タヌキノ商会
「おはよ~!カネーちゃん、カレンさん、ファニーちゃん」
「おは~っす!」
翌朝となりロックとウィルは、カネーの自宅に顔を出した。
「おはよう、ロック君、ウィル君」
「おはよう御座います。ロックさん、ウィルさん」
「・・・・・」
カレンの妹ファニーは、昨夜は姉の背中で眠っていたので、
初めて顔を合わせるロック達に人見知りをしている様子だ。
「ファニーちゃん、
俺は、君のお姉ちゃんの友達のロックっていうんだ宜しくね、
隣で飛んでるのは、俺の相棒で水妖精のウィルっていうんだ」
「ウィルっす!宜しくっす!」
「うん」
「しかし、今朝のカレンさん達は見違える様だね」
「ホントっす!」
昨夜会った時は、奴隷商から逃げ出したままの着の身着のままで、
布の袋に、首や両腕が出る穴を開けて、
ウエストを紐で縛っただけという簡易な衣装で、
埃汚れで顔なども煤けていた為、
昨夜、カネーの自宅に行ってから、
風呂に入って、カネーから借りた衣装に着替えた2人は見違える程に、
魅力的に変わっていたのだ。
「そうですか、ありがとう御座います。」
「ちょっと!ロック君、ウィル君、
私も居るんだけど、私には何か一言無いの?」
「カネーちゃんは、いつもキレイだから、
今更、褒める事も無いかと思ってね」
「同感っす!」
「もう・・・まあ良いわ、褒め言葉って事で納得しとくわね」
「ああ、そうしてくれよ、
じゃあ、早速だけど『タヌキノ商会』に行ってみるか」
「直談判っす!」
「ええ、そうしましょう。
私もオブザーバーとして着いて行くわね」
「皆さん、宜しくお願いします。」
「・・・します。」
ロック達は、皆で連れ立って、
ザドス王国の王都にて奴隷商を営んでいる『タヌキノ商会』を訪れる事にした。
カネーの案内で店へと辿り着くと、
店の出入り口の両脇に警備をしてるらしき、強面の男達が立っていたので、
ロックは声を掛けてみる
「すいませ~ん」
「ちぃ~っす!」
「うん?何だ坊主、
ここは、お前の様な若造が入れる様な店じゃ無ぇぞ、
痛ぇ目を見る前に、とっとと帰るんだな」
「俺達、店主のトラーヌさんに会いたいんですけど、
取次して貰えませんかね?」
「会長に会いたいだと?
お前みたいな若造が何の用で・・・あっ!お前ら!」
服を着替えて小奇麗になっていたので、
今までカレン達に気が付いて居なかった警備員が、
漸く、この段階になって気付いた様だ
「ええ、彼女達の事で、
トラーヌさんに相談したい事があるので、
面会に伺ったんですよ」
「ふざけんな!
こいつらを逃がしたお蔭で、俺達がどれだけ会長に怒られたと思うんだ!
とっとと、そいつらを置いて消えやがれってんだ!」
警備員は、そう言いながらカレン達の方に手を伸ばして来たので、
ロックは、とっさに、その手を取って投げ飛ばしてしまった。
「うげっ!」
警備員は、店の壁にぶつかると、
そのまま気を失ってしまった様であった。
「この野郎!
よくも、アタローをやってくれたな!
どうやら、この店に殴り込んで来た様だが、返り討ちに遭わせてやるぜ!
おい!みんな来てくれ!殴り込みだ!」
もう一人の警備員が店の扉を開けて、そう声を掛けると、
店の中から、同じ様な強面の男達がゾロゾロと出て来た。
「あの~、殴り込みじゃ無いんですけど~って言っても、
この感じじゃ聞いて貰えないかな・・・」
「そうっすね」
「野郎ども!アタローが、こいつらに殺られちまったんだ!
仇を取ってやろうぜ!」
「「「おう!」」」
「いやいやいや、
アタローさん生きてるでしょ、って言っても聞く耳持たないだろうな、
はぁ~、しょうがないから少し相手をするしか無いか、
ウィル、俺がオッサン達の相手をするから、
その間、カネーちゃん達を頼むな」
「了解っす!」
「ハハハッ!みんな聞いたか?
この坊主、俺達の相手を一人でやるとよ、
随分と舐めてくれたもんだなオイ!」
「アタローに使った体術から見て冒険者の様だから、
それなりの自信があるんだろうよ!」
「いいから、みんなでボコっちまおうぜ!」
「そうだそうだ!」
「その人数で来られた場合、
手加減をしてあげられないから、それなりの怪我は覚悟して下さいね」
「ぬかせ!
おい!ウタローとエタローは右に回り込め!
オタローは、俺と左だ!」
「「「おう!」」」
「もしかして、指示を出してるのがイタローさんで、
アタローさんを含めて5人兄弟とか・・・」
「うん?お前、俺達兄弟の事を知ってるのか?」
「いえ、知りませんが、
とても他人事とは思えない名前の付け方だったもんで・・・」
「何、訳の分からない事をゴチャゴチャ言ってやがる!
いいから、やっちまうぞ!」
「「「おう!」」」
「では、『ロックバレット!』×4っと・・・」
「「「「うぎゃ~!」」」」
「戦いとは、常に虚しいものだな・・・
勝者は、ただ敗者の冥福を祈るのみだ」
「ううっ・・・俺達は死んじゃいねぇっつ~の」
「痛っつ~、いきなり魔法を使うとは卑怯な・・・」
「まあ、一人に4人掛かりの俺達も、俺達だがな」
「それは言わない、お約束だろ」
「何だ!店先で騒がしいぞ!」
その時、店の入り口のドアを開けて、
何者かが怒鳴りながら出て来た。




