レナ、盗賊討伐と初めての怪我?
本編第十一話です。
よろしくお願いします。
盗賊討伐の当日、レナは宿でクリスと合流し、ギルドに向かう。
ギルドに向かう途中、レナはクリスに確認をした。
「クリス、貴方も考えることが多いだろうけど、覚悟は決まった?」
「あの後、色々考えたんですけどまだ本当の意味での覚悟がつきません。でも、今回の依頼でレナさんの本気を見たら決めれると思います。」
クリスは、まだ覚悟を決めかねていた。クリスの頭の中には、昨日レナに言われたことが引っ掛かっていたのである。
「あっ❗言い忘れたけど、今日の依頼で本気出さないわよ?」
クリスは、レナの言葉に驚き声をあらげる。
「どういうことですか?見せてくれるんじゃないんですか?」
「言い方が悪かったわね、ごめんなさい。本気は見せるけど、術を使わない本気ね。通常での私の本気を見せるから。」
「術を使わない本気?」
「そうよ。私が、術を使うときは相手を殺すときだけよ。それに、今回の依頼は討伐ではあるけど捕縛の意味合いも含まれているからね。だから、私は術を使わないの。」
「術を使わないで捕縛なんて出来るんですか?」
「それは、人それぞれよ。ちゃんと型や動きを学んでいれば可能かもしれない。けど、独学だと無理よ。」
「私は、独学ですし人のを真似するだけですから・・・。」
二人が話ながら歩いていると、いつの間にかギルドに着いていた。二人はギルドに入り様子を見た。今回の依頼で二十人ほどの冒険者がギルドに集まっていた。ベテランの雰囲気を出している者や中堅クラスの者が居た。さすがに、新人はいない。
そんな時、一人の冒険者が絡んできた。
「今日の依頼はないぜ、あるのは、盗賊討伐の依頼だけだ。ガキは帰ってママに甘えさせてもらえ❗」
周りの冒険者が一斉に笑い出す。クリスは小さく身体を丸める。
しかし、レナは殺気を放つと同時に言い返す。
「私達も盗賊討伐の依頼を受けているの❗だから、ここに居ても問題ないはずよ?ねぇ、受付嬢さん?」
突然話を振られた受付嬢に視線が集まる。受付嬢は、冷や汗をかきながら答える。
「はっ、はい❗そちらのお二人も依頼を受けていますので問題ありませんです。」
緊張のあまり語尾がおかしくなる受付嬢。レナに文句を言った冒険者は再びレナに視線を戻す。
「死ぬのが嫌なら今すぐやめな。後悔するぞ?」
「死ぬのが怖い?当たり前じゃない。死ねば何も出来なくなるんだから怖いに決まってるでしょ?なら、貴方は怖くないの?」
レナは、逆に冒険者に問う。
「怖くなんかねぇよ。死ぬのが怖くて冒険者なんかやってられるか❗」
冒険者は、啖呵を切る。その直後、冒険者の首筋にレナの刀があった。
「今、貴方は一度死んだわ。私が抜いたのも気づかないまま、首と胴が離れたわね。」
そう言いながら刀を納める。冒険者の首筋から血が流れる。少し切れただけの傷である。しかし、冒険者は今自分の身に何が起きたのか判っていない。判らない恐怖ほど怖いものはない。
恐怖に怯えはじめた冒険者を背にレナは、受付嬢に空気が悪いから外で待ってると告げ、クリスと共にギルドを出た。
「さっきの私の動きは見えた?」
「はい❗さっきのは見えました。私が見えたのに他の人は見えなかったみたいですね?」
(あれが見えたなら充分ね。眼は良いみたいだし何より盗賊を置き去りにするぐらいの脚力もある。力の使う方向を変えてあげれば化けるわね。)
丁度そこに受付嬢が現れる。
「皆さんの準備が出来ましたので、今から盗賊討伐の依頼が開始されます。お二人とも無理はしないでくださいね?」
「えぇ、分かったわ。」
「はい、分かりました。」
二人は、受付嬢に答えると他の冒険者と共に歩き出した。
二時間ほど歩いただろうか。前に盗賊のアジトらしき建物が見えてきた。冒険者全員声を潜め機会を窺っていた。
そんな時、レナとクリスの後ろから悲鳴が聞こえた。
ギャァァァァァァ❗
全員が振り返る。冒険者の一人が前に居る冒険者を斬りつけていたのである。レナは、すぐにその冒険者に向かい斬る。斬られた冒険者は笑みを浮かべながら倒れていく。
(しまった、罠だわ。今の冒険者が盗賊のスパイね。この状況で盗賊に攻め込まれたら全滅もあり得るわね。)
罠だと気付いたレナの行動は早かった。
「冒険者の中に盗賊の間者がいるわ❗今すぐここから離れないと❗」
そう言ったレナだが誰一人として聞く耳をもたなかった。
「誰がガキの言うことなんか信じるかよ❗罠だって言うなら破ればいいだけだろうが❗」
ギルドでレナに喧嘩を売った冒険者が叫び、周りの冒険者も同調する。そして、レナとクリスを除く冒険者は、アジトに突入していった。
「全員で叩き潰せぇぇぇぇ❗」
「「おぉぉぉぉぉぉ❗」」
叫び声をあげながらアジトに向かっていった。
「クリス、私から離れないようについてきて❗」
「はい、分かりました❗」
レナとクリスは、冒険者達を追いアジトに向かった。
アジトの前はすでに乱戦状態になっており酷いことになっていた。すでに、数人の冒険者が倒れており絶命しているのが遠目からでも判る。この乱戦を終わらせるためにレナが動く。
「クリス、しっかり気合をいれて意識を保ちなさいよ?もし、意識がなくなったりしたらその時点で私への弟子入りは不合格にするからね、わかった?」
「分かりました、意識をしっかり保ちます❗」
クリスが言い終わるとレナは最大の殺気を放つ。
スドーーーーン
こんな擬音があてはまるような殺気である。レナとクリスの会話を近くで聞いていた冒険者と盗賊の数人は意識があるが、他はレナの放った殺気により意識を失い倒れていた。ちなみに、クリスはなんとか意識を保っていた。
レナは、立っている冒険者に倒れた盗賊の捕縛とクリスの事を頼んだ。
「クリス、捕縛しながらでいいから私の動きを見てなさいね❗」
クリスにそう言いながら駆け出していく。
「ハァァァァァァ❗」
擦れ違い様に居合いで一人、そのまま袈裟斬りで一人、切り上げで一人、唐竹で一人。レナは、次々に盗賊を切り捨てていく。
クリスは、レナの動き一つ一つを見逃さないように見ていた。
(凄い、これがレナさんの実力・・・。動きの一つ一つに無駄がない。それに・・・、綺麗❗踊っているみたいで綺麗❗)
「これで、終わりよぉぉぉぉ❗」
最後のひとりを討ち取り、この場での戦闘は終わる。
レナは、刀に付いた血を拭い鞘に納める。そこに、クリスが駆け寄ってきた。そこに、突如矢が飛来した。
「ぐぅぅぅ❗」
クリスを狙った矢をレナが左手を出し、矢が刺さった。
「レナさん❗」
クリスが叫ぶ。その時、アジトから出てくる盗賊がいた。
「派手に殺ってくれたなぁ❗覚悟は出来てるんだろうな?」
盗賊の頭である。隠れて矢を放っていたのである。
「貴方が親玉ね?闇討ちでしか殺れない意気地無しね?」
「ガキがぁぁぁぁぁ❗左手が使えないのにおれさまに勝てるわけないだろうがァァァ❗」
盗賊の頭は、レナに斬りかかってきた。しかしレナは、傷付いて使えないはずの左手を鞘におき構える。
そして・・・。
「結城流抜刀術奥『雷切』❗」
レナの九連撃が盗賊の頭を切り裂かれた。
「ギャァァァァァァ❗」
悲鳴とともに倒れる盗賊の頭。
これで、本当に終わりを告げた。
「レナさん、左手を私に見せてください❗応急処置なら出来ますから❗」
「ありがとう。助かるわ。」
「他の冒険者の方に応援を頼みましたから、すぐに来てくれると思います。」
「ありがとう。それじゃぁ、応援が来るまで寝てもいいかな?」
「大丈夫です。あとは私がなんととかしてみます。」
「お願いね、おやすみなさい。」
レナは、意識を手放した。
そして、レナが目覚めたとき居た場所は街の宿であった・・・。
十一話にして、レナが初めて怪我をしました。
レナも強いですが無敵ではない証拠ですね。
次回は、十七日の六時の更新です。よろしくお願いします。




