敵影発見
こう暑いと『ねっちうせう』になってしまいます。
翌日の午前中も商隊の旅路は問題無く進み、
街道脇の広くなっている場所に馬車を停めて、皆で昼食を取った後に、
午後の行程へと出発してから暫くの時間が経った頃、
この護衛クエストに入ってから初めての問題が起こった。
その異変は、当初、商隊の馬車列が停車するという形で始まった。
「うん?馬車が停車したみたいだな」
「そうっすね」
「どうしたのかしら?」
相変わらず、商隊のリーダーであるゼニーオの妹カネーは、
馬車隊の殿で警戒をしているロックやウィルと共に行動をしていた。
「魔獣か盗賊でも現れて、レック兄ィ達が討伐でもしてるのかな?」
「初戦闘っすね!」
「応援に行かなくても良いの?」
「ああ、レック兄ィのパーティーには斥候職のコギクさんが居るから、
敵に奇襲を受ける心配も無いから大丈夫だろ」
「気配察知のプロっす!」
「そうなんだ」
ロック達が会話を交わしながら、
暫く、その場で待機をしていると、
レックのパーティーの仲間であるワレラ達がやって来た。
「おい!ロック」
「ああ、誰かと思えば、
3バカトリオの皆さんじゃないですか」
「「「誰が3バカトリオだ!」」」
「それで、御用の向きは何ですか?」
「レックが、ちょっと来てくれってさ、
その間の後方警戒は俺達がやってるから、
行って見てくれるか」
「分かりました。
では、こちらの方は、お願いします。」
「自分も行くっす!」
「私も一緒に行~こうっと」
ロック達が商隊の先頭部分まで行くと、
先頭の警戒に当たっているレックと、商隊のリーダーであるゼニーオ、
それから、商隊の左右を警戒しているブルース、オス☆カルらが集まって、
何かを話し合っていた。
「レック兄ィ、俺に用があるって聞いて来たんだけど、
何かあったの?」
「ただ今、参上っす!」
「おう!ロック来たか、
実はコギクが、この先に飛行タイプの魔獣の気配が、
複数するって言うんだが、お前にも分かるか?」
「ちょっと待ってくれる・・・うん、多分3匹だと思うけど、
確かに飛んでるみたいだね」
「そうっすね、3匹っす!」
「3匹の飛行タイプの魔獣か、そりゃ厄介だな」
苦いものを噛み潰した様な顔をしながらブルースが言う
「そうですね、馬車を引く馬でもやられた日には、
大幅な行程の遅れが懸念されますね」
商隊のリーダーであるゼニーオは、
期日通りに積荷を届けられるのか心配そうだ
「ロック、魔獣の種類は分かるか?」
「ううん、ダメみたい、
多分、今まで会った事が無い魔獣の気配だと思う」
「一匹、一匹は3メートルぐらいっす!」
「それでは、仕方が無いな」
オス☆カルが残念そうに告げた。
「私が、ひとっ走りして調べて来ようか?」
レックのパーティーで斥候を務めているコギクが、
そう名乗り出る
「そうだな、コギク、行って来てくれるか」
「うん、分かった。
行って来るね」
「おう、気を付けろよ」
コギクは、シュッと残像を残して消え去った。
「ゼニーオさん、コギクが戻って来るまでは、
暫く、この場で待機ですね」
「ええ、致し方ありませんね、
ウチの店員達にも休憩を取る様に伝えて置きます。」
「俺も仲間と一休みしてるわ」
「私も、戻っているわね」
ブルース、オス☆カルらも仲間の元へと帰って行った。
「お兄ちゃん、私が皆に言って来ようか?」
暇そうにしながら、皆の会話を聞いていたカネーが、
ゼニーオに、そう尋ねる
「ああ、それは良いんだが、
カネー、お前、ロックさん達とズッと一緒に居るみたいだけど、
ご迷惑をお掛けして無いだろうな?」
「迷惑なんて掛けていないですよ~だ
ねっ?ロック君」
「ええ、良い話し相手になって貰って頂いてます。」
「俺達マブダチっす!」
「ほらね」
「それなら、まあ良いんだが、
ロックさんも、ご迷惑ならばハッキリと、
そう言って下さっても構いませんからね」
「ええ、大丈夫ですよ」
「無問題っす!」
30分程して、魔獣を偵察に行っていたコギクが戻って来た。
「魔獣の種類は『シャッキーン・バード』よ、
ロック君が言ってた通りに数は3匹で、
個体はどれも3メートルクラスだったわ」
「選りにも選って『シャッキーン・バード』かよ・・・」
レックの口振りからすると、
その魔獣を知っている様であった。
「レック兄ィ、『シャッキーン・バード』って、どんな魔獣なの?」
「ああ、見た目はオウムを大きくした様な姿をしているんだが、
困った事にコインが大好物でな、
商隊や旅人を襲ってはコインを巻き上げて行くんだよ」
「まるで、追剥みたいな魔獣だね」
「旅銭を巻き上げられたら最悪っす!」
「これは、馬や積荷を襲われる心配は無くなったものの、
人が襲われて怪我を負わされる心配が出て来ましたね」
ゼニーオは、積荷の心配が無くなって少しホッとした様子ではあったが、
妹や店員が襲われないかが気に掛かる様だ
「どちらにしても、魔獣は仕留めた方が良いですね」
レックは、そう決断を下した様だ
「出来るのですか?」
「ええ、ロックに任せれば大丈夫だと思います。
なぁ?ロック」
「うん、ドラゴンとかじゃ無いなら、
イケると思うよ」
「地対空ロック砲が炸裂するっす!」




