三人の休日
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レナの体調も回復し、レナ、サラとアミルの三人は街に来ていた。レナが、アミルと約束を果たすためである。
「初めて街に来ましたけど、人間も多く活気がありますね?」
アミルは、城も初めてなら街も初めてである。余りの人の多さに若干イラっとしていた。
「アミル、顔に出てるわよ?イラつくのは判るけど、顔に出したらダメよ?」
「あら?顔に出てましたか?申し訳ありません。」
「さすがは、魔族ですね?人の多さでイラつくなんて・・・。」
「サラさん、それは誤解ですよ。私は、まだ温厚な方ですから。あと、私と話すときもレナさんと同じで構いませんよ?」
「いいの?でも、後から難癖つけない?」
「そんなことしませんから安心してください。」
「ありがとう、アミルさん。」
「取りあえず、何処かで朝食を食べよ?」
レナの言葉に頷く二人。三人は、適当な所を見つけ店に入った。店に入った三人を見た店員と街の人が一同に叫んだ。
「「英雄が来たぞぉぉぉぉぉ❗❗」」
地響きのように歓声があがる。三人は、顔を見合わせる。意を決してレナが尋ねる。
「英雄って誰の事かしら?」
レナの問いに一人の冒険者風の男が答える。
「何言ってるんだよ?あんたの事だよ、『真紅の英雄』❗」
「真紅の英雄?何よそれ?」
今度は、別の街人が答える。
「嬢ちゃんの事に決まってるじゃないか❗騎士達が嬢ちゃんの服装からそう呼び始めたんだよ❗それが、俺達まで広まったんだ。」
「やめてよ❗恥ずかしすぎるわ❗」
「レナちゃんの二つ名、格好いいなぁぁ❗」
「レナさんにも二つ名がようやく付きましたか。」
「ちょっ、二人まで。私は、二つ名なんて要らないわよ?」
「それは、無理ってもんだよ❗嬢ちゃんは、二つ名がつくほどな活躍をしたんだ。素直に受け取るのが筋じゃないか?」
「活躍なんかしてないじゃない?少し魔物を倒して一人の魔族を倒したぐらいで・・・。」
言い終わる前に店に居る人の声で遮られる。
「「それで充分だよ❗」」
「うぐっ❗あぁ、もうわかったわよ❗どうせなら英雄はやめて欲しいんだけど。」
「じゃぁ、何がいいの。レナちゃん?」
「それは・・・。」
「では、こんなのはいかがですか?」
アミルが、レナの二つ名を提案しようとしたら視線がアミルには集中する。
「『真紅の死神』❗魔物すらレナさんに怯え逃走したと騎士から聞きましたから。」
アミルの提案した二つ名に、一同は頷き再び叫ぶ。
「「それに決まりだぁぁぁ❗」」
「この二つ名を広めに行くぞ❗」
「「おぉぉぉぉぉ❗❗」」
店に居た人達が一斉に店を出ていく。レナは、呆れた顔をして呟いた。
「もぅ、好きにしてください・・・。」
こうして、レナの二つ名は『真紅の英雄』から『真紅の死神』に変わり定着したのである。
ようやく落ち着きを取り戻した店内で朝食を食べ始める三人。レナは、食べている最中でも握手を求められたりして食べ終わる頃にはぐったりしていた。
「レナちゃん、お疲れだね?」
「そうね、サラちゃんと皇国の騎士達のせいね❗」
「えぇぇぇぇぇ❗それは、違うんじゃない?最後はアミルさんだよ?」
「何を言ってるんですか?私は、レナさんが英雄は嫌だと仰ったので別の名を出しただけですよ?元々は、この国の騎士達が勝手に広めたのが原因ではないですか?」
「でも、二つ名は勝手に誰かがつけるものだから仕方なくない?」
「確かにそうですわね。ということなので、諦めてくださいね、レナさん?」
レナは、溜め息をついてテーブルに伏せながら言う。
「諦めます。そして、これからはもっと自重します・・・。」
レナの戦果と二つ名は、フィール王国にも伝わりラピス王女や勇者達の耳にも入ることとなる。ラピス王女は、レナの話を聞き発狂したのは言うまでもない。
店を出た三人は、街を散策することにした。しかし、店と同様に行く先々で二つ名を呼ばれたり握手を求められたりしてレナのイライラが溜まっていった。
「もぅ、いい加減にしてほしいんだけど❗」
「それは、無理だよ?」
「そうですよ、レナさん。」
「自分達の命を、街を守ってくれたレナちゃんにみんながお礼をしたいんだよ❗」
「そうですよ、レナさん。数日後には収まりますからそれまでの我慢です❗」
「そんなことどうでもいいの❗私は、三人で買い物を楽しみたかったから邪魔されるのがイヤなの❗折角、アミルと人の街を歩けるのに・・・。これじゃぁ、いつまでたっても無理じゃん❗」
「楽しみにしてくれていたのですね?嬉しいです❗」
「当たり前じゃない❗サラちゃんとはいつでも来れるけど、アミルとは来れないから・・・。」
レナは、俯きながら言う。レナを見たサラは、アミルに向いて言う。
「アミルさんはあとどのくらいこの国に居られますか?」
「そうですね、レナさんも回復したのでそんなに長くは居ないと思います。二日後には帰ろうと思います。」
「わかりました。じゃぁ、二日後の午前中に三人で買い物をしませんか?て、買い物が終わったらアミルさんを見送るということにしませんか?」
「いいのですか?私は、嬉しいんですけど・・・。レナさんはどうですか?」
レナは、嬉しそうな顔をして答える。
「それでいいわ❗ありがとう、サラちゃん❗」
「じゃぁ、決まりだね❗今日は、城に帰ろうか?」
「そうですわね。これ以上ここに居ると、いつレナさんが爆発するかわかりませんものね?」
「私は、そんな簡単に爆発しないわよ❗」
「はいはい、わかったから。」
そういうとサラは、城に向かって歩き出した。後を追うようにアミルも続いた。レナも叫びながら追いかける。
「嘘じゃないからねぇぇぇぇぇ❗」
ちなみにこの後城に帰ったレナは、騎士達をボコボコにしたのは言うまでもない。
そしてアミルが帰るの二日後・・・。
三人は、約束通り街で買い物を楽しんだ。二日前みたいになることはなく、街の人達は声を掛ける程度になっていた。
買い物を終え、昼食を食べ終わりアミルが帰る時間を向かえる。
三人は、街から離れた草原へと来ていた。アミルが魔族であることを知られないための措置である。
「取りあえずはお別れね、アミル?」
「そうですね。また、近いうちに何処かで会うかも知れませんけど。」
「やめてよ❗厄介事になりそうだから。」
「レナさんは、巻き込まれる体質だからいいじゃないですか?困っている私を助けてくれないのでしょうか?」
「もぅ、仕方ないわね。アミルに頼まれたら手を貸すわよ❗」
「さすが、レナさんです❗」
「アミルさん、今日までありがとうございます❗私も出きる限り手伝います❗」
「ありがとうございます、サラさん❗その時はよろしくお願いします❗では、あまり長居をするといつ迷惑がかかるかわかりませんのでこれで失礼しますね?」
「そうね、またいつでも遊びに来てね❗」
「また、訓練に付き合ってね、アミルさん❗」
「はい、必ず❗」
そう言い残しアミルは帰っていった。残されたレナとサラは城に帰るのだった。
それから数日後、レナは皇子と謁見の間に居た・・・。
三人の休日でしたがあまり休日にはなっていなかったよいな気もします。三人の買い物は、外伝みたいに書けたらと思っています。いつになるかはわかりませんが・・・。気長に待っていてください。
次回は、四月二日六時の更新予定です。




