終点
いつの間にか僕は駅のホームにいた。隣に僕よりだいぶ背の低いおじいさんが立っている。
おじいさんは厳しい顔つきの人で、独りでぶつぶつと文句をたれている。僕はそのおじいさんが少し怖かった。
それにしてもこのおじいさん、どこかで見たことのある顔だ。が、この時は思い出すことができなかっ
た。
僕の立っている左側の方から電車がやってきた。僕の目の前で電車の扉が開く。電車の中にはそこそこ人が乗っている。僕はこの電車に乗る必要がなかったのでホームに立ったまま動かなかった。
電車の扉は1秒、開いただけで、すぐに閉まろうとした。この電車に乗ろうと待ち構えていた人々はあわてて乗り込もうとするが、扉はおかまいなく閉まろうとする。強引に扉を開けようとするけれども、電車は出発しようとする。
僕の隣にいた変なおじいさんも、電車に乗りたがっている人を強引に電車に乗せてやろうと協力している。なんとか、客の一人が乗った。そして、すぐに扉は閉まった。
僕は無意識のうちに僕の隣にいる変なおじいさんがこの電車に乗りたがっていたことを知っていた。
この変なおじいさん、電車に乗りたかったはずなのに他の人を乗せてあげようとして電車に乗るこでき
なかった。
電車はどんどん遠くへと走っていった。