模擬戦?と魔族
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模擬戦が行われる当日、レナとサラは城に向かった。朝が早いためか人があまり外に出ていない。
(朝が早いから人が少ないのかしら?でも、一年前はもう少し居たような気もするんだけど?日が昇れば街は活気に溢れているのに・・・、何故かしらね?)
そう思っていたらサラがレナに話しかけていた。
「レナちゃん、人が少なくない?この時間のネフィル皇国だと店の準備とかする人がいるのに、この街はいないね?」
サラは、レナが思っていたことを気付き指摘してきた。
「そうね、前はもう少し居たとは思うんだけど・・・。」
「何かありそうだね?」
「用心した方がいいかもね、サラちゃん?」
「そうだね❗」
レナとサラは、街の人の少なさが気になったが今は考えないことにした。
城に着いた二人は、門番に案内され訓練場に向かうのだった。
訓練場に着いた二人を待ち構えていたのは、ラピス王女と勇者達だった。レナは、訓練場の雰囲気が前回の模擬戦の時と違うことに気づいた。サラもサラで、何かを感じ取ったみたいである。
「サラちゃん、気を引き締めた方がいいかもしれないよ?」
「そうだね、それになんか嫌な感じがするね?」
「うん。今にも襲いかかって来そうな感じだね?」
と、その時突然勇者の一人が絶叫と共に襲いかかって来た。
「死ねぇぇぇぇぇぇ❗❗」
大剣を振り上げレナに襲いかかった。
ガキィィィィィン❗
レナは、ギリギリの所で勇者の大剣を交わし戦闘体勢に入る。それを見たサラも左手を鞘に、右手を柄に置く。緊迫した空気の中レナは、ラピス王女に話し掛ける。
「これはどういう事かしら、ラピス王女?」
「・・・。」
しかし、ラピス王女からの返答はない。そのかわりに別の場所から返事が返ってきた。
「そいつらは傀儡だから返事なんてしねぇよ、『真紅の死神』さんよぉぉぉ❗」
警戒を怠らず、声のする方を見るレナとサラ。そこにいる人物は・・・、ギルだった。いや、正確にはギルに似た別の誰かである。一昨日のギルの気配ではないことにレナはすぐに気が付いた。
「貴方、ギルじゃないわね?」
「さすがだな、『真紅の死神』。簡単に見破られたのは初めてだ。」
「そりゃぁ、ギルとはそれなりの付き合いがあるから。いつから入れ替わったのかしら?」
「教えるわけないだろう❗教えてほしけりゃ俺を倒してみな?」
「なんだ、そんなことでいいの?じゃぁ、今すぐに始めましょ?」
サラがギルに向かって言う。
「お前みたいな小娘に俺が殺られるわけないだろ?俺は、『真紅の死神』と殺しあいたいんだよ❗実力もない奴がほざくな❗」
「レナちゃん、この人の相手私がやっていい?」
「別にいいわよ?じゃぁ、私は操られてるラピス王女と勇者達の相手をすればいいわね?」
二人の会話を聞いていたギルは、笑い声をあげる。
「はははっ❗その人数を一人で相手にするのか?言っておくがそいつらは俺の術で身体強化されてるぞ❗」
「あら、教えてくれるなんて優しいのね?ある意味、助かるわ❗時間も勿体ないしさっさと始めましょ?」
「ぼざいてろ❗『真紅の死神』を殺せ❗」
ギルは、ラピス王女と勇者達に命令した。
最初に動いたのは勇者達である。全員が一斉にレナに向かうのではなく数人でレナに襲いかかってくる。
(私の体力を削るような感じかな?さっきの不意討ちでもわかったけど、身体強化されているだけで技量は元のままなのね。全員で来ないところを見ると完全には支配されてないみたいね。)
「「死ねぇぇぇぇぇぇ❗❗」」
「それしか言えないの?操られてるとはいえ、勇者でしょうが❗」
そんな言葉を放ちながらレナは勇者の攻撃をかわす。
「いくら身体強化されても所詮はこの程度なのね?一年間何やってたのかしら?」
「負け惜しみはよせ❗避けているだけで攻撃すらまともにできないじゃないか❗」
レナは、溜め息をついた。サラも、やれやれと首を振っている。
「なんだ、その態度は・・・。」
ドサッドサッ❗
言い終わる前に、最初に襲いかかってきた勇者達が地面に倒れる。
「何か文句でもあるかしら?」
「・・・、てめぇ何をした?」
「わからないなら貴方はそれだけの実力しかないということね?」
それだけ言うとレナは、残りの勇者に向かって駆け出した。
「勇者達がもっとしっかりしてればこんなことにはならなかったはずなのにね❗」
すべて、峰打ちで勇者を倒していくレナ、何も出来ずに地面に倒れていく勇者達。それを見たギルは、敵わないと思ったのか逃げようとした。しかし、サラによって逃走は叶わなかった。
「自分だけ逃げるつもり?ここまでやっておいてそれはないんじゃない?どうせ、レナちゃんの実力を見謝ったんでしょうけど❗」
「退けぇぇぇぇ❗小娘が俺の邪魔をするなぁぁぁぁ❗」
叫ぶとサラに襲いかかった。
「サラちゃん❗一応殺さないでくれる?」
「わかってるよ、レナちゃん❗」
ギルは、仕込み杖でサラに攻撃を仕掛けてきた。しかし、ギルは前衛ではないため隙が多く狙ってくださいと言わんばかりの攻撃であった。
「慣れないことはするもんじゃないよ❗」
サラの居合いがギルの左脇腹を打つ。
「ぐわぁぁぁぁ❗」
ギルは、そのまま地面に倒れ込み意識を失う。サラは、意識を失ったギルを縄で縛り上げる。様子を見守っていたレナは、ラピス王女に眼を向ける。
「さて、残るはラピス王女だけよ?いい加減操られてる振りをやめたら?」
レナの言葉でラピス王女は、ようやく話し出す。
「バレていましたか。レナさんにはかないませんね?」
「わかるに決まってるじゃない❗貴女の眼が勇者と違ったもの。で、なんでこうなったの?」
「それは・・・。」
サラがレナの隣に来て話し掛ける。
「たぶん、親族を人質にでもされたんじゃない?てか、ギルは魔族だよね?」
「たぶんね?」
「やはり、そうでしたか。えぇ、サラさんの言うとおり国王である父が人質になっています。助けるにはこうするしかなかったのです。」
「ふぅぅぅん、別にいいけど。なら、依頼もこれで終わりね?」
「なっ❗何を言っているのですか?まだ、父を助けていないじゃないですか?」
「なにか勘違いをしていませんか、ラピス王女殿下?」
サラが皇女に戻る。
「私達は、模擬戦の依頼をギルドから受けてここにいます。ですから、それ以外のことは私達が関与するべきではありません。」
サラの意見はもっともである。それを聞いたラピス王女言い返す。
「しかし、国の一大事ですのよ?それを、依頼以外だからと言って・・・。」
ラピス王女の言葉を遮りレナが呟いた。
「そろそろ来るかな?」
「誰が来るというのですか?」
怒ったように叫び出すラピス王女。
「レナちゃん、もしかして・・・。」
「あっ❗ようやく来たわね?遅いわよ、アミル?」
突然現れたのは、アミルだった。アミルの登場で驚くラピス王女。
「アミルさん、久し振りぃぃぃ❗」
「相変わらず元気ですね、サラさん❗」
「それよりそこに縛られてるのがお目当てじゃないの?」
「あらあら、レナさんが捕まえてくれたんですか?」
「アミルさん、今回はレナちゃんじゃなくて私だよ❗」
「サラさんでしたか。ありがとうございます❗」
頭を下げるアミル。対して、大声をあげるラピス王女。
「なっ❗また、魔族が現れましたわ❗レナさん、倒しな・・・。」
レナは、瞬時にラピス王女の横に移動し首に手刀をいれて気絶させた。
「レナちゃん、さすがにそれはヤバイんじゃないの?仮にも王族だよ?」
「大丈夫よ、むしろこのまま話に参加された方が厄介よ❗」
「そうですね、私達の間柄を尋ねられると面倒ですから。」
「まぁ、確かにそうだけど・・・。いいのかな?」
常識を語るサラに、ある意味非常識の二人が言う。
「いいのよ(いいんです)。」
「はぁぁ。それでアミルさんはそこの魔族を捕まえに来たんだよね?」
「そうですね、間違いありません。」
「人間と戦争をするべきと言っている魔族の取り締まりをしているって所かしら?」
「はい。これも魔王選抜の試験みたいなものですから。」
「そうなんだ、アミルさんも大変だね?」
「何いってるのよ?それに毎回巻き込まれてるのは私達だよ、サラちゃん?」
「確かにそうだね、また巻き込まれるのかな?」
「あるかもしれませんね?なにせレナさんは『真紅の死神』ですから❗ちなみに、レナさんの二つ名は魔族の領域まで届いてますよ?」
「ちょっ❗なんでそこまで届いてるのよ?」
「さぁ?」
笑いながらはぐらかすアミル。ここで魔族の男が眼を覚ます。
「なんだこれは?何故、俺は縛られてるんだ?ほどけぇぇぇ❗」
「あら、ようやくお目覚めですね?それ以外に何か言うことはありませんか?」
魔族の男は、アミルを見て驚く。
「なぜ、貴女がここにいる?」
「それは、お分かりではないのですか?」
「ぐぅぅぅ❗殺せ❗」
「殺しはしません。ただ、この国にかけた術を解いてください❗解いていただけなければ貴方を魔王様の前に引きずり出します❗」
魔族の男は、顔を青くして頷いた。
「ありがとうございます。では、行きましょうか?」
「何処に連れていくんだ?まさか・・・。」
「そのまさかですよ❗レナさん、サラさん今回もありがとうございました。また、何かありましたらお願いしますね❗」
そう言い残してアミルと魔族の男は消えていった。
「ちょっ、アミル❗変なこと・・・。もういないし❗」
「レナちゃん、また巻き込まれそうだね?」
「はぁぁ❗もぅどうでもいいわ❗さて、帰るわよ。」
「えっ?このままにして帰るの?」
「帰るわよ?何かいけない?」
「人としてどうかなと?」
「サラちゃん、ここは私達が住んでいた日本じゃないのよ?ここは、異世界。だから、気にしないの❗」
「そっか、ここは異世界だもんね❗なら、しょうがないよね❗」
「だから、放置して帰るわよ❗」
「わかった。放置して帰ろ❗」
二人は話ながら宿に戻るのだった。しかし、サラは心の中で思った。
(本当にこれでいいのかな?)
この言葉からわかるように、サラにはまだ日本での常識が少しは残っていた。
ギル本人はと言うと、城の倉庫で縛られて眠らされていた。魔族の術が解かれ街に活気が戻った後、城の兵士によって発見されたのである。
操られていた時の記憶は誰が一人としてない。真相を知っているのはレナとサラ、そしてラピス王女だけである。だが、ラピス王女は、アミルの事に関しての記憶は全くないのである。
翌日になりレナとサラは、ラピス王女に午後に城まで来るようにと兵士から伝言を受け取った。
午後になり城に向かったレナとサラは、何故か訓練場に居た。
「レナさん、模擬戦の依頼は完了してません❗ですので、今から模擬戦を始めます❗」
「なんで、そうなるのよ?昨日、終わったじゃない?」
「勇者達の記憶がないのに模擬戦をやったとはいいません❗」
「レナちゃん、諦めるしかないよ?ラピス王女は、ヤル気満々だよ?」
「イヤよぉぉぉぉぉ❗」
レナの叫びと共に模擬戦が開始された。
レナは、勇者達を問答無用にボコボコにしたのである。完全にレナの八つ当たりを受けた勇者達であった。
サラは、ラピス王女と対戦したが一瞬で決着がつく。
そして結果は・・・。言うまでもなくレナとサラの圧勝で模擬戦は終わりを告げた。
気絶したラピス王女と勇者を放置し、依頼の完了の報告を国王にしてからギルドに報告し宿に戻った。
そして、翌日の朝。レナとサラは、旅の準備を終え次の国を目指すのだった・・・。
次回から新たな国への旅です。ここまでが二章的な感じになります。話数的には一章に比べて短い気もしますが・・・。
次回は、四日の六時の更新予定です。




