圧倒
飛行タイプの魔獣である『シャッキーン・バード』に対する対応を、
商隊のリーダーであるゼニーオと、
各冒険者パーティーのリーダーで話し合った結果、
ロックの兄である、
冒険者パーティー『レックとゆかいな仲間たち』のリーダー、
レックの「ロックなら危なげなく討伐出来る」の言により、
商隊を魔獣に発見されない場所へと避難させてから、
ロックとウィルが討伐へと向かう事となった。
魔獣の討伐を確認する為、他のメンバーに商隊の護衛を任せて、
ロックの兄レックの他、『ヅカージョ過激団』のリーダーであるオス☆カルと、
『フケヅラーズ』のリーダーを務めるブルースらが同行する事となった。
「別に、皆さんで、いらっしゃらなくても、
俺は大容量のアイテムボックス持ちなんで、
『シャッキーン・バード』の死体を3つとも、
持ち帰って見せられるから大丈夫ですよ」
「討ち逃しは無いっす!」
ヒデブの街へと訪れた当初は、
大容量のアイテムボックスの事を秘密にしていたロックであったが、
冒険者ギルドへの貢献から、
ある程度の後ろ盾となってくれる事を、
ギルド職員のモモエが保障してくれた事と、
いくつものクエストを、失敗無しで熟した事から、
ある程度の実力を持つ事が、他の冒険者へと知れ渡ったので、
変な、ちょっかいを掛ける者が居なくなった為、
最近では、必要に応じて話す様にしていた。
「いや~、別にロック君達の腕前を心配してるんじゃなくて、
レックが、あれ程、自信たっぷりに保障してたんで、
どんな戦い振りなのかを見てみたくなってね」
オス☆カルが、そう言う
「ああ、俺も、どちらかと言えば慎重派のレックが、
ああまで言うロックの腕前を見てみたくなってな」
ブルースも同じ意見の様だ
「そうですか・・・」
(レック兄ィは兎も角として、
余り他の冒険者に、手の内を知られたく無いんだけどな・・・)
「ロック先輩、ここは一つドカンと打ち噛ませてやるっす!」
ウィルは、ヤル気満々な様だ
「ロック、こいつらは信用出来るから、
実力を隠さずに見せても大丈夫だぞ」
兄のレックが告げた。
「レック兄ィが、そう言うなら、
いつもの通りにやってみるかな」
「そう、来なくっちゃっす!」
ロックが皆を伴って街道を進んで行くと、
500メートル程先の上空に3つの黒い点が飛んでいるのが見えた。
「どうやら、敵はマダ気付いて居ないみたいだな」
「そうっすね」
「いよいよ、お手並み拝見ね」
「そうだな、遠距離から攻撃するのか?
それとも、近づいてからの攻撃か?」
オス☆カルとブルースは楽しみそうに話している
「よし、ここは俺が一つ、
おお~い!デカぶつ共、掛かって来いや~!」
突然、レックが大きな声を上げる
「バ、バカ!レック、敵に気付かれたじゃないのよ!」
「おい!こっちに向かって来んぞ!」
オス☆カルとブルースは慌てている様子だ
「いや~、態々近づく手間を省こうと思ってな」
「何、バカな事を言ってるのよ!」
「そろそろ、100メートルを切るぞ!」
「2人とも落ち着けよ、ロック達を見ろよ、
全然、慌てていないだろ?」
レックの言葉で、2人がロック達を見ると、
確かに、慌てた様子は見受けられなかった。
「ウィル、あいつらの足止めを、お願い出来るか?
足が止まった所で、俺が仕留めるからさ」
ロックは、アイテムボックスから、鉄の球を3つ取り出しながら、
ウィルに、そう告げる
「了解っす!
『ウォーターウォール』っす!」
ロック達の前方100メートル程の所に、
縦横50メートル程の水の壁が出現した。
「うおっ!何だアノ『ウォーターウォール』の大きさは!?」
ブルースが驚きの声を上げる
「驚くのは大きさよりも、その精度よ!
正確な正方形で、壁の厚さも均一じゃないの!?」
自らも魔法が得意なオス☆カルは、
ウィルが使った水魔法の精度の高さに驚いた様子だ
「来るぞ!」
レックの声に、2人が目を向けると、
一直線に、こちらの方向へと向かっていた『シャッキーン・バード』が、
ウィルが造り出した『ウォーターウォール』に、ぶつかってピタリと止まった。
「「受け止めた!?」」
水の壁の厚さからいって、2人は多少速度を落とす程度と考えていたのだが、
魔獣が動きを止められたのを見て、驚愕の声を上げる
「ロック先輩、今っす!」
「おう!ウィル、良くやった!」
ロックが、手早く鉄の球をシュッ!シュッ!シュッ!と投擲すると、
魔獣の進撃さえも受け止めた水の壁を突き抜けた鉄の球が、
ボフッ!ボフッ!ボフッ!と魔獣の頭を吹き飛ばした。
「よし!ウィル、もう魔法を解除して良いぜ」
「了解っす!」
ウィルが魔法を解除すると、
水の壁に受け止められていた『シャッキーン・バード』が地面へと落下して、
ズズ~ンと、大きな地響きを発てた。
「「・・・・・。」」
ブルースとオス☆カルは、その光景をポカ~ンと口を開けたままで見ている
「おい、2人とも終わったぞ」
レックの言葉に、2人は反応して顔を向けた。
「レック、今のは何だ?
ロックが使ったのは、土魔法なのか?」
「いや、鉄の球をタダ投げただけだな」
「ロック君、今、3個しか投げなかったわよね、
あの硬い『シャッキーン・バード』を一撃づつで仕留めたって事?」
「まあ、そういう事だな」
「「ハハハ、まさかコレ程とは・・・」」
「レック兄ィ、死体をアイテムボックスに『収納』して、
『解体』しちゃっても良い?」
「鮮度が落ちない内がグ~っす!」
「ああ、頼むよ」




