俺のゴーレム
「ロック君、結局、この馬車を購入って事で良いのよね?」
「ああ、それで頼むよ」
「現金一括払いっす!」
「馬具なんかは、どうするの?」
「ああ、それも一緒に揃えて貰えるかな」
「じゃあ、実際に馬車を引く馬に合わせなきゃならないから、
王都の近くの牧場を紹介しましょうか?」
「いや、馬車はコイツらに曳かせるから良いや、
まずは、核になる岩玉を置いて・・・『ゴーレム作成』×2」
ロックが、アイテムボックスから岩の玉を2個取り出して、
倉庫の地面の上へと置き魔法の呪文を唱えると、
地面の土がムクムクと盛り上がって、普通の馬の大きさ程の2頭の、
土の馬が現われた。
「ええっ!?ロック君の魔法で造ったって事は土魔法よね、
ゴーレムって錬金術で造るんじゃないの?」
「ロック様、凄いです!」
「馬車を引く程度の単純な動きをするゴーレムなら土魔法でも造れるんだよ、
錬金術の場合は疑似生命体とか、他の生き物の魂とかを封じ込めて造るんだけど、
土魔法の場合は、核になる岩玉に『俺の指示通りに馬車を引け』とか単純な命令を、
魔力を込めて刻むだけで良いんだ」
「自分の指示も聞いて欲しいっす!」
「でも、それって凄いよね、
ゴーレムって事は、餌とか水を与えなくても良いんでしょ?」
「休憩無しで、夜通しでも歩いてくれるんじゃないですか?」
「ああ、偶に俺の魔力を補充すれば、
ずっと歩いていられるな」
「ブラック企業も真っ青っすね!」
「でも、これ程の大きさを2頭となると、
相当な量の魔力を消費するんじゃないの?」
「いや、実はそれ程でも無いんだよ、
1頭造るのに大体ロックバレット10発分ぐらいの魔力量で、
馬車を曳かせるのも、王都からヒデブの街程度の距離なら、
1頭当たりロックバレット5発分ぐらいだな」
「私はロック君と違って土魔法使いじゃないから、
ロックバレット1発分の魔力がどれ程かが分からないけど、
相当、魔力の消費効率が良いんじゃないの?」
「ああ、火魔法だとファイアボール1発分とか、
風魔法のウインドカッター1発分と変わらない程度だからな」
「自分のウオーターショット1発分ぐらいっすね!」
「カレンさんは火魔法が使えるのよね?」
「はい、ファイアボール1発分の魔力と言えば、
10分もあれば回復する程度のものなので、
ロック様の魔力消費効率は相当なものですね」
「そんなに使い勝手が良いなら、
もっとゴーレム馬が流行ってても良いと思うんだけれども、
なんで見かけないのかしら?」
「一つは土魔法の能力を上げようって人が居ない事と、
もう一つは、俺と同じぐらいの魔力量が必要だからって事だな」
「あら、魔力の消費効率が良いなら、
そんなに魔力の量は必要無いんじゃないの?」
「いや、俺だって最初から魔力の消費効率が良かった訳じゃ無いんだ
土魔法を、あり余った魔力量に任せてカンストさせたら、
今度はレベルが上がる毎に、魔力の消費量が減って行く様になったんだよ」
「って事は、魔力の消費効率を上げるには、
自分の持つ魔法をカンストさせなきゃならないって事?」
「そうなんだろうな」
「それは、とてもじゃ無いけど普通の魔法使いには無理な話ね、
魔法をカンストさせたなんて、王宮に仕えてる魔導士長様ぐらいしか聞いた事が無いもの」
「そうですね、普通の魔力量では毎日無くなるまで使っても、
一生掛けてもカンストは出来ないと思います。」
「だろうな、俺も村の防護壁を造ったりして、
毎日、相当な量の魔力を使ったけど、
カンストするのに10歳ぐらいまで掛かったからな」
「ロック君、魔導士長様は、
ご自分の魔法をカンストさせるのに60歳を過ぎるまで掛かられたのよ、
それを、ロック君が10歳でカンストさせたなんて聞かれたら、
きっと泣かれると思うわ」
「私も、そう思います。」
「ふ~ん、そんなもんなのか・・・」
「世の無常ってヤツっすね」
「でも、ゴーレム馬って商売になりそうよね、
ウチの商会でも、少しの魔力を与えるだけで、
休みなく歩いてくれる馬が居たら大助かりだもの」
「需要が相当ありそうですよね」
「そう考えている時が俺にもありました。
でも、実際にはゴーレム馬は俺から100メートル以上離れると、
タダの土塊へと返ってしまうし、
魔力も俺の物しか受け付けないんだよ」
「自分の魔力を与えたら、尻から水が噴き出したっす!」
「それじゃ仕方が無いわね、
でも、ロック君に商隊の護衛を依頼したら使えるわよね」
「その手がありましたね、きっと引く手数多ですよ」
「俺のパーティーも、護衛クエストばかりしてる訳にも行かないから、
カネーちゃん家の商隊で、ヒデブの街が絡んだ取引の時だけにしてくれるかな、
他の商会には内緒の方向でお願い出来るか?」
「ええ、ウチを優遇してくれるって言うなら内緒にするわ」
「そうですね、ロック様やウィル君の戦闘力なら、
討伐クエストを熟した方がギルドランクが上がりますよね」
「サンキュ!カネーちゃん、
それと、カレン達にもランクアップして貰う為に、
討伐クエストを頑張って貰うからな」
「自分らのパーティーが『ロック殲滅隊』と呼ばれる日も近いっすね!」




