全長50メートル、体重200トン
「どれだけの量があるんっすか?」
ウィルは、ロックにベヒモスの素材が、
どれ程あるのかを尋ねた。
「まずは肉だが、ざっと150トンになるな、
そして骨が20トンと、革が50㎡分だな」
「1匹の魔獣から採れるとは思えない程の量っすね」
「まったくだな・・・
ドボルさん、素材の回収は終わりましたが、
具合の方は如何ですか?」
「おう、お蔭様で大分、楽になったよ、
なんとか歩けるぐらいにはなったから、
一度、村に帰るとしよう」
「分かりました。
じゃあ、落とし穴を埋めちゃうんで、ちょっと待って下さいね」
「おう、そうだな、誰か落ちて怪我でもしたら大変だからな」
「深さ20メートルですから、
いくら下が土とはいえ、怪我だけじゃ済まないかも知れませんね」
「デンジャーっす!」
「じゃあ、埋めますよ『整地』っと」
「俺が、あんなに苦労して掘ったのに、
埋めるのは一瞬なんだな・・・」
「ハハハ、土魔法のレベルが違いますからね、
でも、ドボルさんも大分レベルが上がったと思いますから、
今度からは楽になると思いますよ」
「土魔法のスペシャリストっすね!」
「こんな事は、もうカンベンだよ」
「ハハハ、それも、そうですね」
「次は本当にドラゴンかも知れないっす!」
村に引き上げたロックらは、
取り敢えず『アンラク食堂』に行って、
一休みする事とした。
「ロック、ベヒモスの肉なんだが、
俺の取り分から減らして貰っても良いから、
村の、みんなに、ご馳走してくれねぇか?」
「そんなの、沢山あるんですから、
俺達からって事で良いですよ、
なっ?ウィル」
「はい、全然オッケ~っす!」
「そうか、悪いな、
じゃあ、アンラックさんに声を掛けるぜ、
アンラックさん!ちょっと良いか!」
「は~い、何でしょうか?」
「この肉なんですけど、
今日、俺達が近くの森で狩ってきたんで、
村の人達に、ご馳走して貰えませんか?」
ロックは、アイテムボックスから、
ベヒモスの肉を100キロ程取り出しながら言った。
「そりゃ構いませんが、
こんなに沢山良いんですか?」
「村の連中には世話になってるからな、
このぐらい問題無いよな?ロック」
「ええ、大型の魔獣でしたんで、
これでも、ほんの一部なんですよ」
「これが、ほんの一部なんですか?
どう見ても100キロはありそうなんですけど、
一体全体、何を狩ったら、こんなに沢山の肉が出るんでしょう?」
「聞いて驚け、何とベヒモスだぜ!」
「ベヒモスっす!」
「え?」
「ホント偶々なんですが、
ベヒモスを狩れたんですよ、アンラックさん」
「陸の王者っす!」
「ベヒモスですって!?
ベヒモスって言ったら、災害認定される程の魔獣じゃないですか!
討伐する場合も、A級冒険者数名か、
S級でなければ倒せないと聞いた事がありますよ!」
「そうなんですか、今回の場合はワナを仕掛けて置いたら、
運良く掛かってくれたんですよ」
「ラッキーっす!」
「ベヒモスが掛かるワナって、どんだけなんですか・・・」
「元々、大型の魔獣を捕えようと造ったワナに、
上手い具合にベヒモスが掛かって死んでくれたんですよ、
幸運以外の何物でも無いですね」
「まあ、確かに、そこで死んでいなければ、
この村に来たかも知れない可能性を考えれば、
私達に取っても、大きな幸運と言えるかも知れませんね」
「進行方向からすると、十分に考えられたな」
「多分、どこかで見ていた神様が、
この村の人達が良い人ばかりだからって、
助けてくれたんですよ」
「同感っす!」
「分かりました。
そういう事でしたら、ありがたくご頂戴して、
調理させて頂きますが、
折角なんで、ロックさんからご提供頂いた
バフンキノコと合わせるとしますか」
「バフンキノコとベヒモスの肉って合うんですか?」
「バフンキノコは基本、どんな肉にも合うのですが、
より高級な肉の方が、美味と言われているんですよ」
「やっぱり、ベヒモスの肉って高級なんですか?」
「はい、その味わいも然る事ながら、
ドラゴンと並んで、滅多に市場には出回りませんからね、
上級貴族の方々でも、一生に一度、
口に出来るかどうかでは無いでしょうか」
「じゃあ、珍しいバフンキノコとの組み合わせなら、
最強じゃないですか!」
「極レアっす!」
「ええ、世界が広しと言えども、
両方を同時に食せる、ただの村人は、
この村の住人だけでしょうね」
「世界で、この村だけとは嬉しいな」
「ハハハ、世界で唯一ですか、
それは、面白いですね」
「オンリーワンっす!」
「じゃあ、私は、さっそく調理に入りますね」
「「「お願いします(っす)!」」」
3人が、エールや果実水などを飲みながら歓談していると、
ジュ~ジュ~と美味しそうな音と湯気を上げながら、
鉄板皿の上へと乗せられたベヒモス・ステーキが運ばれて来た。
「お待ちどう様、熱いから気を付けて、
お召し上がりください」
「「「いっただきま~す(っす)!」」」




