コンプレッサー
唐突な、仲間の死に驚いたグレートラビッツ達が、
ようやく我に返ったのは、
腰のショートソードを鞘から抜き放ったロックが、
5メートル程の距離まで走り寄った頃であった。
「「「「「キィィィィイ!」」」」」
ロックの接近に気付いたグレートラビッツ達は、
すぐさま迎撃態勢に移ろうとするが、
完全に隙を突かれた為に、
組織立った動きを取る事は適わず、
バラバラにロックに向かって来るのみであった。
「はあっ!」「せいっ!」
ロックは、まず先行していた2匹を、
すれ違いざまに切り伏せると、
自分たちの敵わぬ相手と見て取ったのか、
逃亡の体勢に入った3匹に向けて、指を向けた。
『ブリッツ!』×3
ロックに後ろを見せていた
3匹のグレートラビッツの後頭部が弾けて、
ドウッ!と地面に倒れ込んだ。
「流石っすね!ロック先輩」
ロックの攻撃の邪魔にならない様に、
後方で控えていたウィルが、
戦闘の終了を見て取って近づいて来た。
「ウィルの魔法だって、大したもんだよ」
「いやいや、自分なんてマダマダっす!」
「ハハハ、そう謙遜するなよ、
今、準備をするから獲物の血抜きを、
お願いしても良いか?」
ロックは、土魔法で土を盛り上げて作業台を作ると、
その上に、獲物を並べていって首を切り落として行った。
「お安い御用っす!」
ウィルは、水魔法を使って、
グレートラビッツの血流に干渉すると、
切り落とされた首から、体外へと排出させて行く
「サンキュウ」
ロックは、ウィルが処理を終えたものから、
次々にアイテムボックスへと収納して行く、
後は、特別製のアイテムボックスの中で、
肉が最高級品に変わるのを待つのみである
「ロック先輩の、『ロックバレット』って変わってるっすね、
自分は、飛んで行く岩球が全然見えなかったっすよ」
作業を終えたウィルが、そう話し掛けた。
「ああ、あれは『ロックバレット』を改良して造った
俺のオリジナル魔法の『ブリッツ』っていうんだよ、
この岩弾を高速で飛ばしているんだ。」
そう言って、掌を上にして突き出したロックの手には、
直径1センチ、長さ3センチ程で、なだらかな円錐形をした
岩の弾が乗せられていた。
「マジで、これっすか?
こんなに小さくて軽いのに、あんな威力が出るんっすか?」
ウィルは、ロックの掌から、
岩弾を抱え上げながら尋ねた。
「ああ、小さくて軽いもんでも、
力を乗せて飛ばせば、それなりの威力になるんだよ、
造り出す岩球が小さい分、
『ロックバレット』と比べても魔力の節約になるしな、
いいか、あそこに大きな石があるだろ、
あれに、それと同じ岩弾を投げるから見てろよ」
ロックは、ウィルが抱えている岩弾と同じ物を2つ造ると、
まずは、軽く投げてみる、
すると、岩弾は石の表面に当たると砕けて散った。
「次は、投擲スキルを使って、
この岩弾に力と横回転を与えて投げてみるぞ・・・ハッ!」
ロックが、気合と共に放つと、
パン!と乾いた音を発てて、
岩弾と共に、石の表面が穿たれて砕け散った。
「おおっ!凄いっすね、
横回転を与えるのには、どんな意味があるんっすか?」
「ああ、俺も詳しい事は分からないんだけど、
そうすると、途中で曲がらないで、
真っ直ぐ飛んでくらしいんだよ」
「へ~、そうなんすか、
俺の水魔法にも、何か応用が出来るっすかね?」
「『ウォーターショット』とかの精度が上がるんじゃないか?」
「でも、『ウォーターショット』じゃ、威力が弱いっすからね」
「それなんだけどさ、
『変形』×2、『硬化』×2っと、
これって、何か分かるか?」
ロックは、土魔法で造った物をウィルに見せる
「水鉄砲っすか?
それも、同じ物が2つっすね」
「ああ、だが厳密には、
ちょっと違うんだよ、
ほら、先っちょを見てみな」
「ああ、先に開いてる穴の大きさが、
少し違うっすね」
「そうだ、じゃあ両方に水を入れてみてくれるか」
「了解っす!
『ウォーター』×2っと、オッケ~っす!」
「おう、サンキュ、
じゃあ、順番に水を飛ばして見せるから、
良く見てるんだぞ、
最初は穴が大きい方で・・・よっ!
次は、穴が小さい方だ・・・よっ!
どうだ?何か分かったか?」
「穴が小さい方が、強く遠くに飛ぶっすね」
「そうだ、穴が小さい水鉄砲の方が、
筒の中の水に掛かる圧力が大きいから、
強い水流が生まれたんだ、
どうだ?俺がウィルに言いたい事が分かったか?」
「つまり、『ウォーターショット』でも、
強い力で押し出す様にすれば、威力が出るって事っすか?」
「そうだ、俺はウィルの水魔法の腕前なら、
『ウォーターショット』で、鉄が切れるんじゃないかと思うぞ」
「マジっすか!?」




