた一つの単語により、六人の心配は何処かへと消失してしまった。彼らの口が大きく開かれたままの状態で、橙太は更に言葉を続ける。

「明日のお弁当、とびっきり豪華な物にしてくれるなら、許してあげてもいいよ」

 そう呟いた彼の表情からは少々納得がいかないような部分も見せながら、それ以上に何処か恥ずかし気なところも感じられた。そんな彼からの要求を耳にした六人を代表して、長女の桜香が弟の頭を優しく撫でながら返答した。

「分かったわ橙太。貴方の望み通りの豪華なお弁当を用意するから、期待しててね」

「…………うん」

 その時少しだけ頷いた橙太の表情が、僅かながら解れていた。どうやら納得してくれたようだ。

 そんな彼の様子を確認してから、桜香が蓮司に向けて頭を下げた。

「それじゃクロくん、明日は私達の分まで、応援よろしく頼むわね」

「はい!任せてください―――」



 ―――その時練習試合の舞台となったピッチでは、今まさに開始直前の準備に追われていた。軽いウォーミングアップが終了し、両校の十一人がそれぞれ円陣を組み、全員の結束力を高める。

「皆ーっ!頑張れーっ!」

 しかしこの時ピッチに集結したメンバーの中に、肝心の橙太の姿は存在していない。その時彼はピッチの脇のベンチに腰を下ろし、目前のメンバーへ必死に声援を送っていたのだ。

「…………あれ?橙太……くん…………?」

「あっ、クロ兄!来てくれたんだね!」

 その時試合開始の瞬間が近づいてきた中で、他の五人から応援を頼まれた蓮司が到着を果たした。そして自分がベンチにいるのを不思議そうに見つめる彼に向かって、元気よく呼び掛け手を振る橙太。

 それを確認した蓮司はすぐさま彼の元へ駆け寄り、この状況を尋ねてみる。

「どうしたの橙太くん?試合に出ずにベンチだなんて。てっきりスタメンとして出場してると思って…………」

「ああっその事か。これは監督に直接聞いてみた方がいいよ」

 橙太はそう言うと彼の隣にいる男性に目線を移し、声をかける。彼はすぐさまそれに合わせて二人の方へ顔を向けた。黒縁眼鏡と口髭が特徴のこの人物が、どうやら橙太が所属するサッカー部の監督らしい。

「もしかして君が、七橋くんのお兄さん(、、、、)のようだね。度々お話は伺っているよ」

「へっ!?そ……そういう事に……なるのかな…………」

 突然思いもよらない事実を知らされ、動揺を隠せずにいる蓮司。そんな彼の様子を確認し、何処か得意気な笑みを浮かべる橙太。そんな二人を微笑んで見つめる監督に、蓮司は改めて尋ねてみる。

「そういえば監督さん、どうして橙太くんは今、試合に出ていないんですか?家族の皆が言うには、橙太くんはサッカー部のエースだって…………」

 すると監督は包み隠さず返答する。

「今回の練習試合は午前と午後で、それぞれ試合を行う予定なんだ。それに合わせて七橋くんには、敢えて午前の試合はベンチにいてもらうことにしたんだよ。もし最初から試合に参加させてしまっては、折角のエースが故障するかもしれないからね」

「成程、そういう事だったんですね!」

「…………で……でも僕、皆が言う程、エースなんかじゃないよ。す……少しはプレーに自信があるだけで…………」

 彼の言葉を受け取って、蓮司はすぐに納得した。それと同時に指揮官の説明を傍らで小耳に挟んでいるうちに、いつの間にか顔中を真っ赤に染め上げた橙太の姿もそこにはあった。


 その時だった。

「っ!」

 その時三人の間に入り込んできたのは、高々と鳴ったホイッスルの音であった。そこで彼らは一旦会話を中断し、音の発生源へと視線を移す。

 そこでは一人の少年がピッチに倒れ込み、全く立ち上がりそうな様子を示していなかったのだ。苦悶の表情で片足を抑え、周囲の少年達は心配そうに彼の様子を窺っている。

「おい、大丈夫か?ちょっと足見せてくれ……」

 ここで一人の選手が彼の元に近づき、足の様子を確認してみた。キャプテンマークを腕に巻いた彼が足に触れると、倒れた選手は思わず痛々しい呻き声を上げる。

「駄目だ、捻挫だな。残念だが交代しないと」

「も……申し訳ありません、キャプテン…………」

 やがてピッチの傍らから担架が担ぎ込まれると、怪我を負った選手の身体を慎重に運び、ピッチの外で応急処置がとられた。


 そんなピッチでの一部始終を目の当たりにした監督は、口元に手を当てて考え込む。そして暫くしてから手を離し、傍らのエースに声をかけた。

「…………どうやら私の計画より早く、君の出番が来たようだね」

「…………はいっ!」

 その時声をかけられた橙太がベンチから立ち上がり、軽くアップを開始する。

 やがて再びホイッスルの音が高々と鳴り響くと、交代の準備を終えた橙太は、真剣な面持ちでピッチへと乗り込んでいった。

「橙太くーん!頑張れーっ!」

 その時徐々に小さくなっていく蓮司からの声援に、彼は親指を上へ向けて応じた。自分の能力を信頼するクロ兄や監督からの、大きな期待に応える為に…………。


 …………ところが事態は彼の想像から、途轍もなくかけ離れたものとなってしまっていた。

(あ、あれ?どうして?)

 その時午前中から途中出場した橙太のプレーは、思うように上手くいっていなかったのである。パスやトラップが全く繋がらず、たとえボールが繋がったとしても、そこからシュートへと続けていかない。自分のせいで折角のチャンスが台無しになっていると、橙太はますます焦りを募らせていく。すると終了間際には、

(っ!?しまっ!)

 ほんの一瞬の隙を突かれあっさりボールを奪われると、そのまま絶体絶命のピンチへと持ち込まれてしまった。幸いにも失点こそ免れ、その直後に午前の部が終了するホイッスルが鳴り響いた。両チームが芝生の外へと引き返していく中、唯一彼の表情だけは、文字通り暗い影を落としていたのであった…………。


 …………その時青空に浮かぶ太陽は最も高い位置へと達していた。どうやらこれからも天候は変わりそうもない、少なくともそこにいる彼らはそう思っていた。

 その時両チームの部員たちは、暖かい風が吹く中で、それぞれ休憩をとっていた。ほぼ全てのメンバーが自前の弁当箱を開き、体内へエネルギーを送り届けていく。

 ここでも唯一彼だけを除いて…………。

「…………」

 その時橙太は相変わらず、独りベンチで俯き続けていた。先程の試合では仲間達の期待に応えられず、それどころか迷惑をかけてしまった。全身を小刻みに震えさせながら、ぐっと奥歯を噛み締める橙太。

 するとそこに一人の人物が、何やら風呂敷に包まれた大きな荷物を抱えながら、彼の元へと近づいてきた。

「…………橙太くん」

 俯く彼に声をかけたのは蓮司であった。呼びかけられた橙太は相変わらず下を向いていたが、それでも蓮司は言葉を続けた。

「自分の思うようにいかない事なんて、誰にだってあるよ。さっきは偶々上手くいかなかっただけ。まだまだ午後の試合だってあるし、絶対にさっきの分を取り返せると俺は信じてるよ。だからこれ(、、)はここに置いとくね…………」

 そう言うと彼は両手で抱えた風呂敷を解き、俯く橙太の隣にそっと置いた。その時彼の傍らに置かれた荷物の正体は、何重にも積み重ねられた重箱であった。その蓋の隙間から漂ってきた香りは、どうやら俯く少年の鼻にも届いたようだった。

「…………」

 そこから蓮司は口を閉ざし、暫くの間二人はすっかり黙り込んでしまった。その時彼らの耳に入り込むのは、周囲で生み出される音のみであった。鳥の鳴き声、風に揺れる木々の音、離れた場所でつかの間の休息を楽しむ少年達の声。そして更にその中へ新たに飛び込んできた音、それは…………、

「っ!」

 その時二人の耳に突如として飛び込んできたのは、何処からともなく発生した、腹の虫の鳴き声であった。その直後に俯く橙太の顔中が、徐々に真っ赤に染め上がっていく。

「…………」

 そして再び無言の状態が続いたところで、それまで赤面するのみであった橙太に変化が見られた。傍らに置かれた重箱へ突如徐に両手を伸ばすと、それを抱えて自身の膝の上に移動させる。それと同時にこれまでずっと閉ざし続けていた自らの口を、これまたゆっくりと開かせていった…………。


「…………いただきます」


 …………その時蓮司が届けた重箱の蓋を開いた橙太は、思わず失笑してしまった。

「……ったく、幾ら何でもこれは多過ぎだってぇ。僕一人じゃ食べ切れないよぉ…………」

 その時重箱の中に敷き詰められたのは、一番上には隙間なく用意されたおにぎりの数々、それ以外には卵焼きや鶏の唐揚げ、更には一口大のハンバーグなどといった、弁当における定番のおかずの数々であった。

「橙太くんの言う通りかも。でもそれくらい皆の期待が、この中に込められたって事なんじゃないかな」

「へへっ、そうかもね…………」

 蓮司は同じく重箱の中を覗きながら微笑んだ。するとその時橙太の口から、こんな提案が出された。

「ねえクロ兄、このお弁当、他の皆にもお裾分けしてもいいかな?さっきも言ったけど、流石にこの量じゃ食べ切れそうもないし、かと言って残すのも勿体ないし…………」

 その時蓮司は即答した。

「…………もしかしたら、そのつもりでこんなに沢山作ったのかもしれないね。分かったよ、それじゃあ皆の所に戻ろうか」

「…………うん!」


 その時他のメンバーの元に向かった橙太と蓮司が事情を説明すると、それまで大量に敷き詰められていた重箱の中身が、瞬く間に姿を消していった。

 橙太が所属するサッカー部だけでなく、対戦相手の部員達にも振る舞われたおにぎりやおかずは大好評で、それらを受け取り頬張った全員が、途轍もなく満足そうな表情を浮かべたのであった。

 そして最後に残った中身は丁度二人で食べ切れそうな量へと減ったところで全員分が行き届き、その残りは橙太と蓮司の胃袋へと吸収されていった…………。


 …………その時それまでと状況が一変し、その場にいる全員が真剣な表情を示していた。束の間の休息が終了し、いよいよ午後の練習試合が幕を開けようとしていたのだ。その間腹ごしらえを済ませた両校のサッカー部のメンバーが、続々とピッチへと舞い戻っていく。

 そんな中午後の部は最初から試合に参加する橙太が、駆け付けてくれた蓮司に対し、感謝の思いを伝えていた。

「ありがとうクロ兄。クロ兄の励ましの言葉とこのお弁当のお陰で、何だか元気になれた気がするよ」

「どういたしまして。少しでも君の役に立てたのなら嬉しいよ。後で家の皆にも伝えておくね!」

「あっ!そっそれはちょっと勘弁して!恥ずかしいから…………」

 二人の些細な会話が続いていたその時、部員の一人が彼らの背後から大声で呼び掛けてきた。

「おーい七橋ーっ!早くこっち来いよーっ!試合始まるぞーっ!」

「はいっ!今行きます!」

 名前を呼ばれた橙太はその場を離れ、急いでピッチへと駆け出していく。

 すると次の瞬間彼の背後から、蓮司の力強い声援が耳の中へ飛び込んできた。

「頑張れーっ!橙太くーんっ!」

 その時頼れる兄貴分からの声援に、親指を立てて応じる橙太の姿があった―――。



 ―――その時「れいんぼう」の店内では、こちらも束の間の休息をとる七橋家の五人の姿がそこにはあった。混雑していた昼時の営業が一旦落ち着き、客の入りが少なくなったこの時間を利用して、全員揃って会話を行っている。この時彼らが話題に挙げていたのは、現在店内にいないあの二人(、、、、)に関してだった。

「今頃クロちゃん吃驚してるだろうなぁ、橙太の活躍を生で見て」

「ふふふっ、そうかもしれないわね」

「私達が作ったお弁当、あんなに大量で大丈夫だったかしら?」

「大丈夫ですよ。絶対に橙太お兄さんの力になっていると信じてます」

「そうだね。美空の言う通り、二人に期待しよう」

 全員が二人への思いを包み隠さず語り合っていく。

 するとその時、

「っ!」

 その時突然開かれた入り口の扉から店内に入り込んだのは、蓮司であった。その片手には今回橙太へと手渡した、あの(、、)重箱を包んだ風呂敷を抱えて。

「おかえりクロちゃん!」

「ただいま!橙太くんはまだ帰りの準備があるみたいで、俺だけ先に帰ってきちゃった」

 蓮司はそう言うと、まるで置いてけぼりにしてしまったような橙太に対し、少々申し訳なさそうな面持ちで後頭部を掻いた。しかしそんな事はお構いなしに、若葉は彼に一言尋ねてみる。

「ところでクロちゃん、実際に見に行ってどうだったなか?橙太のサッカー部でのエースっぷり」

 蓮司は一呼吸置いてから、落ち着いて返答する。

「凄かったよ。俺の想像以上に頑張ってたよ、橙太くんは。今日の試合で起こった事をここで全部話すには、相当な時間がかかるかもしれない」

 落ち着きの中にも未だ冷めない興奮を込めた彼の感想を受け、とても嬉しそうな表情で応じる五人。

 それに加えて蓮司の口から、もう一言だけ追加された言葉があった。

「あ、それと橙太くんと俺から言いたい事が…………」

 突然彼が語った一言に最初は疑問符を浮かべるのみだった五人。しかし次に蓮司から贈られた言葉を受け、彼らは益々嬉しさを膨らませた。それは単純な言葉なのかもしれないが、今の彼らにとってはその一言で十分思いが伝わったのであった。


「今日は皆さんのお陰で、素晴らしい一日を過ごす事が出来ました。本当に、ありがとうございました!」

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