アンジェラ
「君は、もしかしてアンジェラを、
ロック様に買って頂こうというのかね?」
タヌキノが、ピンと来た様子でカレンに質問した。
「はい、そうです。」
「カレン、アンジェラさんていう人は、
君に取って、どんな存在の人なんだ?」
「暗黒面に落ちた身内っすか?」
「はい、アンジェラさんは父の商隊を護衛していた冒険者パーティーの一つ、
『ニャンダフル・ワールド』のリーダーだった方で、
私の母が冒険者だった頃の、後輩の方なんですが、
母が亡くなった後、私と妹が冒険者に成る為にしていた訓練を、
手伝ってくれていたんです。」
「へ~、カレン達の師匠って感じの人なのか、
でも、人に指導出来るって事は、
それなりに腕が立つ人なんだろうけど、
何で、そんな人が奴隷になっちゃんたんだ?」
「ずばりギャンブルっすね?」
「はい、アンジェラさんは父の商隊が『シャッキーン・バード』に襲われた際に、
父達を逃がす為の囮となって、目を負傷されて、
クエスト失敗の違約金が払え無くなってしまい奴隷落ちされたんです。」
「カレンの父親の商会って結構大きなとこなんだろ?
そんな商会の護衛をするぐらいの冒険者だったら、
違約金を払えるぐらいの蓄えはあったんじゃ無いのか?」
「今度こそギャンブルっすね?」
「はい、ご自分の分を払うぐらいの蓄えはあったらしいのですが、
負傷した仲間の治療費に使ってしまわれたそうです。」
「へ~、信じられないぐらいに、生き方が不器用な人なんだな、
でも、俺も、そんな人は嫌いじゃないな・・・分かった。
タヌキノさん、アンジェラさんて人も買いたいんだけど幾らぐらいなんだい?」
「お友達価格で、お願いっす!」
「100万ギルですな」
「安っ!?何で、そんなに安いんだ?
カレン達とは大違いじゃないか」
「ダンピングっすか?」
「アンジェラは、ピューマというネコ科大型タイプの獣人なのですが、
身長が190センチを超える長身の、ガッチリとした筋肉質の体格の上、
唯一の長所とも言える美貌も目と共に大きな傷を負ったので、
労働奴隷としても、性奴隷としても買い手が付かないのですよ」
「良く、そんな人を買ったな」
「同感っす!」
「彼女には何度か護衛を依頼した事がありましたので、
お互いに顔見知りでして、
本人たっての願いでしたので購入したのですよ」
「幾らで買ったんだ?」
「プライスレスっすか?」
「100万ギルですな」
「俺が言うのも何なんだが、
それじゃ儲け無しじゃないか」
「商売人失格っす!」
「彼女は、ウチで扱う奴隷としては失格ですからな、
それで、儲けを出す訳には如何のですよ」
「変なところで拘りがあるんだな、
じゃあ、カレン達でオマケをして貰った事だし、
アンジェラさんは500万ギルで買わせて貰うよ」
「衝撃の逆値上げっす!」
「しかし、それでは・・・」
「おれが、その値段で良いって言ってるんだから、
タヌキノさんは喜んで受け取っておけば良いんだよ、
それに、アンジェラさんの傷や目だって、
もしかしたら直るかも知れないだろ?」
「自分の水魔法で一発っす!」
「分かりました。
では、ありがたく500万ギル頂戴しようと思います。
しかし、彼女の目は、
王都の治療院の治療士も言って居ったそうですが、
この世界で唯一、水妖精王様が使えると言われている、
究極の身体欠損治療魔法『奇跡の水』でも使わなければ直せないとの事でしたぞ」
「ほう・・・水妖精王様の・・・」
「流石に、自分も使えないっす」
「それでも、宜しいですかな?」
「ああ、むしろ安い買いも・・・ゲフン!ゲフン!
いや、それでも買わせて頂こう」
「そうっすね」
「畏まりました。
では、ただ今、彼女を呼んで参りますので、
少々お待ち下さい」
「分かった。」
「次回に続くっす!」




