ザドス王国の騎士団事情
「ロック君、こちらの方が第六騎士団の方と言うのは本当なの?
それに、話を聞いてたら姫様方とも、顔見知りみたいな話だったけど・・・」
ロックとジャンヌの会話を聞いていたカネーが、そう尋ねて来た。
「ああ、副団長のジャンヌさんだ
昔、俺が生まれ育ったホワタ村に、姫様方と一緒に護衛として来られたんだよ」
「自分は副パーティー・リーダーのウィルっす!」
「第六騎士団の副団長なんて、凄い人と知り合いなのね!」
「流石、ロック様です!」
「第六騎士団て有名なのか?」
「はぁ・・・ロック君て、ホント世事に疎いわよね、
姫様方付きの第六騎士団と言ったら、
有力貴族の跡継ぎが多数所属する第一騎士団と並び称されて、
人気の第一騎士団、実力の第六騎士団て有名じゃないのよ」
「私も聞いた事があります。」
「へ~、ジャンヌさん達の第六騎士団て、そんなに強いんだ?」
「ええ、毎年、各騎士団同士で行われる公開模擬戦で、
負け無しの強さを誇っているわね」
「ここ数年で、急激に強くなりましたよね」
「へ~、そんなに強いんだ」
「凄いっす!」
「何を他人事みたいに言ってるんだ?
我等の騎士団が強くなれたのは、ロック君の訓練メソッドを取り入れたからだぞ」
「えっ!?そうなんですか!?」
「流石、ロック先輩っす!」
「王国の騎士団の訓練メニューを考えるなんて、
流石は常識外れのロック君だけはあるわね・・・」
「はい、私達の想像を軽々と超えて来ます。」
「ああ、あのメソッドは、
姫様方の、お言い付けにより、我が騎士団の門外不出とされているぞ」
「同国の騎士団同士でも教えないんですか?」
「人類皆、穴兄ぅ・・・いえ、兄弟っす!」
「ああ、同国の騎士団同士でも仕える、お方などの違いによる確執があってな、
政情が不安な状態などであれば、国の戦力の底上げの為に協力する事も考えられるが、
国同士の諍いが無くなって久しい昨今、
我が国の騎士団も、お偉方が自らの力を誇示する道具と成り果ててしまったのさ」
ジャンヌが、自嘲する様に、そう告げた。
「でも、姫様方って、そう言うのを嫌いそうな方達でしたよね?」
「金持ち喧嘩せずっす!」
「ああ、勿論、姫様方は、そんな連中を相手にしては居られないさ、
もしやの有事に備えて、我が騎士団の戦力の底上げを図った結果、
お互いの足の引っ張り合いしか考えていない、他の騎士団より強くなったってだけの事さ」
「それはまた、何と言うか・・・救いようが無い話ですね」
「同感っす!」
「戦争の心配が無いのは良い事だけどね・・・」
「ホントですね」
「まあ、騎士団の力が落ちたとは言っても、
何か有った時には、毎日の様に魔獣の相手をしている、
ロック君達、冒険者に依頼を出せば良い事だからな」
「ええ、戦争が無くなったので、
殆どの傭兵の人達は冒険者に職を変えていますからね、
お蔭で、冒険者の対人戦闘能力が上がったと聞いた事があります。」
「うむ、傭兵は対人戦闘に長けているからな、
冒険者とて、盗賊や山賊を相手取る場合もあるのだから、
対人戦闘の能力が上がるのは良い事だな」
「ええ、その通りなんですが、
敵の、盗賊や山賊に流れる傭兵も少なく無いと聞いていますので、
手強さが上がっているのも、頭に入れて置かなきゃならないですね」
「世紀末伝説的な盗賊が現われるっす!」
「ああ、そうだな・・・おっと!
久し振りに、懐かしい顔を見たもんで長々と話し込んでしまったな、
馬車の注文も終わっている事だし、私は、これで失礼する事とするよ、
そう言えばロック君、折角こうして、王都を訪れているのに、
姫様方に、お会いして行かないのか?」
「はい、俺が、姫様方とお会いするのは、
冒険者として誰もが認めるぐらいの一流となり、
第六騎士団に入れて貰える様に成ってからと決めて居りますので、
まだ時期尚早ですね、姫様方にはご自愛頂きます様、
宜しくお伝え下さい。」
「自分は騎士付きの妖精を目指すっす!」
「そうか、分かった。
その日が来るのを、楽しみにしているからな」
「はい、今日は、ありがとう御座いました。」
「あざ~っす!」
「お世話になりました。」
「ありがとう御座いました。」
ジャンヌは、ロック達の礼に建物の出口へと向かう後ろ向きのまま、
ヒラヒラと後ろ手で無言の返事を返すと、出口から消えて行った。
「は~、カッコイイ方ね・・・」
「はい、女性なのに副騎士団長なんて凄いです。」
「昔は、そこまで強い人って感じじゃ無かったんだけどな」
「スーパー・ザドス人に変身したんじゃないっすか?」
「どうせロック君の事だから、
子供の頃から、とんでも無く強かったんでしょ?
そんな人と比べたら、大概の人は大して強くは無いわよ」
「ロック様と、普通の人を比べたら可哀想ですよ」
「何か、君達の頭の中の俺って、かなり普通じゃ無い人みたいだね・・・」
「ロック先輩、それは今更っす・・・」




