土魔法の可能性
3人は、ベヒモス・ステーキにナイフを入れると、
フォークで刺して口へと運んだ。
「美味~え!!何コレ何コレ、
マッタリとしていて、それでいて少しもシツコクなく、
まさに、美味しさの宝石箱や!
アンラックさん、あんた何ちゅ~もんを、
ワイに食べさせてくれるんや!」
「バカヤロ~!良いかロック、
美味いもんを食うのに、
沢山の言葉なんて不要なんだ!
ただ一言、美味ぇ!って言や良いのさ・・・」
「美味いっす!美味いっす!」
「お、お楽しみ頂けている様で何よりです。」
アンラックは、3人が親の仇の様に、
ステーキを切っては、セッセと口に運ぶのを見て、
冷や汗を拭きながら、そう言った。
「「「お代わり(っす)!」」」
「は、はい、ただ今、お持ちします。」
こうして、ロック達は、
その後、2度のお代わりをしてから、
やっと、その手が止まった。
「く、苦しい・・・」
「流石に、食い過ぎたな・・・」
「ううっ・・・喋るとステーキが出そうっす」
「皆さん、ご満足を頂けましたか?」
「はい、大満足です。」
「一生分の、ステーキを食った感じだな」
「サイコーっす!」
ロック達は、自分達の様子から、
ベヒモスの肉が100キロでは足りないと判断して、
肉を100キロと、バフンキノコを1個追加で、
アンラックに押し付けてから、宿へと戻った。
翌日となり、前日の様に村の入り口で待ち合わせた
ロックらと、ドボルが朝の挨拶を交わす。
「お早う御座います。ドボルさん」
「ざいま~っす!」
「おう!お早う、ロック、ウィル」
「今、『アンラク食堂』で朝食を食べて来たんですけど、
昨夜は、肉祭りで大変だったみたいですよ」
「フィ~バ~っす!」
「昨夜の今朝で、良く朝飯が入るな・・・
俺なんて、まだ胃の中にステーキが詰まってる感じがするぜ、
やっぱ、若さってヤツなのかね」
「ハハハ、そうですね」
「ヤングっす!」
「バカヤロ~!そういう時は、
お世辞でも、『いや~、ドボルさんだって、まだまだ若いですよ』
ぐらいの事を言うんだよ!」
「ハハハ、これは気が利きませんで、
でも、ドボルさんも十分に気は若いと思いますよ」
「メンタルっす!」
「『気は』が余計だっちゅ~の!」
「ハハハ、それは、すいませんでした。
じゃ、早速ですけど、
ドボルさんの土魔法レベルが、どれだけ、
上がったかの検証に行くとしますか」
「出発っす!」
「おう!頼むわ」
3人は、連れ立ってドボルの畑へと向かった。
「ここが、俺の畑なんだ」
村から、1キロ程離れた草原の一角に、
周りを木の杭で囲まれた
大凡300㎡程の畑が広がっていた。
「流石、適性職種が農夫のドボルさんだけあって、
個人で管理するにしては広い畑ですね」
「雄大っす!」
「ああ、死んだ俺の親父も農夫だったからな、
2人で、ここまで開墾して広げたんだよ」
「そう何ですか、それで普段は、
土魔法を、どんな風に農作業で使ってるんですか?」
「俺の場合は、それ程、魔力量があった訳じゃ無いから、
クワで畑の土を起こす際に、『掘削』で土を柔らかくして、
補助するぐらいかな」
「なる程、分かりました。
では、畑仕事に役立ちそうな土魔法を、
いくつか、お教えしますね」
「心して聞くっす!」
「おう!頼むわ」
「では、まず最初なんですけど・・・おっ、これが良いかな」
ロックは、周囲をキョロキョロと見回すと、
片手で持てる程の大きさの岩を持ち上げて、
ドボルへと、手渡した。
「見た感じ、普通の岩の様に見えるんだが、
これを、どうするんだ?」
「ええ、その岩自体は、有り触れたもん何ですけど、
中に微量の鉄分を含んでいるんですよ、
その鉄を残す様にイメージして『抽出』と、
唱えてみてくれますか?」
「お、おう、鉄を残すイメージだな、
よし・・・『抽出』っと、おおっ!」
ドボルが唱えると、岩がサ~と砂の様になり崩れ、
掌に、微量の鉄が残された。
「上手く行ったみたいですね」
「ああ、上手く行ったのは良いんだけどよ、
俺は、鍛冶屋じゃ無くて農夫だぜ、
この魔法が、どう役に立つって言うんだ?」
「この魔法は、色々と応用が利くんですけど、
農作業で一番役に立つのは、コレですかね『抽出』っと」
「「おお~っ(っす)!」」
ロックが、畑の土に手を着いて唱えると、
大凡100㎡程の広さの畑の土の中から、
石や、木の根っこなどが持ち上がって来た。
「こんな風に、畑の土の中から、
不純物を取り出せるんですよ」
「おお、何気に便利な魔法だな、
クワが石に当たると手が痛ぇし、
木の根を掘り出すのは、ホント一苦労なんだよな」
「そう何ですよね、俺も村で畑造りをしていた頃は、
この魔法が重宝していましたよ、
じゃあ、場所を移動してから、
ドボルさんも、やってみてくれますか?」
「ドボルさん、ファイトっす!」
「おう、分かった。」
3人は、ロックの魔法が届いていなかった辺りまで移動すると、
今度はドボルの『抽出』を試す事とした。
「そう言えば、さっきのロックの魔法って、
あの広さが限界なのか?」
「いえ、俺の場合は土魔法をカンストしてるんで、
1キロ㎡ぐらいまでなら、細かく魔法制御が出来ますよ」
「そんなにか・・・
細かく魔法制御が出来ると、何が出来るんだ?」
「既に、種や苗などが植えてある畑でも、
石や、木の根、害虫などを排除出来ますよ」
「キ~プアウトっす!」
「おお、そりゃ是非、身に付けたいもんだな!」




