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アミルの決意

前話に続き閑話的なお話です。


ブクマ、評価などしていただけると嬉しいです。

アミルは、レナとクリスと別れた後を魔族の領域にある自宅に戻っていた。家族に自分が魔王になることを伝えるためである。アミルの家族構成は、両親に祖父、兄が一人の五人家族である。アミルは、家族が集まる食事の時に自分のこれからのことを話した。


「お父様、お母様、お祖父様それにお兄様、私は次期魔王候補に名乗りをあげようと思います。」


「アミルよ、急にどうしたのだ?あれほど嫌がっていたのに?」


と、アミルの父が言う。続けて母が言う。


「そうよ、アミル。急にどうしたの?」


「私は、今まで無理を言って人間の領域に行かせていただきました。自分の眼で人間を確かめたかったからです。しかし、そこで見た人間の欲望、言動、自分勝手な行いなど、どれも許されるものではありませんでした。同族での争い、男女の不平等などあげればきりがありません。そんな時、二人の人間が私の前に現れました。」


「アミル、その人間に襲われなかったか?人間は、我ら魔族を見ると滅ぼそうと襲ってくるのだぞ?」


と、兄。


「襲われるどころか普通に話しかけてきました。しかも、友人にならないか?と言ってきたのです。」


「なんと、そんな人間もいるのか?」と、言う父。


「珍しい人間もいるものね?」と、母。


「えぇ、最初は私も疑っていました。しかし、私に向かって『魔族がこんな所にいたら襲われるわよ?隠れていた方がいいわ。』と言ってきたのです。それから、毎日のようにその者と話をしてきました。そんなある日、その者の弟子と戦うことになりました。」


「やはり、襲ってきたのか❗」


「お兄様、違います❗弟子の試験として私にその者が頼んできたのです。」


「そうか、ならいい。」


「最初は、手加減はしましたが最後の一撃を放たれたとき、私は思わず手加減を忘れそうになりました。」


「それほどの者が人間に居たのか?」


「はい、お祖父様。それだけではありません。私は、その者の頼みを受ける代わりにその者との戦いを望みました。」


「もちろん、貴女が手加減をして勝ちましたよね?」


首を振り答えるアミル。


「いいえ、お母様。結果は、お互い全力で戦いましたが引き分け です。」


「ありえん❗アミルの実力は、現魔王様にも匹敵する力を持っているはず。それを、ただの人間がアミルと引き分けなどあるわけがない❗」


「お父様、事実です。正面から全力でぶつかり引き分けたのです。」


アミルの言葉に全員が驚きの表情を浮かべる。しかし、祖父だけは違った。祖父は、自分が思った疑問をアミルに聞いた。


「その者は、勇者かな?」


祖父の言葉に眼を見開く両親と兄。しかし、アミルは首を振る。


「違います。その者が言うには自分は勇者ではないと❗しかし、勇者はすでに存在しているようです。」


「なっ❗すでに、勇者がいるのか?すぐに、魔王様に報告しなくては❗」


立ち上がろうとする父にアミルは待ったをかける。


「お父様、まだ続きがあります❗」


アミルの言葉に座り直す父。それを見たアミルは話を続ける。


「その者は、冒険者で勇者を育てる依頼を受けたそうですがあまりにも弱いため、完膚なきまでに叩きのめしたそうです。その者の話によれば、未だにゴブリンすら単独で倒せない有り様だそうです。」


「確かに、勇者にしては弱すぎますわね?」


「はい、お母様。その者は、十数人の勇者を相手に実力のほとんどを出さずに圧勝したそうです。勇者は、女神の加護を受けているにも関わらずでの圧勝です。」


「本当にその者が勇者ではないのか?」


祖父がアミルに聞くが、アミルは頷いて答えた。


「確かに、話を聞く限りではそれほどの脅威になるわけではなさそうだな。しかし、魔王様には報告しておく必要はあるな。」


父の言葉に頷く一同。最後にアミルは自分がやりたいことを家族に言う。


「私は、その者達とある約束をしました。」


「約束とはなんだ?」


聞き返す父にアミルは答える。


「その者の弟子は、私に負けないぐらい強くなると。その者は、世界最強を目指すと。そして、私は魔王になりその者達だけが魔族の領域に来れるようにすると。そう誓い合い約束を交わしました。」


「ほぉ、その様な約束を交わしたか。して、その者達の名は?」


祖父がアミルに名を尋ねた。


「弟子の名は『クリス』、その者の名は『レナ』と言います。お父様、魔王様に報告なさるならこの二人の名は伏せて頂けないでしょうか?」


「なぜだ?」


「私と引き分けたと知れば、他の魔王候補がレナとクリスに挑むはずです。それを避けたいがためです❗」


「わかった。その二人の名を避けて報告しよう。」


「ありがとうございます、お父様❗」


頭を下げて礼をするアミル。その行動を見た祖父が一言アミルに言う。


「人間とはいえ、良き友を得たのぉ。」


「はい❗私にとって最高の強敵(とも)です❗」


満面の笑みで答えるアミル。祖父は、アミルが洗脳でもされたのではないかと気になっていたが、アミルの笑顔を見て洗脳はないと断言した。そのことをアミルの父親に後で祖父が話した。


その後、アミルの父親は魔王に勇者の存在を報告し、アミルの魔王候補の参加を表明した。魔王は、アミルの魔王候補への参加を大変喜んだ。


アミルの魔王候補の参加は瞬く間に領域に広がり波紋を呼んだ。ある魔族はアミルが次の魔王だと言い、ある魔族は別の魔族の名をあげていた。


そして、次期魔王の選出方法は単純であった。力ある者が上に立つ魔族らしい考え方である。


それは・・・。『武闘祭』である。


これで、アミルはレナとクリスとの約束を果たすための第一歩を踏み出したのである。




前話のクリス編に続きアミル編のお話でした。

今回は三話連続更新でしたが一応ここまでが一章にあたる部分です。次回からはレナ編になります。クリス編とアミル編は適度に書けていけたらと思います。

ちなみに、アミルの話し方が違うのは人間に対しての威厳を保つためで本来は今回のような喋り方です。


次回は、二十一日の六時の更新予定です。

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