説得
和馬と弦十郎、ルナの三人が魔族の領域に旅立った翌日、レナとアミル、リョーマ、ノルンとステラ率いる騎士団は街に来ていた。
何故、このメンバーが街に来ているかと言うと・・・。街の住人がフィール王国に乗り込む準備をしていると諜報部から情報が入ったからである。
実際、街に来たレナ達が見た光景は・・・。
男達は、武器を手入れしており武器の無い者は武器屋に並び購入をしていた。女達は、家にある武器になりそうなものを探し、子供達ですら木の棒などを振って戦いの練習をしていた。
さすがに、驚いたレナはステラに尋ねた。
「ねぇ、ステラ。」
「何ですか、レナさん?」
「これが状況が普通なの?」
「普通と言えば普通ですね。ただ、さすがに子供まで戦の準備をしているとは思いもしませんでしたが・・・。」
「子供まで準備するのは普通じゃないんだ・・・。」
「そうですね、普通なら冒険者や街の男達が戦の準備をするぐらいですね。今の帝国は、街全体が戦の準備をしているようですね。」
「なんでそんなに冷静でいられるの?」
レナは、ステラが冷静に話していることを尋ねた。
「私達にとっては当たり前のことです。自分達が生活する場所を奪われるかもしれないと思えば行動します。そのため、冷静になりどうするかを考えます。そして、自ら選んだ道を突き進みます。」
「そうなんだ・・・。」
レナは、日本との違いをここにきてようやく理解した。
日本ではまずあり得ないことである。犯罪を犯せば法によって裁かれる。そのため、やり返すなんてことはあまりない。たまに、やり返す人も居るにはいるのだが・・・。
だが、レナは今の状況を見て人間の生存本能は凄いと改めて実感した。
「ステラ、お願いがあるんだけどいいかな?」
「何ですか?」
「街の人達を一ヶ所に集めてくれない?出来れば広場に。」
「わかりました。騎士達に命じて手配します。」
そう言うとステラは騎士達に指示を出しに行った。
「何をするのじゃ、レナ?」
ノルンはレナとステラの会話を聞いて疑問に思った。
「街の人達が早まらないように説得するだけだよ?」
「建前はいらん。本音は何じゃ?」
ノルンはレナの言葉を建前ととり、本音を聞き出そうとした。しかし、レナは首を降り答えた。
「建前でもあるけど本音でもあるよ。無駄に命を散らすことはないんだから・・・。」
レナは若干悲しい顔をした。
日本での歴史で知っているレナは、戦争がどれだけ悲惨なものかを知っている。この世界でも生きていくためには命をかけなくてはいけない時がある。だが、今がその時ではないとレナは思っていた。
「さて、私達も広場に行こう❗」
レナは広場に向かって歩き出した。レナを追うようにアミル、リョーマ、ノルンも歩き出した。
レナ達が広場に着いてから一時間後・・・。
広場には街の住人が集まった。
冒険者は武器を携え、男達も武器を持っていた。レナが今から話す内容を知らずに・・・。
「みんな、集まってくれてありがとう❗」
レナの一言で広場から歓声があがる。
レナは歓声が落ち着くのを待っていた。しかし、一行に歓声がやまないのを見て右手をあげた。
直後、歓声はやみ静まりかえる。
「単刀直入に言うわね。今すぐ武装を解除して❗」
レナの言葉にどよめきが起こる。
「みんながやることは他にあるんじゃない?」
更に、続けて言うレナ。そんな中、声があがる。
「俺達の国が攻められるんだぞ?戦わないでどうする?いくらレナちゃんでも聞けないぞ?」
「「そうだ、そうだ❗」」
周りから声が上がりやがて広場を埋め尽くす。
レナは溜め息をつきながらまた右手をあげた。
「じゃぁ、聞くけど・・・。みんなが戦争に行って死んだらどうなるの?」
レナの言葉に何かを反論しようとするが声がでない。
「一人、二人なら問題ないかもしれない。でも、何十人、何百人と犠牲者が出たらどうするの?残された家族は?」
レナは左手を握りしめながら言う。
「この国を支えているのはローゼじゃないわよ?」
「女王陛下が国を支えているんだろ?」
男が言った。しかし、レナは首を降った。
「じゃぁ、誰なんだよ?」
「貴方達に一人一人よ❗」
レナは男に答えた。
「この国に住む貴方達が支えているのよ。ローゼは、ただこの国を住みやすくしているだけ。国って言うのはそこに住む人達がいて初めて成り立つものなの。だから、貴方達が戦争に行き死ねば国は衰退する。最悪の場合、国が滅びるわ❗」
レナの言葉に街の人々は絶句した。
「街を守るのは国の役目、国に住む人を守るのも国の役目。でも、国の将来を守るのは貴方達・・・この国に住む人達の役目よ❗自分達の住む国の未来、そして子供の未来を守るのが貴方達の役目。私達はその未来を守るために・・・国が滅びないように戦う。私達が守った国を滅びないように支えるのが貴方達の役目。」
レナは一旦言葉を遮り、人々の反応を見た。
「私達は、戦うことしか出来ない・・・。でも、貴方達は違う。貴方達は国を支えることが出来る。だから、戦うのはやめて❗命を無駄に散らさないで❗」
レナは目に涙を浮かべながら言った。
レナはこの国が好きになった。気さくな街の住人触れあい、日本では感じられなかったことを感じられた。だから、余計にそう思うのである。
そこへステラがレナの隣に歩み寄った。そして、レナの頭に手を乗せ街の住人に向けて話始めた。
「戦争で戦うのは私達騎士団だ❗皆の戦う戦場はこの街だ❗戦争が始まればそこが私達の戦場だ。だが、戦争が終われば皆が住む街が戦場となる。この意味がわかるな?そうだ、復興と言う名の戦場だ。私達ではその戦場では役に立たない。戦うしか能がないからな・・・。だが、皆は違う。皆が居なければ復興と言う名の戦場を切り抜けられない。だから、今一度問う。皆の戦場は何処だ?」
ステラの言葉で住人達は武器を手放した。
「分かってくれたようだな、ありがとう❗」
ステラは頭を下げた。同時にレナも頭を下げた。
「ここまで言われちゃ仕方ないな❗俺達の戦場は戦争の後だ❗気合い入れてやるぞぉぉぉぉ❗」
「「おぉぉぉぉぉぉぉ❗」」
街が一体になった瞬間であり、国が更なる発展を約束された瞬間でもある。
「ステラ、ありがとう。」
レナはステラにお礼を言った。
「いや、私も自分が言いたいことを言っただけですから。」
「でも、これで負けられなくなったわね?」
「負けるつもりはありませんよ?そのために、辛い訓練を受けてきたのですから❗」
二人は握手を交わした。その行動を見ていた街の人々は更に歓声をあげた。
そして、一ヶ月後・・・。
遂に、ラピス率いるフィール王国軍が姿を現した・・・。




