新たな国への旅立ち
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勇者達との戦い、そして新たな魔族の出現があった翌日、レナはまだ国境の街にいた。宿に併設された食堂でギル、ラピス王女と話していた。
「なぜ、私が魔族に狙われたのでしょうか?」
「昨日の魔族が言ってたじゃない?人間同士の戦争を起こすためだって。」
「そうだぜ、王女殿下を殺して隣国のせいにすれば簡単に戦争なんて起こるもんだ。」
「ですが、他の国の王族でも問題ありませんわよ?」
ラピス王女の質問にギルは考え込む。
「そんなの簡単じゃない?この国には、他の国にないものがあるじゃない?」
ラピス王女とギルは、揃って首を傾げる。
「わからないの?ラピス王女、貴女は何をしたのかしら?」
「はっ❗勇者召喚ですわね?」
ようやく、答えに辿り着いたラピス王女。しかし、ギルは疑問をレナに投げ掛けた。
「だが、なぜ魔族はフィール王国に勇者が居るとわかったんだ?」
(絶対私のせいかな?アミルに勇者の事話しちゃったし。でも、時間が若干合わないような気もするんだけど・・・。)
レナは、思い当たることを思い出したが口には出さずはぐらかした。
「そんなの知らないわよ?第一、ラピス王女やギルがあいつが魔族であることが判らなかったんだから他の人が判るとは思わないわよ?」
「確かに、見た目は普通の人間でしたわね。」
「そうだな、あんな風に人間擬態されたらわからん。」
「で、二人はこれからどうするの?あの魔族がすぐに襲ってくることはないと思うけど?」
レナは、二人に今後の予定を聞いた。
「まぁ、俺は王都に帰るつもりだ。」
「私も王都に帰ります。今回の事をお父様に報告しなければなりませんから。良ければギルさんに王都までの護衛を依頼したいのですが?よろしいでしょうか?」
「別に構わないぜ?」
「では、よろしくお願いします。それで、レナさんはどうしますの?」
ラピス王女は、レナに今後の予定を尋ねてきた。
「私?もちろん、旅を続けるわよ?」
レナは、即答した。旅を続けると言ったレナにラピス王女は怒鳴り声をあげた。
「国の一大事に旅を続けるですって?貴女は何を考えているの?私を助け、国を守るのも冒険者の仕事ではないのですか?」
ラピス王女の言葉にレナは冷たく言い放った。
「何が国の一大事よ、勝手に召喚した挙げ句私をつけ狙い戦いを挑んでおいて。都合が良すぎるんじゃない?よくそんな事が言えるわね?」
「おぃ、レナ。言いすぎじゃないか?」
「ギルは黙っててくれるかしら?」
レナは、若干殺気を放ってギルを黙らせる。
「しかし、こんな時だからこそお互いに納得するまで話し合うべきではないのですか?」
「話し合うべき?それは、王族で王女である貴女の言葉よね?貴女の勇者様達に守ってもらえばいいんじゃない?私が貴女を助ける義理は無いわね❗」
そう言うと席を立つレナ。レナの行動を止めようか悩むギル。ラピス王女は立ち上がり驚きの行動に出る。
「レナさん、助けて頂けないでしょうか?お願いします。」
ラピス王女は、頭を下げレナに懇願する。しかし、レナは振り返ることなく告げる。
「イヤよ。」
「なっ❗王族である私が頭を下げたのに❗」
「そうだぜ、王女殿下が頭を下げたんだ。助けてやってもいいんじゃないか?」
ギルは、ラピス王女に助け船を出す。
「なら、ギルが助けてあげればいいんじゃない?」
「俺なんて戦力になるわけないだろ?」
「そうかしら?今の勇者達より遥かに強いと私は思うけど?」
レナの言葉にギルは絶句する。ギルは、実力をまだ隠していた。自分も巻き込まれたくないために。
「それに、私にはやるべき事があるのよ。だから、一ヶ所に留まり無駄な時間を過ごしたくないの。」
「国を救うより大事な事とはなんでしょうか?」
「ある約束を果たすためよ❗これ以上は言うつもりはないわ。」
「私の国よりも大事な約束ですか・・・。貴女には心底呆れましたわ。こんな人に助けを求めた私がバカでしたわ❗どうぞ、貴女の好きなようにしてください。」
「えぇ、そうさせてもらうわ❗あっ、最後に一つだけ言わせてもらうけどいいかしら?」
「どうぞ?」
「もし、貴女が王族、王女ではなく一人の人間として助けを求めてきていたなら私は少なからず助けたと思うわよ❗私は、ある意味でラピス王女、貴女には感謝しているもの。」
そう言い残しレナは、宿を出ていった。
残されたギルは、どうしたものかと考えていた。ラピス王女は、レナの指摘により意気消沈していた。
レナ、ギル、ラピス王女が会合しているとき勇者達はというと・・・。王都から出るのが初めてのため街を満喫していた。
レナは、宿を出て隣国に行くための関所に向かっていた。
(クリスとアミルとの約束を果たすためにこんな所で時間を潰すわけにはいかないわ❗さっさと次の国に行かないとね。)
そんな事を考えていると前からレナに近づいてくる人が見えた。
勇者をまとめていた元クラス委員長である。
「なんだ、お前。何処に行くんだ?」
「何処に行こうが私の勝手よ。」
「そんなわけあるか❗国の、いやラピス王女様の一大事なんだぞ❗なのに、助けもしないでどうするんだ❗」
レナは、ため息をついて答えた。
「私は、自分のやりたいことをやるの❗たとえそれがこの国の危機だとしてもね。私は、王城を出るときに誓ったのよ❗何をするかは私自身の意思で決めるわ。」
「偉そうなことを言うな❗」
「偉そうなこと?私に傷すら付けれない貴方が言えるの?そんなんで王女を守れるの?城を出れて嬉しいのはわかるけど、他にやるべき事があるんじゃないの?」
「やるべき事・・・。」
「邪魔だから私の前に立たないでくれる?」
元クラス委員長は、考え込んでしまいレナの言葉が耳にはいっていない。レナは、呆れて横を通りすぎる。
(最近、説教みたいなことばかりしているような気がするんだけど気のせいかしら?ラピス王女にしろ、勇者達にしろもう少し自分で考えて行動してくれるといいんだけど。今頃クリスとアミルは何してるかな?)
クリスとアミルの事を考えながら国境の街を後にするレナであった。
この頃のクリスとアミルはと言うと・・・。
クリスは、レナとは違う国に行くために別の国境の街を目指していた。
アミルは、魔王になるための準備に追われていた。武闘祭に使用する武器の選定や着る服の選定をしていた。
レナは、ふと思った。
(そういえばこの世界に来て一年経ったのよね。私も十六歳になったのね。向こうの世界より一年が早い気がするわね。やっぱり充実した日を過ごしているからかな?おじいちゃん、元気にしてるかな?)
祖父の事を思いだし、少し涙ぐむレナ。だが、歩みを止めるわけにはいかないと涙を拭いしっかりと前を見据えるのだった。
友との約束を果たすために・・・。
ようやく国境の街をでることになりました。次回は、隣国でのお話になります。
次回は、二十五日六時の更新予定です。




