ハバラ村、再び
ヒデブの街を出た
ロックとウィルは、まずは森の中に造った
薬草畑を見に行く事にした。
「さ~て、薬草達の調子はどうかな?」
「上手く育ってると良いっすね」
「そうだな」
森の中を進んで行くと、偶に小型の魔獣が現われるものの、
ロック達の姿を見ると、魔力量の多さを感じ取るのか、
直ぐに逃げてくれるので、
然程の、時間を掛けずに畑へと辿り着いた。
「なんじゃコリャ~!!」
畑を一目見たロックが叫び声を上げる
「これは、畑って言うより森っすね・・・」
ウィルも、唖然とした様子で、
その光景を眺めているのだが、
そこには、通常30センチ程の大きさの薬草が、
2メートル程の高さにまで成長して繁っていたのであった。
「これって、普通の薬草を植えたんだよな、
一応、確認するか『鑑定』・・・」
「どうっすか?ロック先輩」
「ああ、見た目は異常だけど、
ちゃんと、低級治療薬に使う『マアマアキキ草』だな、
しかも、これで造った治療薬は高品質らしいぞ」
「へ~、そうなんっすか、
これだけ、デカイと沢山造れそうっすね!」
「そうだな、冒険者ギルドのモモエさんも、
低級治療薬が不足してるって言ってたから喜んでくれるだろうな、
しかし、何でこんなにデカく育ったんだろうな・・・?」
「外敵の関係じゃないっすか?」
「どういう事だ?」
「野生の薬草は、
ここまで、大きくなる前に冒険者に摘まれたり、
動物や魔獣に食べられてしまうんじゃないっすかね」
「なる程、その点、
この畑は結界で守られているから、
ここまで、育ったのか」
「じゃないっすかね」
「よし、検証する為に、
大き目の薬草だけ摘んで、様子を見てみるか」
「了解っす!
中級治療薬用の『ナカナカキキ草』は、どうするっすか?」
「そっちは、取り敢えず
そのままで良いや」
「了解っす!」
ロックとウィルは、大きく育った『マアマアキキ草』だけを摘んで、
アイテムボックスに収納すると、薬草畑を後にした。
森を出た2人は、ヒデブの街の防御壁に沿って、
グルッと回り込んで、北の街道へと入ると、
ハバラ村を目指して出発した。
「ロック先輩、薬草畑の方が、
上手く行きそうで良かったっすね」
ウィルが、気持ちよさそうに飛びながら、
ロックへ話し掛ける
「そうだな、ヒデブの街は新人冒険者が多いから、
怪我で数日クエストが出来ないだけでも、
死活問題だから、冒険者ギルドが安価で販売している、
低級治療薬は命綱とも言えるからな」
中距離走の様な速さで走っているにも関わらず、
ウィルと会話する、ロックの声には少しの乱れも無い
「そうなんっすか」
「ああ、みんなが俺みたいに、
優秀な治療魔法が使えるウィルみたいな、
水魔法使いがパーティーに居る訳じゃ無いしな」
「有事の際は、自分に任せて欲しいっす!」
「ああ、頼んだぜ」
故郷のホワタ村で暮らして居た頃より、
毎朝、欠かさず行っているトレーニングの為、
驚異の健脚を誇るロックは、その日の昼過ぎ頃にハバラ村へと到着した。
「こんにちは~!」
村の入り口を、入ったロックは、
そこに、知り合いの顔を見付けたので声を掛けた。
「おう!急に声掛けるから、
誰かと思えばロックじゃねぇか、
ホント、久し振りだな!
そのカッコを見ると、
どうやら、ちゃんと冒険者に成れた様だな」
「はい、お蔭様で成れました。
ドボルさんも、お元気そうですね、
今は、昼休みの時間ですか?」
ロックが声を掛けた相手は、
この村に来た時に、初めて出会った村人のドボルで、
色々と世話になった人物であった。
「おう、俺は相変わらず元気だけが、取り柄だぜ、
今は、アンラックさんとこで昼飯を食った帰りだな」
「そうなんですか、
あっ、こいつは俺のパーティー仲間のウィルです。
水妖精なんで、水魔法が得意なんですよ」
「ちぃ~っす!自分はウィルっす!」
「へ~、妖精がパーティー仲間とは、
相変わらずロックは意表を突くなぁ、
宜しくなウィル、
俺は、この村で農夫をしてるドボルってもんだ、
ロックとは、あ~友人ってとこかな」
「しゃ~っす!ドボルさん、しゃ~っす!」
「おう!
それで、ロックの方は、今日は例のアレか?」
「ええ、アンラックさんの食堂に、
お肉を届けに伺いました。」
「やっぱ、そうなのか!
ロックの、お蔭で美味い肉料理が食べられるから助かるぜ!
今回は、何の肉を持って来たんだ?」
「はい、グレートラビッツとボタンボアです。」
「おお!アンラックさんが作る、
『グレートラビッツの香草焼き』は最高なんだよな!」
「そうなんですか、それは是非、
俺達も、食べてみなくちゃなりませんね」
「おう!絶対、お前らも食べてみた方が良いぜ、
俺も、仕事が終わったら食べに行くから、
晩飯の時に、また会おうぜ!」
「はい、ウィルと一緒に、お待ちしてます。」




