商談
「どうぞ、こちらへ・・・」
タヌキノ会長に通された商談室は、
2階建ての建物が多い商業地区では珍しく、3階に設けられて居り、
遠く離れた王都公園の緑が見渡せるロケーションであった。
「「お邪魔します。」」
「しゃ~っす!」
ロック達が声を掛けてから入室して、
その後ろからカレン達が無言で入室して来る
「どうぞ、こちらにお掛け下さい。」
タヌキノは、ロック達にソファーに腰掛ける様に促し、
その正面に自ら腰掛けた。
ロックが、カレン達にも腰を下ろす様に言ったが、
奴隷は一緒に座らないのが通例と固辞したので、
そのまま、後ろに立っていて貰う様にする
「では、早速ですが、
彼女達の商談に入るとしますかな・・・」
「ええ、今2000万ギルを出しますね」
「持ってけ泥棒っす!」
「いえいえ、それは先程までの金額ですな、
現在は値上がりをしたので3000万ギルとなって居りますな」
「ええ!?さっき2000万ギルって・・・」
「不当値上げっす!」
「やっぱり・・・」
「カネーちゃん、
やっぱりって、どういう事?」
「ホワッツっす!」
「さっき2000万ギルって聞いた時、
ロック君が躊躇する事無く払うって言ったでしょ?
それで、2000万ギルを払っても、
ロック君には、まだまだ資金的に余裕があるって見抜かれちゃったのよ」
「そういう事なのか・・・」
「ミステイクっす」
「さて、3000万ギルですが、
お買い上げになりますかな?」
(払えない金額じゃ無いけど、
素直に払うのにも癪に障るな・・・よし!)
「会長さん、話は変わりますけど、
この商談室って凄く見晴らしが良いですね」
「ワイドビューっす!」
「え?ええ、この商談室の窓からの見晴らしは、
私の自慢の一つなんですよ、
しかし、私を煽てたところで値引きには応じられませんぞ」
「いえいえ、値引きの交渉なんかじゃ無いですよ、
時に、会長さんは目は良い方ですか?」
「千里眼っす!」
「ええ、ここの窓から王都公園の緑を良く眺めて居りますので、
人並み以上には目が良いと思いますな」
「では、王都公園のあそこの木に、
赤いドム風船が引っ掛かっているのが見えますか?」
「約300メートルの距離っす!」
ちなみにドム風船というのは、
『コンドム』という名前の、巨大なヘチマの様な姿をした魔獣の皮を使った
子ども向けの玩具で、そのゴムの様な透き通った皮に着色を施し、
浮遊術式を使って浮き上がらせたもので、お祭りなどで良く売られているのである
「ええ、良く見えますとも、
あれが見えるとは、お客様方も目が良いのですな」
「ええ、俺もウィルも遠距離攻撃に特化した冒険者ですから、
遠くの物を見るスキルを持ってるんですよ、
さて、ここからが本題なんですけど、
あそこの木に引っ掛かっているドム風船を、会長さんの頭と仮定して下さい。」
「バブルヘッドっす!」
「はあ、それで?」
「ここに、土魔法で造った岩玉があります。」
「種も仕掛けも無いっす!」
ロックは、アイテムボックスから、
ストックしてある直径5センチ程の岩玉を取り出してタヌキノに見せた。
「その岩玉が何か?」
「会長さん、あの会長さんの頭に見立てたドム風船を良く見ていて下さいね、
そこで、この岩玉を、こうして投げると・・・ハッ!
あ~、会長さんの頭が弾け飛んじゃいましたね」
「粉々っす!」
「まさか!?これ程の距離で命中させるなんて事は・・・」
タヌキノの常識的な考えが否定を示すものの、
実際に自らが見ている前でドム風船は弾け飛んでいた。
「会長さんが街中を歩いている時に、
どこからか流れ岩玉が飛んで来ないと良いですね・・・
ところで、彼女達の値段は幾らでしたっけ?」
「良く考えるっす!」
「え、え~と、2000万ギルで「ああ~ん!?」
い、いえ、1500万ギルでお譲りさせて頂きます。」
「よし買った!」
「商談成立っす!」




