レナ、厄介事に巻き込まれる?
本編第五話です。
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ゴブリン討伐の依頼を完遂した翌日。
レナは、朝食が終わる時間ギリギリに目を覚ます。
「もぅ、こんな時間?寝坊した❗」
慌てていつもの服に着替え一階にある食堂に向かう。
「まだ、朝食食べれるかな?」
ちょうどそこにいたフェイに聞いた。
「おはようございます、レナさん。ギリギリ大丈夫ですよ。」
「よかった。おはよう、フェイ。」
なんとか朝食に間に合ったレナは、フィルに挨拶をして席に座る。フェイがすぐに朝食を運んできてくれたので、レナは、すぐに食べ始める。
「フェイ、ご馳走さま。今日も美味しかったわ。」
「いえ、こちらこそいつも美味しそうに食べてくれるので嬉しいです。あと、これが今日の昼食になります。」
フェイから昼食の弁当を受けとると、ギルドに向かうため宿の入口に向かい始める。
「行ってらっしゃい、レナさん。」
「行ってくるわね、フェイ。」
宿を出たレナは、ギルに気がつく。
「ナンパは、お断りよ?」
いつもの軽い口調で挨拶をするレナ。
「だから、ナンパじゃねぇよ!何回言わす気だ?」
こちらも、軽く受け流す。
レナは、ギルドに向けて歩き出す。レナの様子を見てギルはレナに話しかけた。
「レナ、今日は、頼みたいことがあるから依頼を受けないでくれるか?」
「頼みたいこと?厄介事はお断りよ?」
と、レナは素っ気なく言い返す。
「頼みたいことは、ある依頼を一緒に受けてくれないか?」
「なぜ?私とギルが二人で受けるような依頼なの?」
「そうだ、だが今は詳しく話せない。ギルドに着いてから詳しく話す。」
ギルは、含みのある言い方をしてレナに告げた。
(ギルの言い方はどこか引っ掛かるのよね。絶対、私にとって厄介事のような気がするわ。)
レナが、考えていたらギルドに着いてしまった。
二人が中に入ると、待ってましたとばかりにティルがレナとギルの前に駆け込んできた。
「お二人とも待ってましたよ。それでは、案内しますので私についてきてくださいね?」
勝手に話を進めるティルに、レナは待ったをかける。
「ちょっと待って?まだ、私はギルからの頼まれ事に返事を返していないわ。だから、ついていかないわよ?」
ティルは、驚きギルを見る。
「ギルさん、まだ話してないんですか?」
「いや、流石に街のど真ん中で話せるわけねぇだろ?それに俺は、ギルドに着いてから詳しく話すとレナに言ったからこれから話さないといけないんだよ。」
「時間がないので向かいながら私が話します。」
ギルとティルの言い合いが終わると、レナが口を開く。
「話の流れからすると、私はティルとギルの言う依頼に参加するのが決まっているみたいだけど・・・。私、やらないわよ?」
レナの答えに二人は愕然とした。
「なぜですか?まだ依頼内容を聞いてもいないのに。」
「そうだぜ、レナ。聞いてからでも遅くはねぇだろ?」
と、必死に説得を試みる二人。しかし、レナは首を縦に振らない。
「イヤよ?だってこの場合、聞いたら最後受けるしかなくなりそうだもん❗」
二人は、驚いて固まる。当たり前である、依頼内容がまだ一部の人間しか知らないことだからだ。レナが、知っているはすがない。ただ、レナの勘が鋭いだけである。
「ですが、レナさん。報酬がかなりいいんですよ?」
「なら、私以外の他の人に回して?」
「いや、お前じゃなきゃダメなんだよ。」
「なぜ、私なの?別に他の人でもいいでしょ?」
ここまできたらあとは堂々巡りである。
ティルとギルは、最終手段にでた。二人でレナの両脇を固め連行したのである。レナは冷静に二人に言う。
「私に拒否権はないの?これがギルドのやり方なの?」
「いえ、違いますよ。今回は特別処置です。」
ティルは、レナにそう告げた。レナも観念したみたいで大人しく連行されていく。
着いた場所は、ギルドマスターの部屋である。
「ギルドマスター、ティルです。お二人をお連れしました。」
「入って来て下さい。」
声からして若い女性である。三人が部屋に入ると若い女性が座っていた。ティルは女性に向かって話始める。
「お待たせして申し訳ありません、ギルドマスター。こちらが、レナさんとギルさんです。」
レナとギルは、ティルに勧められたソファーに座る。そして、ティルに紹介されたので、取り敢えず自己紹介をするレナ。
「初めまして、ギルドマスター。私がレナです。」
「私がここのギルドマスターよ、よろしくね。レナちゃん。」
ギルドマスターは、名乗りはしなかったがレナは気にすることなく話を続けようとしたがティルによって遮られる。
「ギルドマスター、時間がありませんので二人に詳しい話をお願いします。」
「じゃぁ、話をするわね?」
「ちょっと待ってください。私は受けるとは一言も言ってません。ですので、ここで帰らせていただきます。」
と、レナはそう言うと立ち上がりドアの方へ歩いていく。
ドアに手を掛け出ようとしたときギルドマスターから意外な言葉が返ってくる。
「貴女にも関係あることかもしれないわよ?『結城レナ』さん?」
レナは、勢いよく振り返りギルドマスターを見る。
「なぜ知っているの?」
ギルドマスターは、ニコニコしているだけで答えるつもりはないらしい。
(答えるつもりはないみたいだけど。情報の出所は城の関係者でしょうね?)
そう考えながらレナは、溜め息をつき言う。
「はぁぁ、分かりました。取り敢えず話だけは聞きます。」
「そう、良かったわ。ありがとう❗」
ギルドマスターは、依頼内容を二人に話始める。
内容と報酬、期間は次の通りである。
報酬は、一日金貨一枚。
依頼内容は、勇者の育成。
期間は、勇者が騎士団長に勝てるまで。
である。内容を聞いたレナは、溜め息をついた。
(なんで、またあそこに戻らなくちゃいけないのよ?こんなことになるならさっさと違う街に行くんだったわ。)
時すでに遅しである。ギルドマスターが言うには、騎士団長に勝てなくてもいいそうである。ある程度渡り合えればいいとのことである。
さらに、ギルドマスターが爆弾を落とす。
「ちなみに、今日の午後に顔合わせをして明日から始まるから。」
「拒否が出来ないだけじゃなく、すでに予定も決まっていたんですね?」
溜め息をつき、観念するレナ。ギルが、勇者の現在の実力を訪ねるとギルドマスターが答えた。
「ちなみに、勇者達の実力はすでに副団長に匹敵するそうよ?」
「そうか、なら俺でもなんとかなるな。」
ギルの実力は、騎士団長に及ばないが副団長よりは上である。
話も一段落した頃、時間は昼になろうとしていた。
昼食を四人で外に食べに行き、そのまま城に向かうことになった。
城に着いた四人は、まず王との謁見をし、その後騎士団の訓練場でラピス王女と勇者達との顔合わせである。
(みんな、私の事は覚えてるかな?たぶん、あの様子からすると私の記憶は消されている可能性が高いわね。)
クラスメイトの事を思うレナではあったが、あのラピス王女が何もしない訳がないと結論をだした。
訓練場に着いた四人は、ラピス王女から自己紹介を頼まれる。
最初にギルドマスター、次にティル、ギル、レナの順番に決まっていた。ギルの自己紹介が終わりレナの番になる。
「冒険者のレナよ、よろしく。」
冷静且つ素っ気ない態度での自己紹介に勇者達は騒ぐ。
「なんだよあの態度、俺達は勇者なんだぞ。」
「なにあれ?ウザいんだけど。」
「俺達を舐めてるんだよ。痛い目に合わせてやる。」
などなど、罵詈雑言である。この様子を見たレナは、確信した。
(やっぱり、私の記憶は無くなっているみたいね。なら、都合がいいわ。徹底的鍛えてあげるわ。ついでにラピス王女もね。)
黒い部分が出始めるレナである。
なんとか無事?に顔合わせも終わり帰ろうとした時、レナはラピス王女に呼び止められる。
「レナさん?でしたわよね。待ってくださるかしら?」
「何でしょうか?」
「貴女、まだ生きていらっしゃったのですね?すでに、何処かで死んでいるものだと思いましたわ。」
笑顔のまま恐ろしい言葉を口にするラピス王女。
「意外ですか?でも、私は簡単には死にませんよ?なにせ往生際が悪いので。」
レナも笑顔で返す。
このやり取りを聞いた人がもしいるなら、絶対にこの場には居たくないだろう。明らかに空気がおかしい。
「まぁ、いいですわ。ちゃんと勇者様方を育成していただければ。」
「わかっていますよ。私の師匠でもある祖父のやり方なのですけどね?」
お互いに笑顔で話をする。
「話はそれだけです。明日からお願いしますわね。」
「分かりました。あっそうだ、一つ質問に答えてもらえますか?」
「なんですか?」
「ギルドマスターに私の情報を漏らしたのはラピス王女ですよね?」
「さて、何のことかしら?」
惚けた振りをするラピス王女。しかし、一瞬顔色が変わる。その一瞬を見逃さなかったレナは確信した。ラピス王女が自分の情報を漏らしたのだと。
「そうですか、分かりました。では、また明日ここに来ます。」
そう言いレナは、城をでて宿に戻る。
明日はギルが城に行く時間の少し前に迎えに来るそうなので、それまでには着替えと朝食を済ませようと心に誓うレナであった。
やっぱり厄介事に巻き込まれました。勇者じゃないのに勇者育成をするなんとも微妙な感じがしますが気にしないでいただけるとありがたいです。
次回は十二日の六時の更新予定です。
ストックができたら二話更新もしようかと考えてはいます。
無理のないように書いていきますのでよろしくお願いします。




